中国哲学史研究室では、春秋戦国時代・秦漢時代から、魏晋南北朝隋唐時代および宋元明清時代を経て、近現代に至るまでの中国の思想や文化はもちろんのこと、朝鮮や日本におけるそれらの受容と展開とをも含めて、幅広く研究している。哲学・宗教思想から政治・経済・社会思想や科学技術思想にいたるまで、扱う分野は多岐にわたる。すなわち凡そ中国におけるあらゆる思想の営為は、すべて本研究室の研究対象なのである。研究方法も多様である。伝統的なアプローチにとどまらず、社会科学の方法論や西洋哲学研究の成果を摂り入れることはむしろ望ましい。ただし念のために言えば、原典の厳密な読解とそれに基づく深い思索とが、その前提として要求される。
本研究室で特筆すべきは、何と言っても初代教授の楠本正継博士以来、宋明儒学史研究の厚い伝統を誇り、日本におけるセンターの一角をなすことだ。宋明学関連漢籍の収蔵は質量ともに世界有数である。21世紀に入ってその価値はむしろ高まるばかりである。
研究室レベルの活動としては、年数回開催される「中哲懇話会」、年1回発行の『中国哲学論集』がある。また、研究室を会場にして、明代思想研究をはじめとする研究会が開かれており、近隣の大学等から研究者が集まって、原典講読や活発な討論が行われている。その場には大学院生も参加して大いに学的刺激を受けている。