九州大学文学部同窓会
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文学部長挨拶

九州大学文学部の近況

文学部長 坂上 康俊

同窓生のみなさん、いかがお過ごしでしょうか。九州大学文学部の近況をご報告申し上げます。
 二〇一五年度は、取り立てて大きな出来事もなく、おおむね平穏裏に推移しました。まず、学生の動向について御報告申し上げます。昨年三月二五日には、一五九名の学士課程卒業者と、二五名の大学院修士課程修了者を送り出しました。伊都キャンパス椎木講堂で挙行された学位記授与式(卒業式)は、同講堂では二度目ということもあり、天候もまずまずであったため滞りなく進行し、その後バスで移動して箱崎キャンパスに戻り、各研究室で学位記の授与が、文系食堂(生協)で祝賀会が行われました。祝賀会の開催が午後四時三〇分になってしまうという問題がありますが、二〇一八年夏に予定されている伊都キャンパスへの移転までは、この状況の改善は見込めないでしょう。祝賀会に先立って人文科学府長賞優秀賞と同大賞の授与式があり、前者については馬浙寧(倫理学)・仲本響(イスラム文明史学)・吉田宰(国語学・国文学)の三名が、後者については久保薗愛(国語学・国文学)・甲斐雄一(中国文学)のお二人が、表彰されました。
 また、九月二五日には三名の学士課程卒業者と、六名の大学院修士課程修了者、三名の課程博士学位授与者を送り出しました。修士課程修了者の多くは広人文学コースの学生で、留学生です。一〇時から挙行された椎木講堂での学位記授与式を終えた後、文学部会議室で、ささやかながら昨年同様に祝賀会を開きました。
 なお、昨年中に博士の学位を授与されたのは、甲(課程博士)が一六名、乙(論文博士)が二名となっております。長年のご研鑽に、心からの敬意を表します。
 一方、四月七日には一七〇名の学士課程入学者を、四月八日には三〇名の大学院修士課程入学者、一〇名の大学院博士後期課程進学・編入学者を迎えました。昨年の学部一般入試(前期日程)から、文学部では地理・歴史(日本史・世界史・地理の中から一科目選択)を課すことになりました。入試への地歴の導入は、「世界の多様性への開かれた関心」を受験生諸君が抱いていることを示してもらうためということで、二〇一一年度に決定されたものです。受験科目の増加は難度の上昇につながり、受験生の動向が注目されましたが、幸い競争率二倍を維持しえて、まずは順調な滑り出しを見せたと申し上げて良いように思います。新入生は例年通り入学早々のオリエンテーリングで研究室訪問をします。彼らに入試の感想を尋ねたところ、地歴があって良かったという答えが多かったのは、合格者だから当然でしょう。願わくは彼らの向学心が、大学院進学率の上昇に結びつかんことを。
 なお、一〇月一日には八名の大学院修士課程広人文学コースへの入学者を迎えております。秋期の入学式も始められ、椎木講堂で久保総長から英語による訓示がありました。もちろん入学生の誓詞も、英語で行われました。
 次に、人事異動についてお知らせします。昨春をもって、柴田篤教授(中国哲学史)、濱田耕策教授(朝鮮史学)、關一敏教授(比較宗教学)が、ご退職なさいました。また、今春には、川本芳昭教授(東洋史学)、山内昭人教授(西洋史学)、三浦佳世教授(心理学)がご退職になり、山口輝臣准教授(日本史学)が東京大学に転任なさいます。長年にわたる文学部・人文科学府でのご尽力に感謝致します。
 一方、中国文学講座の静永健准教授と朝鮮史学講座の森平雅彦准教授が教授に昇任なさいました。従来昇任の際の辞令書は、単にメイルボックスに紙片が入れてあるだけでしたが、今年から教授についてのみ、総長室で総長自ら辞令を交付し、しばし懇談の機会を設けることになったそうです。両先生の今後ますますのご活躍を期待しましょう。教員の活躍という面では、片岡啓准教授(インド哲学史)が「鈴木学術財団特別賞」を、川平敏文准教授(国語学・国文学)が「やまなし文学賞」を受賞されたことを逸するわけには参りません。おめでとうございます。
 なお、昨年四月には脇崇晴(倫理学)、都甲さやか(芸術学)、原口大輔(日本史学)、奥野新太郎(中国文学)の諸君に、助教として着任いただいております。また、外国人教師としてブライアン・フォックス(英語学・英文学)、マルクス・コンラート(独文学)のお二人をお迎えしました。そのほか、広人文学講座の申請により、大学・部局間交流協定等を活用した事業の一環として、ウィリアム・マツダ准教授、リンジー・デウイット助教に一年間研究・教育を担当していただきました。一方、サバーティカル期間を利用して、小黒康正教授(独文学)はオーストリアへ、辻田淳一郎准教授(考古学)はアイルランドへ、それぞれ研修に行かれました。
 国際化の関連では、韓国の東義大学校との間の交流協定が延長されたことを申し上げなければならないでしょう。海外の大学との交流協定はすべて英語でなければならなくなったとかで、国際交流委員長の舩田講師には、その不合理を唱えていただいたのですが、押し切られてしまいました。昨春には慣例に則り学部長たる私が東義大学校を表敬訪問し、新キャンパス敷地内の古墳から出土した「庚寅年」銘鉄刀について講演して参りました。
 昨年度もその傾向はあったのですが、本年度はますます評価と計画の両面が問われる機会が増しました。一昨年秋、独立行政法人大学評価・学位授与機構による大学機関別認証評価があったばかりですが、本年度は、来年度の機関評価に向けた現況調査票の作成など、自己点検評価委員長岡野潔教授(インド哲学史)の指揮のもとでさまざまなデータがとりまとめられました。人文社会系の再編に向けた総長直属のワーキング・グループからも、部局の将来計画についての学外有識者に対するプレゼンテーションが求められており、この三月には私と久保智之将来計画委員長、清水和裕次期将来計画委員長とがヒアリングに臨む予定です。いささか「評価疲れ」の気味も指摘されていますが、折角ですから、いただいたご指摘を有効活用しようと思います。
 昨年度、スーパー・グローバル大学に認定されたことに伴い、全学の国際化の一環としての新学部の設置構想が詰められつつあり、また、部局の国際化を図るための「国際コース」の設置が議論されています。新学部は、一〇五人程度の規模で二〇一八年度には開講されることになっていますが、その内実は、一年生で英語の特訓を施し、彼らは秋に入学してくる外国人留学生とともに、基本的に英語による、文理融合を理念とした授業を受講するということ以外は、不確定要素が多すぎて、今ここではご紹介出来ません。ただ、専任あるいは課目担当の形で文学部教員の動員が求められていることだけを申し添えます。文学部内の「国際コース」については、進学振り分け後半年たった二年生後期から、複数の外国語の習得に重点を置いたプログラムを選択してもらい、彼らには留学や大学院進学を勧めることになりますが、実現までには紆余曲折も予想されます。文学部学生には、自らの適性を慎重に見極めていただきたいと思いますし、そのためには、学ぶべきものを自分で組み立ててゆく自由度を保証したいと思います。それこそが、「アクティブー・ラーナー」の育成というものでしょう。はっきりとした目的を持って外国語能力を高めようとする学生に対しては、世界に飛び出すための跳躍台を用意してあげなければなりません。
 英語による授業紹介が必須となったこともあり、上山あゆみ教授(言語学)の工夫にかかる「スバラシイシラバス」がリニューアルされました。WEB上で学外にも公開されておりますので、「九大文学部」「シラバス」で検索して、一度ご覧いただければ幸いです。シラバスにはルーブリックという耳慣れないものも書き込むことになりました。簡単に言えば、「この授業ではこういうことが出来ることが求められている」と項目を幾つか立て、項目ごとに数ランクの到達程度を掲示し、これに応じて成績を付けるというもので、カリキュラムの可視化の行き着く典型といえましょう。到達目標が明示されることが一概に悪いとは申しませんが、文学部の授業の到達目標なんぞ、いわくいいがたいもの、限りが無いものに決まっております。教員としては、新たな問題の発見、授業の予想外の展開こそが望ましいものであり、研究の魅力が伝わり、発見した問題への取り組み方を学生自らが工夫するようになれば、その授業は成功ということになりましょう。
 成績について申しますと、今年度からGPAの本格的な導入が始まりました。本格的というのは、学部のすべての授業がA~D・Fの五段階評価(Fは不合格)になった結果、進学振り分けも卒業論文の評価も、これを用いるようになったことを指します。進学振り分けでは、Aを4点、Bを3点というように読み替えて総計点・平均点を出しますので、点差が付かないのではないかと危惧されましたが、実際にはさほど問題は生じませんでした。卒業論文については、これまで、それぞれの専門分野での基準となるような先例(伝説的なものもありますが)に従って一〇〇点満点で細かく付けていたので、それができなくなることは、伝統からの離脱が強制されたような心持ちが致します。
 移転に向けての具体的な動きが、いよいよ本格化して参りました。それぞれの研究室・教員室に所蔵・配備されている物品や書籍の調査があり、引っ越し費用の算定に取りかかっています。新規購入の予算は乏しいため、新キャンパスでも使えるものは原則としてすべて持って行くという方針が決まっていますので、大きな木製本棚、厚板の研究室の机、大型の木製両袖机など、懐かしい馴染みの品々とは引き続きお付き合いすることになりますが、ただ、図書カードボックスなど、既に役割を終えたものについては、お別れという事態もありうるでしよう。
 北門を入って左手にあるモニュメントと池のそばに、孔子故里博物館長孔祥林氏(孔子第七五世の子孫)が中国山東省曲阜市の孔子廟から苗木をもたらし、一九九三年一月八日に、当時の和田光史総長とともに植えた楷樹があります。背景には、緑の少なかった文系キャンパスに「蒼々たる緑を!」を掛け声に活動した「樹の会」の会長であった中村質教授の尽力がありました。昨年秋までに大樹となって見事な紅葉を披露してくれていたこの楷樹も、移転に備えた枝落とし、根切りの作業が施され、今は養生のためにぐるぐる巻きにされています。卒業生の皆さんから寄贈された記念樹のサクラ(一九九二年度)とキンモクセイ(一九九〇年度)は、移植、あるいは挿し木・接ぎ木等の方法で新キャンパスに移されます。このほか、「樹の会」の手で植えられたケヤキの並木も、その一部が移植されます。ただ、スダジイ(一九九四年度)とクロガネモチ(一九九六年度)は、伊都の生態系に影響するということで、移植できないそうです。申し訳ありません。
 箱崎理系地区では、昨年夏に理学部が移転して農学部だけが残り、工学部・理学部の建物は次々に解体されつつあります。松並木の風通しが、ずいぶん良くなりました。本部の赤煉瓦建物と工学部本館は保存されると聞いておりますが、正門を入って左の旧法文学部建物は、耐震性の問題から立ち入り禁止になって久しく、年内の解体が予定されています。貝塚駅に近い体育館も、同様に耐震性の観点から、この春には使用禁止となることが決まっており、学生・教職員の心身の健康維持が憂慮されます。
 伊都の新図書館の建物は、宮本一夫図書館長(副学長・考古学)の指揮の下で着々と工事が進められており、文系諸部局棟についても、工事用の仮設建物が設置され、本格的な工事が始まろうとしています。
 最後になりましたが、私、坂上康俊は、本年三月末をもって部局長(人文科学研究院長・人文科学府長・文学部長)を退任し、四月一日には部局長に久保智之教授(言語学)が就任され、二名の副研究院長のうち、兼・自己点検評価委員長が佐伯弘次教授(日本史学)、兼・将来計画委員長が清水和裕教授(イスラム文明史学)という布陣になります。今後とも皆様のご支援・ご鞭撻をお願い申し上げます。
(さかうえ やすとし 日本史学教授)

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