人文科学府 歴史空間専攻 広域文明史学 分野 西洋史学 専修 専修科目 (単位数 2) 選択必修科目 対象学年: 対象学部等: |
Historical Sources in Early Modern Europe (SeminarT)
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科目ナンバリングコード: 講義コード: 2016 後期 毎週 木曜5限 箱崎 演習室 教室 J科目 (日本語, 日本語) |
授業の概要 |
P.アリエス以降、子ども史研究は数々の研究成果をあげてきた。同時に、子どもをめぐる国家や社会、そして世界の有り様、そして、それを見る眼、視座も徐々に変化しつつある。イギリス子ども史研究の大家であるH.カニンガム(Cunningham, Hugh)は次のように述べている。 子ども期が、「人生の特別な時期として認められるべきであるという考え」も、「子どもが生き続けられるように大人自身が守ってやるべきだという考え」も、ヨーロッパで生まれたロマン主義の見方であり、ヨーロッパ社会に深く浸透し、堅持されてきた。しかし、それはヨーロッパだけに限られなかった。20世紀には、ボランタリー組織と政府組織の両方の国際機関が、公的な注目を引きつけようとしばしば張り合いながら、ヨーロッパ的な子ども期の観念を演出しようとした。1924年の国際連盟「子どもの権利宣言」に始まり、1959年の国際連合「子どもの権利宣言」を経て、1989年「子どもの権利に関する代表者会議」に至るまで、相次ぐ子どもの権利に関する声明は、ヨーロッパ的な子ども期の観念を具現している。国際労働機関(ILO)は、1919年の創設に際して「児童労働の廃止」を掲げ、1973年には16歳以下の子どもはいかなる形態の生産労働にも従事しない世界を描いたが、これは、ヨーロッパ世界以外では観念、実態とも明確に相容れない考えであった(『概説 子ども観の社会史―ヨーロッパとアメリカにみる教育・福祉・国家』新曜社、2013年、260〜261頁より、原著1995年)。 これは、まさにH.カニンガムが自身の研究で解明した、17世紀から19世紀にかけてのイギリスの貧困層、労働者階層の子どもたちに対する「配慮」の具体化によって起きたことは、「労働から教育へ」ではなく、「勤勉と時間の自己管理力形成のための労働教育の発明」という「子ども期への特別な配慮」であったことも関連するだろう(Cunningham, Hugh, ‘The Employment and Unemployment of Children in England c. 1680-1851’, Past and Present, No. 126, Oxford UP, 1990, pp.115-150)。20世紀におきたことは、イギリスの貧困層の子どもたちと同様に、非西欧世界の子どもたちの「時間」が、大人からの配慮とそのための活動に占められていく様相である。ヨーロッパ内部においてもそうしたベクトルに対しては反発や抵抗など、相容れない価値観が存在していたことは確かである。しかし、にもかかわらず、同時に、このヨーロッパ的価値観は、普遍性の装いをもって、非ヨーロッパ世界に相対し、それが欠落していることを「非文明性」「遅延性」の根拠とし、ヨーロッパ側の「文明化」、すなわち文化的支配の権力を正当化してきた。 本演習は、上記にある、戦間期ヨーロッパ諸国による「子どもの権利」の国際的展開についての論文、Marshall, Dominique, 'The Construction of children as an object of international relations: The Declaration of Children's Rights and the Child Welfare Committee of League of Nations, 1900-1924', The International Journal of Children's Rights 7, pp.103-147, 1999を講読する。 「子どもの権利」、すなわち、子ども期は特別な配慮を受ける権利があり、大人はその配慮の責任と義務があるという考えが、ヨーロッパ的、普遍的価値観として醸成され、国際強調のシンボルとして機能する様相とその権力性を、歴史的過程に即して具体的に検証し、議論を深めたい。 なお、英語論文を読む前に、関連する日本語論文を読み、導入とする。 (This course aims to familiarize students with the source materials available for the study of the Children's rights in the 20 Century.) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キーワード : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
履修条件 : 履修に必要な知識・能力 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特記事項 |
受講を希望する学生は、学期前にあらかじめ、担当教員、あるいは文学部西洋史学研究室に相談すること。
教職 : 資格 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
到達目標 |
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
授業方法 |
テキスト : Marshall, Dominique, 'The Construction of children as an object of international relations: The Declaration of Children's Rights and the Child Welfare Committee of League of Nations, 1900-1924', The International Journal of Children's Rights 7, pp.103-147, 1999 参考書 : 授業資料 : 授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
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成績評価 |
GPA評価
成績評価基準に関わる補足事項 : 担当についてのレジュメ、議論への参加などによる評価。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
学習相談 |
学習相談 : 随時応じます。メール等でアポイントをとってください。 授業以外での学習に当たって : 論文は、文脈を理解しなければ読むことはできない。担当以外の箇所も必ず読み、不明点、疑問点などを授業で確認すること。 合理的配慮について : 障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。 <相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階) (電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp) |