人文科学府 人文基礎専攻 東洋思想 分野
インド哲学史 専修
専修科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
アジア宗教思想特論 I
Religions in South Asia and Tibet (Specialized Lecture I)
講義題目  中論研究
准教授 片岡 啓
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2016 前期
毎週 木曜2限
箱崎 203 教室
J科目 (日本語, 日本語)
更新情報 : 2016/3/7 (19:20)
授業の概要 紀元後2世紀頃に著された龍樹の『中論』.サンスクリット語の詩節で著された本著は,爾来,インド・チベット・中国・日本の多くの人を魅了してきた.実際,多くの註釈が残されている.数ある仏教論書の中でも一二を争うベストセラーと言って良い.その魅力は,8X4=32音節の各短句に込められた一個一個の論理の鋭さにある.龍樹を踏まえずに大乗仏教の空(くう)の思想は成り立たない.相手の論理を突き崩す龍樹の批判的態度は「帰謬(きびゅう)論証」として知られている.その仏教論書にダイレクトに切り込もう,龍樹の胸を借りよう,というのが本講義の狙いである.これまでの和訳・英訳は,サンスクリット原典に照らすと,残念ながら信頼できないものが多い.サンスクリットと読み比べてみると,びっくりするくらい,いい加減である.サンスクリット原典訳を謳いながらも,むやみに漢訳語に引きずられているものも多い.本講義では,最も信頼できる最新の英訳(ネット公開されている桂紹流・マークシデリッツ訳)をベースに,一句一句を丁寧に解釈・解説していく.サンスクリットの予備知識,仏教の予備知識は必要ない.仏教学初心者でも分かるよう,ゆっくりと進めていく.その中で,仏教書を読むのに必要な知識も身につくよう配慮する.「仏教書は今まで読んだことがない」という学生でも分かる仏教学入門である.授業は,原典に即して,講義形式で進めていくことを基本とするが,眠くならないよう,学生参加のディスカッションも間に入れて進めていきたい.量を読み進めるよりは,質的な理解の前進を第一目標とする.龍樹の議論は,一貫して,我々が前提としてしまう「固定的な本質」という観念を否定することにある.あらゆるものが固定的な本質を欠いていること,それが空(くう)ということであり,また,無我(むが),すなわち,無自性(むじしょう)ということである.龍樹の論書は,驚くほどにドライである.抹香臭い「人生哲学の説法」を期待するなら,それは的外れである.ややもすれば無味乾燥なドライなロジックが延々と展開される.インド的な議論の世界がそこには広がっている.紀元後2世紀の龍樹が何を問題としていたのか,その背景を踏まえながら,仏教学の基礎中の基礎,空の哲学の核心に共に迫りたい.

(This lecture course focuses on Nagarjuna's masterpiece Mula-madhyamaka-karika in order to provide an overview of the basic perspectives and concepts of "emptiness" and "middle path" in the Buddhist philosophy.)
キーワード :
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 : サンスクリット語の知識は前提とはしていない
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
MP_B1-a [一次資料の読解]
哲学および芸術学の領域に関する文献や一次資料を厳密に読解する能力を身につける。
文献中に出てくる概念を正確に理解しており,それを自身の言葉で説明できる. 文献中に出てくる概念を十分に理解している. 文献中に出てくる概念が文脈に即して理解できる. 一個一個の概念について,更なる理解が必要.
MP_A-a [先行研究の理解]
哲学を対象とする領域では、古典的な文献著作を厳密に読解するとともに、重要な先行研究に基づいてその内容を批判的に検討し考察できる。
著者の主張を正確に理解し,それを自身の言葉で説明できる. 著者の主張を十分に理解している. 著者の意図を文脈に即して理解している. 著者の意図を理解していない.
MP_A-c [研究史と方法論の体系的理解]
哲学、倫理学、インド哲学史、中国哲学史、芸術学、 これらのうち一つについて、当該分野における研究史と方法論を体系的に説明できる。
文献の成立背景を踏まえて,古典の論理を正確に理解し,また,それを自身の言葉で説明できる. 古典の論理を正確に理解している. 論理を文脈に即して理解できている. 論理展開を十分に理解していない.
MP_B2-b [理論的思考力]
人文科学の実証的な方法と理論的な思考力を身につける。
仏教学に必要な知識を十二分に身に付ける. 仏教学に必要な知識を十分に習得する. 仏教学に必要な基礎知識を身に付ける. 仏教書を読むのに必要な知識が不十分である.
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 各自『インド学チベット学研究』 掲載英語論文Mark Siderits & Shoryu Katsura Mūlamadhyamakakārikā をダウンロードしておくこと
http://www.jits-ryukoku.net/data/09/ick09_siderits-katsura.pdf
http://www.jits-ryukoku.net/data/12/ick12_siderits-katsura.pdf
http://www.jits-ryukoku.net/data/14/ick14_siderits-katsura.pdf
参考書 : 全体は一書にまとめられて刊行されている.お金に余裕のある人はこちらが便利.
Nagarjuna's Middle Way: Mulamadhyamakakarika (Classics of Indian Buddhism) Paperback – June 11, 2013 by Mark Siderits (Author), Shoryu Katsura (Author)
授業資料 : http://www.jits-ryukoku.net/ick_table.html

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 講義全体のイントロダクション
2 中論第1章の解読とディスカッション
3 中論第2章の解読とディスカッション
4 中論第3章の解読とディスカッション
5 中論第4章の解読とディスカッション
6 中論第5章の解読とディスカッション
7 中論第6章の解読とディスカッション
8 中論第7章の解読とディスカッション
9 中論第8章の解読とディスカッション
10 中論第9章の解読とディスカッション
11 中論第10章の解読とディスカッション
12 中論第11章の解読とディスカッション
13 中論第12章の解読とディスカッション
14 中論第13章の解読とディスカッション
15 中論第14章の解読とディスカッション

成績評価
観点→
成績評価方法
MP_B1-a
[一次資料の読解]
MP_A-a
[先行研究の理解]
MP_A-c
[研究史と方法論の体系的理解]
MP_B2-b
[理論的思考力]
備考(欠格条件、割合等)
小テスト 50%.最終回に授業内で行う.
授業への貢献度 50%.毎回提出してもらう質問・感想で算出する.

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 授業後随時

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)