先輩原田泰教君(博士課程三年)の研究室紹介:
インド哲学史研究室では、インド、及びその周辺地域で書かれたテキストを文献学的アプローチによって研究することを目的としています。文献としてはヴェーダの時代から、ウパニシャッドが作られ、仏教やジャイナ教が興隆し、相互交流する時代まで、かなり長い時代を取り扱います。
また、インド「哲学史」という名称が使われていますが、実際には哲学を研究している人ばかりではありません。ヒンドゥー教、仏教、ジャイナ教はもとより、インドの文学、文法学、論理学、数学、天文学、医学など、インドに関するものだったら何を研究してよいといっても過言ではありません。共通項としては、サンスクリット語を始めとして、パーリ語やチベット語等のインドに関わる言語で書かれたテキストを読んで、それを出発点とすることでしょう。ただし、現代インドのことや、インドの歴史に関しては九大の印哲研究室で研究するのは難しいでしょう。
学部段階での学習手順を具体的に見てみましょう。まず、2年生で進学したら半年〜1年かけてサンスクリットの文法を勉強します。それからリーダーとして主にサンスクリット文学のテキストを読み、語学力を磨いて行きます。同時に、講義に出たり、自分で本を読んだりしてインドに関する知識を身につけます。3年生になって一通りサンスクリットが読めるようになると、様々な演習に出席し、丁寧にテキストを読む文献学的手法を学びます。演習はほとんどの場合講読の形式が取られます。サンスクリットのテキストを予習の段階で読み、授業では自分が読んで和訳した部分を発表し、何故その様な訳にしたのか、その単語の持つ意味・背景などについて徹底的に追求します。最後に4年生で卒業論文を書けば、無事卒業、ということになります。もし、そのまま研究を続けたいと思ったら、修士課程(2年)や博士課程(3年)に進むのもよいでしょう。
もしあなたがインド哲学史を専攻として選びたいと思ったら、第二外国語はドイツ語(か、フランス語)を選択することをお勧めします。学部生のうちはそれほどでもありませんが、インド学は外国語で書かれた論文を読む必要性に迫られることが多々ありますので、これらの言語が読めれば、取り扱える文献の量が飛躍的に増えることは言うまでもありません。
インド哲学は高校の世界史で「ウパニシャッド」「アートマン」等のいくつかの言葉を習うくらいで、あまり馴染みのない研究分野かもしれません。しかし、異国の文学や思想について学んでみたい、仏教の起源について知りたい、等という興味を少しでも持ったら、インド哲学の扉をたたいてみるのは如何でしょうか。
読んでおきたい本
『インド思想史』東京大学出版会
『インド思想史』中村元、岩波書店
『インド文明の曙』辻直四朗、岩波新書
『初めてのインド哲学』立川武蔵、講談社現代新書
『古代インドの神秘思想』服部正明、講談社現代新書
エッセイ
岡野潔
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