サイドナビ

年次大会

入会



西日本社会学会第82回大会のお知らせ

開催日時

2024年5月25日(土)・26日(日)
開催校:久留米大学 御井キャンパス
(ニュース第173号(大会プログラム)はこちら

開催場所

久留米大学 御井キャンパス
〒839-8502 福岡県久留米市御井町1635

シンポジウムの概要

就労をめぐる不安定さと困難

5月25日(土)14:00 〜 17:00(報告・討議を含む)

 司会   二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)
 
 報告者
 第1報告 打越正行(和光大学)
  沖縄の建設業からみる日本型雇用システム――建設現場の男性たちの社会関係・身体・感覚から読み解く
 第2報告 金本佑太(神戸学院大学)
  若年無業者の社会的排除の実態と社会的包摂に向けた支援のあり方――地域若者サポートステーション事業利用者の事例から
 第3報告 二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)
  過疎地域における外国人の就労と生活――グローバル経済社会を生き抜く生活戦略としての越境労働

 コメンテーター 王美玲(台湾・淡江大学)
         堤圭史郎(福岡県立大学)

シンポジウムの概要

二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)

 高度経済成長とともに確立した日本的雇用システムは、多くの正規労働力を包摂する一方で、中小零細企業の低賃金労働者や、日雇労働者、パートタイマーの女性などを活用しつつ周縁化してきた。1990 年代以降、長引く不況や様々な社会変動を背景に、日本的雇用システムは現在まで大きく揺らぐとともに、周縁的な不安定雇用を拡大させてきており、不安定就労層の拡大や若年無業者の増加も指摘されてきた。国内で急増する外国人労働者の多くもまた、新たな周縁層を形成している。周縁層の生活困窮リスクが高まるとともに、不安や疾病を抱えて、安定的な雇用への移行に困難をきたすなど、人々は様々な形の生きづらさを強いられている。一方で、これらの厳しい現実がどのように生きられているのかは、必ずしも一様に把握できるわけではない。よって、マクロ・メゾ・ミクロの次元に分け入りながら、理解を深める必要があるだろう。
 シンポジウムのねらいは、こうした今日の就労をめぐるさまざまな不安定さと困難が、具体的にどのような形で立ち現れているのかを明らかにすることにある。その際、上記の社会変動に加えて、対象とする地域の産業構造や経済状況といったローカルな文脈にも目配りしつつ、そこで生じる困窮や生きづらさを理解しようと試みる。同時に、当事者がどのように現状と対峙し、抗い、道を切り拓いていこうとしているのかという生の実践、あるいは地域社会による問題への社会的対応が当事者に対してもつ意味などにも目を向けたい。
 現時点での報告者、報告題目、報告概要は以下の通りである。

打越正行(和光大学)「沖縄の建設業からみる日本型雇用システム――建設現場の男性たちの社会関係・身体・感覚から読み解く」
 本報告は沖縄の建設業から、特にそこで働く男性たちの社会関係、身体、感覚にもとづいて、日本型雇用システムの欺瞞を暴くことを目的とする。ここでいう欺瞞とは、沖縄の建設業で働く男性らが日本型雇用システムに依存しているのではなく、日本型雇用システムこそが、彼らに依存しているということである。彼らは、厳しい上下関係を形成し、暴力をいとわない身体をつくりあげ、閉鎖的な空間感覚/現在志向の時間感覚を身に付ける。それらはなんらかの指導や支援が行き届かない結果として表れるものではない。そうではなく、彼らが沖縄の建設業を生き抜く過程で積極的に身に着けたものであり、同時に身に着けざるをえない彼らの生き方としての文化である。その文化のダイナミズムを読み解きながら、日本型雇用システムが、沖縄の建設業に依存してきた現実を明らかにする。

金本佑太(神戸学院大学)「若年無業者の社会的排除の実態と社会的包摂に向けた支援のあり方――地域若者サポートステーション事業利用者の事例から」
 本報告では、地域若者サポートステーション(サポステ)事業利用者の事例をもとに、学校から離れた後に就職しない・できないことで社会との接点を失ってしまう若者の社会的排除の実態と、就労支援を通じて社会的包摂を目指すサポステの取り組みを報告する。日本社会に主流とされてきた「新卒一括採用」的移行が社会構造の変動のなかで達成困難となり、自信喪失や劣等感、人間関係の希薄化、自己責任規範へのとらわれ、将来展望の持てなさといった生きづらさを抱え込まされている若者が増えている。そうした多様な生きづらさの実態と、それらを解消するため地域社会のなかでサポステの取り組みがどう機能しているのか、サポステの存在は若者にとってどのような意味を持つのかについて検討したい。

二階堂裕子(ノートルダム清心女子大学)「過疎地域における外国人の就労と生活――グローバル経済社会を生き抜く生活戦略としての越境労働」
 本報告では、深刻な労働力不足にあえぐ過疎地域で就労する技能実習生や特定技能生などの外国人を取り上げる。彼・彼女らは、低賃金かつ短期の仕事に従事するとともに、借金返済と家族への送金のため、切り詰めた生活を余儀なくされている。また、外国人散在地域では、同胞ネットワークの構築も困難となる。
その一方で、外国人のなかには、過疎地域での就労を「足がかり」として、技能実習終了後に異なる就労ビザを取得し、別の地域(特に大都市部)や職種への移動をもくろむ者も少なくない。こうした状況のなか、外国人を長期間にわたって引き留めたい雇用者と、限られた選択肢の中から生活の質的向上につながる道を見極めようとする外国人労働者の間で、攻防が繰り広げられ、ときに両者が手を結ぼうとする。
上記のような現状認識のもと、本報告では、グローバル経済の進展を背景に、アジアの労働者がどのような生活戦略によって海外就労を選び、過疎地域の就労先で直面する課題とどのように向き合いながら、いかなる将来を展望しているのかについて検討を加えたい。

 なお、コメンテーターは、以下の 2 名が務める。司会進行は、二階堂が担当する。
王美玲(台湾・淡江大学)
堤圭史郎(福岡県立大学)
 みなさま、どうぞご参加ください。

問い合わせ先

連絡は以下までお願い致します

〒819-0395
福岡市西区元岡744
九州大学文学部社会学・地域福祉社会学研究室内
西日本社会学会事務局
092-802-5287
sociowest@lit.kyushu-u.ac.jp
お問い合わせフォーム