人文科学府 人文基礎専攻 哲学・倫理学 分野
倫理学 専修
専修科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
西洋倫理学研究 VI
Western Ethics (Seminar VI)
講義題目  西洋倫理学研究 VI (前期・集中 )
立正大学文学部 教授 田坂 さつき
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2016 前期
集中
箱崎 教室
J科目 (日本語, 日本語)
更新情報 : 2016/4/11 (10:45)
授業の概要  プラトンの著作『テアイテトス』を読み、古代ギリシャから現代に至るまで、哲学者・倫理学者が考え続けた問題について考える。定義の探求・人間の学びの構造・知恵と慎み深さ・相対主義・万物流転説・直接経験と言葉・感覚とドクサ・イデア論などを扱う。
 授業は日本語に訳されたプラトンのテキストを中心に行うが、ギリシャ語原典に立ち返って、言葉一つ一つを見直し作業を経て、学術論文も参照しながら議論をする。

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キーワード :
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
MP_A-a [先行研究の理解]
「言葉」に対する自覚的かつ反省的な関わりを通じて、人間存在への理解を深める。
日本語の学術論文における論者の主張の整合性や問題点を考察することができ、批判的視点を持つことが出来るだけでなく、海外の学術論文を読むことも出来る。 日本語の学術論文における論者の主張の整合性や問題点を考察することができ、批判的視点を持つことが出来る。 日本語の学術論文における論者の主張が理解できる。 日本語の学術論文を読み解くことが難しい。
MP_A-c [研究史と方法論の体系的理解]
長い文化的伝統のなかで人類が生み出してきた知的所産である「古典」を、厳密に読解する能力を身に付けることができる。
古代哲学研究と現代哲学の問題とが関係していることが理解できるが、概念や枠組みの違いも認識でき、その異同について考察でき、研究法を体系的に理解できる。 古代哲学研究と現代哲学の問題とが関係していることが理解できるが、概念や枠組みの違いも認識でき、その異同について考察できる。 古代哲学研究と現代哲学の問題とが関係していることが理解できる。 研究史を考察することが難しく、古代哲学研究の意義が理解できない。
MP_B1-a [一次資料の読解]
専門分野の基本文献を精確に解釈、分析することができる。
プラトンの著作の翻訳を読んで読解するなかで、哲学的・倫理学的問題を明確にすることができ、批判的な視点を持つことが出来る。 プラトンの著作の翻訳を読んで読解するなかで、議論構成を明確にすることによって、哲学的・倫理学的問題を明確にすることができる。 プラトンの著作について、翻訳を通して読解するなかで、哲学的・倫理学的問題を理解することが出来る。 プラトンの著作について、翻訳を通して読解することが難しい。
MP_B1-c [理論的な分析]
批判的な討論を通して、自らの意見をより客観的視点から組み立てる姿勢を養うことができる。
プラトンの著作の翻訳を読んで読解するなかで、議論構成を分析にすることによって、議論の妥当性や有効性について考察することができ、批判的な視点を持つことが出来る。 プラトンの著作の翻訳を読んで読解するなかで、議論構成を分析にすることによって、議論の妥当性や有効性について考察することができる。 プラトンの著作について、翻訳を通して分析するなかで、哲学的・倫理学的問題の立て方を学ぶことが出来る。 プラトンの著作について、翻訳を通して分析することが難しい。
MP_B2-b [理論的思考力]
専門分野の内容に関する深い理解と、学問固有の思考方法を獲得する。
プラトンの著作の翻訳を読んで分析することにより、普遍的な哲学的・倫理学的問題を立て、それについて自らの見解を持ち、批判的に考察できる。 プラトンの著作の翻訳を読んで分析することにより、普遍的な哲学的・倫理学的問題を立て、それについて考察することができる。 プラトンの著作について、翻訳を通して考察するなかで、普遍的な哲学的・倫理学的問題を立てることが出来る。 プラトンの著作について、翻訳を通して考察することが難しい。
MP_C-a [積極性]
自ら進んで新しい問題に取り組む積極性を持つ。
プラトンの著作をテキストとしたこの授業の事前学習を行い、準備を整えて参加し、積極的に質問や発言をするだけでなく、自ら先行研究を調べるなど、自主的な学習態度がみられる。 プラトンの著作をテキストとしたこの授業の事前学習を行い、準備を整えて参加し、積極的に質問や発言をする。 プラトンの著作をテキストとしたこの授業の事前学習を行い、準備を整えて参加する。 プラトンの著作をテキストとした授業への参加が消極的である。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : プラトン『テアイテトス』(田中美知太郎訳)岩波文庫 1966年初版 2014年改版
参考書 : 1.田坂さつき『『テアイテトス』研究―対象認知における「ことば」と「思いなし」の構造』知泉書館 2007
2.プラトン『ソクラテスの弁明』(納富信留訳)光文社文庫
3.プラトン『国家』(藤沢令夫訳」岩波文庫
授業資料 : 1.田坂さつき「『テアイテトス』151d7-153a4の構造 : 「なにものもそれ自体一であることはない」をめぐる考察」『哲學』 53, 167‐176,244,2002
https://www.jstage.jst.go.jp/article/philosophy1952/2002/53/2002_53_167/_pdf
2.田坂さつき「感覚と思考 : プラトン『テアイテトス』184b4-187a8の構造」『西洋古典學研究』 46, 22-32, 1998
http://ci.nii.ac.jp/els/110007382074.pdf?id=ART0009244291&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1460333176&cp=
3.土屋賢二「実体と自体性」『西洋古典學研究』 28, 24-34, 1980 http://ci.nii.ac.jp/els/110007381590.pdf?id=ART0009243698&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1460332510&cp=
4.田坂さつき「プラトンのイデア論をめぐる問題 −『テアイテトス』における相撲の比喩を手がかりに−」『立正大学大学院紀要』 (31), 79-98
http://repository.ris.ac.jp/dspace/bitstream/11266/5661/1/%E7%94%B0%E5%9D%82%E3%81%95%E3%81%A4%E3%81%8D.pdf
5.田坂さつき「アポリアの解明 -- 『テアイテトス』 208c6-210b3における「対象認識の構図」」『倫理學年報』 44, 19-34, 1995
6.田坂さつき「プロタゴラスの相対主義と自己反駁--『テアイテトス』169d3-171d8の一解釈」『倫理学年報』 52, 3-17, 2003

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 プラトンの対話篇『テアイテトス』冒頭(1章)を読解し、対話という形式で哲学書を書いた意図を考える。ソクラテスの独白といく特異な形式である『ソクラテスの弁明』と比較する。 プラトンの対話篇『テアイテトス』の1章を読む。『ソクラテスの弁明』も目を通しておく。
2 『テアイテトス』導入部(2章)から哲学的・倫理学的問題を抽出し、「将来有望な学生とは誰か」「人を知るとはどういうことか」などについて議論する。 演習 『テアイテトス』の1章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。
3 『テアイテトス』における定義の探求の始まりを分析し、その特徴と問題点を考える。「何であるか」を問うことの意味、哲学・倫理学の探求と、数学の探求の異同などを議論する。 演習 『テアイテトス』の3章から5章を読み、論点を整理し考察をまとめておく。
4 『テアイテトス』にのみ詳細な記述がある、ソクラテスの産婆術について考える。教師と生徒の関係、知識の伝授可能性、知恵と知識は違うか、などについて考える。 『テアイテトス』の6章から7章を読み、論点を整理し考察をまとめておく。
5 『テアイテトス』第一部の「知識は感覚である」という定義の構造とその問題点について考える。「知識は感覚である」という定義に与する、プロタゴラスの説、ヘラクレイトスら知者の説との関係を明確にして、議論すべき点を確定する。 『テアイテトス』の8章から28章に目を通しておく。田坂さつき「『テアイテトス』151d7-153a4の構造 : 「なにものもそれ自体一であることはない」をめぐる考察」『哲學』 53, 167-176,244, を読んでおく。
6 プロタゴラスの「人間は万物の尺度である」という説の特徴と問題点を考える。相対主義を正義や善悪などの倫理問題に適用するのは、現代にも通じる問題点である。プロタゴラスの説に対するソクラテスの反駁に対して、プロタゴラスが応酬する箇所を読み、この議論の論点を確認して、論駁のあり方について議論する。 演習 『テアイテトス』の8章、16章から21章を読み、論点を整理し考察をまとめておく。
7 プラトンが最も説得力があると考えた「プロタゴラスの自己反駁」の議論の妥当性について考える。 演習 『テアイテトス』の22章から23章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。
8 倫理的判断を相対化するプロタゴラスに対して、プラトンが提示した「未来の判断に関する反駁」の妥当性と有効性について議論する。 演習 『テアイテトス』の24章から26章を読み論点を整理し、考察をまとめておく。
9 ヘラクレイトスら知者たちの「万物は流動する」という説の特徴と問題点を考える。感覚を説明する物理学の理論からみると、われわれの「ことば」は不正確であり、イデアなどの抽象的な実在を立てることは愚かしいと考えられがちである。この問題は『テアイテトス』で提起され、プラトンがそれに答えている。これは現代のわれわれの問題でもある。 『テアイテトス』の9章から17章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。
10 ヘラクレイトスら知者たちの「万物は流動する」という説を基にした、古代の感覚モデルを分析して、その背景にある理論そ探り、われわれの「ことばの使用可能性」と科学理論との関係を考える。 演習 『テアイテトス』の27章から28章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。
11 プラトンによる「知識は感覚ではない」という反駁を分析して、その基盤となる「共通のもの」「あること」「美醜善悪」などについて考える。 演習 『テアイテトス』の29章から30章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。田坂さつき「感覚と思考 : プラトン『テアイテトス』184b4-187a8の構造」『西洋古典學研究』 46, 22-32, 1998 を読んでおく。
12 『テアイテトス』第二部における「偽なる思いなし」に関する問題提起について詳説して、プラトンが提示した「偽なる思いなし」の構造を説明する2つのモデルについて考える。 『テアイテトス』の31章から38章に目を通しておく。
13 『テアイテトス』第三部末尾において、第一部と第二部の問題をどのような形でプラトンが結論づけたのかを確認して、それについて考える。 演習 『テアイテトス』の43章を読み、論点を整理し、考察をまとめておく。
14 『テアイテトス』におけるプラトンの思索をアリストテレスがどのような形で引き受けて展開したのかを考える。 演習 土屋賢二「実体と自体性」『西洋古典學研究』 28, 24-34, 1980、および 田坂さつき「プラトンのイデア論をめぐる問題 −『テアイテトス』における相撲の比喩を手がかりに−」『立正大学大学院紀要』 (31), 79-98,を読んでおく
15 『テアイテトス』の末尾の箇所を読み、「将来有望な学生とは誰か」「人を知るとはどういうことか」を考え、『テアイテトス』を読むことで何を学んだかを考える。 『テアイテトス』の44章を読み、論点を整理し考察をまとめておく。

成績評価
観点→
成績評価方法
MP_A-a
[先行研究の理解]
MP_A-c
[研究史と方法論の体系的理解]
MP_B1-a
[一次資料の読解]
MP_B1-c
[理論的な分析]
MP_B2-b
[理論的思考力]
MP_C-a
[積極性]
備考(欠格条件、割合等)
レポート
授業への貢献度
出席

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 :

授業以外での学習に当たって : プラトンの対話篇『テアイテトス』の1章から38章、43章から44章を扱う。集中講義の前に内容を十分理解できなくても、目を通しておき、各講義や演習の前後に指摘箇所について読みなおすことが望ましい。これ以外に、学術論文を4編事前学習として使用する。これは必ず事前に読んでおくこと。

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)