文学部 人文学科 人間科学コース
比較宗教学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年: 2年生 3年生 4年生
対象学部等:
比較宗教学講義 VI
Comparative Religions (Lecture VI)
講義題目  現代ロシアの宗教問題
北海道大学スラブ・ユーラシア研究センター助教 高橋 沙奈美
科目ナンバリングコード: LET-HUM3812J
講義コード: 16057014
2016 後期
集中
箱崎 共同演習室 教室
J科目 (日本語, 日本語)
更新情報 : 2016/2/29 (17:32)
授業の概要 この授業では、ロシアの事例を基に、グローバルな宗教の展開について知見を深め、広い視野から宗教文化について考え、発信する基礎力を身につけることを目標とします。
20世紀のロシアは、共産党の一党独裁のもと、上からの近代化(社会主義的近代化)を計画的かつ強力に推し進め、その一環として宗教の存在しない社会の建設を目指しました。しかし、そのような政策にも関わらず、伝統文化や民衆の生活実践、さらには外交と結びついて人々の信仰心や宗教組織は70余年に及ぶ社会主義時代を生き延び、現在に続いています。
この授業では、現代ロシアで宗教が抱える問題を概観し、ロシアの国家的宗教ともいえるロシア正教を中心に、その歴史的な成り立ちから現代社会における諸問題までについて学びます。

(This lecture course is designed to introduce students to history of Russian Orthodoxy and some problems, concerning to religion in contemporary Russia. Students are expected to deepen the knowledge of global development of the concept of religion and religious culture on a wider perspective, based on the Russian case.
The socialist Russia pushed ahead modernization from above ("socialist modernization") and aimed to construct a society without religion. In spite of the state atheism, religious believers and institutions survived the totalitarian regime.Religious art was to be interpreted as a traditional art, religious practice became an unofficial, non-institutionalized local practice, and global connection of religious institutions were used as a diplomatic channel. The religious studies in Russia will show what complected concept is the term of "religion." )
キーワード : ロシア、地域研究、宗教とナショナリズム、社会主義的近代化、現地調査(フィールドワーク)
履修条件 : ロシアについての特別な知識や関心は不要です。ただし、世界史や世界情勢に対する興味関心を持っていること。
履修に必要な知識・能力 :
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
B_A-b [アプローチの理解]
ロシア地域の宗教研究の事例を通じて、現地での歴史資料収集や人類学的調査を通じて、実証的に明らかにする地域研究のアプローチを学ぶ。
学際的な性格を持つ地域研究のアプローチ方法を理解し、自らの調査に際して実践する準備ができている。 地域研究が、歴史学、文化人類学、政治学などのさまざまな調査方法に依拠することを理解し、それらを組み合わせることが重要である理由を説明できる。 歴史学、文化人類学、政治学などの学問領域の基本的特徴を理解し、地域研究がこれらを横断するものであることを説明できる。 歴史学、文化人類学、政治学など、大学で学ぶ人文社会科学の学問領域の基本的特徴と差異を理解している。
B_A-e [現代世界の理解]
現代ロシアの抱える諸問題を宗教研究の立場から理解し、説明できる。得られた知見に基づいて、自らが関心をもつフィールドについて、比較研究を行うための基礎力を身につける。
ロシアの抱える宗教問題について、歴史的経緯を踏まえて説明することができ、現代の世界情勢の中に位置づけることができる。 現代ロシアの抱える宗教問題を具体的に理解し、その歴史的背景について説明できる。 現代ロシアにおける宗教が関連する諸問題について、具体的な事例をいくつか挙げながら説明できる。 現代ロシアにおける宗教が関連する問題の存在を指摘できる。
B_B1-d [専門的研究手法]
現地調査(フィールドワーク)のために必要な、準備調査、資料収集の手法、聞き取り調査の進め方について、基礎力を身につける。
現地調査のために必要な準備調査、資料収集の方法、聞き取り調査の進め方についての理解が、授業や課題文献で指定された範囲を超えて積極的に進められている。 現地調査のために必要な資料収集や聞き取り調査についての研究書を読み、その手法について具体的に説明できる。 現地調査のために必要な資料収集や聞き取り調査についての研究書を読んでいる。 現地調査を行うにあたって必要な準備について理解していない。
B_C-d [興味関心の幅広さ]
ロシア社会の宗教、歴史、文化について基礎的な知識を見につけ、世界史と現代社会の中に位置づけることができる。
ロシア社会の基本的特徴を理解し、世界史と現代社会の中に位置づけて説明することができる。 ロシア社会についての特徴をまとめ、論理的に説明できる。 ロシアの宗教、歴史、文化、社会について基本的な説明ができる。 ロシアの宗教、歴史、文化、社会についての理解があいまいで、曲解や誤解を含む。
B_B2-e [コミュニケーション能力]
授業を通じて学んだ学習成果について、他人にわかりやすく、かつ論理的に説明することができる。
学習成果についてのまとめが的確かつ簡潔であり、独自の調査に基づいた発表ができる。
聞き手・読み手の興味を惹きつけるような発表方法の工夫(視覚資料の提示・発声・レイアウトなど)が見られる。
授業で得られた知見を正確かつ簡潔にまとめることができる。
聞き手・読み手の理解を促すような、資料提示や発表方法の工夫がなされている。
正確な情報に基づいて、論理的な発表ができる。
聞き手・読み手の注意力を妨げないよう、発表方法に注意を払っている。
発表の情報が不正確である。
発表の構成が不明確で聞き手・読み手の関心を引かない。
発表の声が小さい、あるいは誤字・脱字を多く含む。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : なし
参考書 : 地域研究について:
同志社大学グローバル地域文化学部編『地域研究への扉--グローバルな視点から考える――』晃洋書房、2013年。

ロシアの文化と宗教について:
森安達也『近代国家とキリスト教(第3章)』平凡社ライブラリー、2002年。
廣岡正久『キリスト教の歴史3 東方正教会・東方諸教会』山川出版社、2013年。
津久井定雄、有宗昌子編『ロシア 祈りの大地』大阪大学出版会、2008年。
野中進ほか編『ロシア文化の方舟――ソ連崩壊から20年』、東洋書店、2011年。
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 1日目
オリエンテーション:地域研究の特徴、現代ロシアにおける宗教の複層性、その歴史的成り立ち
学際的な性格を持つ地域研究の特徴について紹介します。また、地域に密着した研究成果についての知見を得ることが、比較宗教研究にとってどのような利点をもたらすのか考えます。
現代のロシアは多民族・多宗教国家です。どのような経緯でロシアが多様な宗教を抱え込むことになったのか、その歴史的経緯について概観します。
2 2日目
社会主義的近代化と宗教
ソ連時代のロシアにおける宗教の在り方について学びます。まず、ソヴィエト・ロシアが上からの近代化を強制的かつ計画的に推し進める性格を持っていたことを理解します。社会主義的近代化の一環としての無神論政策の下で、宗教は人文科学研究の対象となり、外交手段となり、文化遺産になりました。宗教という概念の多様な広がりについて学びます。
3 3日目
現代ロシアの諸問題と宗教
20世紀の後半から、ソヴィエト・ロシアにおいても宗教とナショナリズムの結びつきが顕著となりました。ここでは現代ロシア正教会が抱える政治的経済的問題について学びます。信者たちの信仰世界が社会主義的近代化を経てどのように維持されたのか、あるいは変容したのかについて、ジェンダー研究の視点を交えて学びます。
グループワークを含む可能性あり プレゼンテーション準備
4 4日目
総括
最終日には、事前学習を踏まえて、これまでの授業で学んだ知見をまとめてプレゼンテーションを行います(履修者の数によって、グループ発表にするか個人発表にするかを決めます)。
プレゼンテーションに対して議論を行い、知識を深めます。
この日得られた批判的検討を含めてレポートを作成します。
プレゼンテーション レポート作成

成績評価
観点→
成績評価方法
B_A-b
[アプローチの理解]
B_A-e
[現代世界の理解]
B_B1-d
[専門的研究手法]
B_C-d
[興味関心の幅広さ]
B_B2-e
[コミュニケーション能力]
備考(欠格条件、割合等)
プレゼンテーション 30%程度。
レポート 70%程度。
出席 5%程度。

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 毎回の講義の後、質問・意見を受け付けます。
事前学習やレポート作成に関する質問については、メールで対応します。takahashi.sanami@slav.hokudai.ac.jpまで。

授業以外での学習に当たって : 集中講義ですので、授業の合間に自主学習をすることはほとんど不可能です。事前に参考文献を読むなどの自主学習を強く勧めます。
3日目にはプレゼンテーション準備のための時間を設ける予定ですが、授業時間内に十分な準備ができなかった場合には、授業時間外の学修が求められます。
レポートの作成はすべての授業の終了後に行います。

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)