文学部 人文学科 人間科学コース
心理学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年: 学部2年 学部3年 学部4年
対象学部等:
環境心理学講義I
Environmental Psychology I
講義題目  宮崎アニメで読み解く「生きる」ための環境心理学
教授/教育学部 南 博文
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2018 前期
毎週 月曜3限
伊都イーストゾーン 203 教室
J科目 (日本語, 日本語)
更新情報 : 2018/4/4 (00:07)
授業の概要 「生きる力」はどこから来るだろうか。少なくとも教えられてどうかなる性質のものではないように思える。それにも関わらず、現代の子ども達や若者に対して、先行する世代が危機感を覚え、国の教育目標に挙げるとしたら、その背景に潜む問題のありかについて、一度きちんと向き合って考えてみる必要がある。この問題は、必然的に哲学的な問いにつながる。私たちが「生きて」いる(居る)ことが、どう成り立つかを、理論的にもまた具体的にも問い直し、見直すことが必要な作業となるからである。
環境心理学は、人間のあり方を、各自を取り巻く周囲(環境)との関わりの中で理解し、そこで生じる心理的な問題を人と環境との相互作用、相互浸透(双方が区別されずに一体的に流動すること)の過程として関係的、動的にみていく学問である。環境の中に居ない状態はない。それは、「生きて」いることと同義である。その始まりは、地球上での生命の発生にあり、周囲とは、ある中心として作用する生きる核の誕生と共に、「その周り」として定義される。
本講義では、「生きろ!」を主題として、現代の子どもや大人に向けて、世界の神話に題材を取った縦横無尽なストーリーで、人間の危機と成長を描いてきたアニメ作家、宮崎駿のいくつかの作品を介して、「生きる」あるいは「生き抜く」ための環境心理学への導きを試みる。
合わせて、生きて「居ること」の不思議を、現代哲学の潮流のいくつかとシンクロさせながら真正面から考えるために、三宅陽一郎「人工知能のための哲学塾」(BNN, 2015)をテキストとして用いる。特に意識しているのは、フォン・ユクスキュルの「環世界」論と、ギブソンの「アフォーダンス」論であり、それに至る理解の基礎として、フッサールとメルロ=ポンティの現象学にも触れることになる。人工知能という今後のわれわれの生活世界にとって、のっぴきならない「他者」が存在感を増している現在、彼ら/彼女らを無視することはできない。そもそも「それ」は、生きているのか?意識を持つのか?周囲と関わるのか?こうした問いは、技術の領域と手を取りながら、同時に哲学の思考によって鍛えられてきた現代思想と対話しなければ解けない。その点で、三宅(2015)と問題意識を共有しつつ、環境心理学という個別学問の道具箱(概念の集まり)を整理していく上で、宮崎アニメを手掛かりとしつつ、「生きる」という現象を自分ゴトとして理解するのに力をあたえてくれるアイデアの森を探索する。

(The central theme of Miyazaki Hayao's works is "Just live!" throughout his career. This is consonant with the current issue of our nation for the younger generations and children with respect to the national agenda of "the power to live (IKIRU CHIKARA)." If such themes capture the shared concern of the older generations who have been through the post-World War II trial and hard wok period, we may be better off to face squarely with what exactly is meant by this IKIRU CHIKARA from theoretical and practical point of views.
Environmental Psychology is a discipline dealing with psychological problems involved in human interaction and "transaction" (as the environment and human-beings are not separable in the actual happenings) with the surrounding environments in relational and dynamic ways. No being can be possible without situated in the environment. Therefore being in interaction with the surrounding is synonymous as "Living." In this lectures we deal with topic and concepts in the environmental psychology for our "Living" through the woks of Miyazaki Hayao. )
キーワード : 環境心理学、環世界、人間と環境との相互浸透(トランザクション)、身体、場所、アフォーダンス、現象学、居場所
履修条件 : 心理学の基礎を心得ていることが望ましい(「心理学入門」の受講、あるいは心理学の基礎的なテキストを読んだ経験)。
履修に必要な知識・能力 : ・知的好奇心(初めて聞くことに興味・関心をもつ開かれた心) ・あいまいさ耐性(分かりにくいことを既存の知識で割り切らず、「まあ見てみよう」と成り行きに任せられるおおざっぱさ) ・文系的分節力(話されること、読むもの、暗示されることなどについて、その中に潜んでいる小さな差異や、まとまりを見分けるゲシュタルト認識) ・要約する力(いろいろとある物事の中から、本質を成す大事なことを引き出し自分の言葉で言い表す言語的知性)
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :  認定心理士
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
B_A-b [アプローチの理解]
環境心理学の基本的な用語・概念を理解する
環境心理学の基礎用語などを的確に説明できる 環境心理学の基礎用
などの概要を説明できる
環境心理学の基本的な事柄について説明できる 環境心理学の基本的な用語の名称を知らない
B_B1-d [専門的研究手法]
身の回りの環境を見て、言葉にする観察力と言語的表現力を得る
身の回りの環境を観察し、記述するための方法論について自分なりのやり方を提案できる 身の回りの環境を観察し、記述するめの方法論について自分で調べることができる 身の回りの環境を観察し、記述するための方法論について理解できる 観察と記述について理解できない
汎用的技能
日常現象に対する原理的な探求のコツをつかむ
日常的な現象を,自らのポジションの偏りを認めながら構造的に捉える論理的な文章として構成することができる 日常的な現象の中から有意味な内容を引き出し,構造化された論理的な文章として構成することができる 日常的な現象についての情報を,ひとまとまりの論理的な文章として構成することができる 日常における人間ー環境の関係について必要な情報を文章化できない
態度
自分のあたまで考え、直接、経験にあたって確かめる新鮮な探求心を持ち続ける
あいまいな問題に対して、自分なりの解釈を交えながら、説得的な議論を十分に行うことができる あいまいな問題に対して、指示された事柄以上の学修を自発的に行なうことができる 指示された学修を十分に行なうことができる 指示された学修を行わない
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 三宅陽一郎(2016) 人工知能のための哲学塾 BNN
参考書 : 適宜、授業で紹介する
授業資料 : 適宜、授業で配布する

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 環境とは何か:とり巻く周囲
2 ポニョの環世界/人間になること
3 お引っ越し(「となりのトトロ」より)
4 母とのキョリ 子ども時代に過ごした場所を地図に描く(課題1)
5 学校という世界
6 名前とシンボル(千と千尋の神隠し」より)
7 ひげじいの身体(アフォーダンスの心理学) からだの実験(課題2)
8 カオ無しの心
9 家と故郷を出ること(「もののけ姫」より)
10 場所の心理学 夢の記述−そこはどのような場所だったか(課題3)
11 居場所を見つけること
12 全体を通して/生きる力のありか

成績評価
観点→
成績評価方法
B_A-b
[アプローチの理解]
B_B1-d
[専門的研究手法]

汎用的技能

態度
備考(欠格条件、割合等)
レポート 40%
授業への貢献度 10%
出席 25%
小レポート 25%

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 火曜日12時~13時

授業以外での学習に当たって : 授業では、実習課題を出して、内容を各自で具体的に経験してもらうことを求めます。また、その内容を小レポートにまとめてもらいます。それらのための時間が、授業以外に必要であり、ミニフィールドワークも課されることを予め時間配分に入れてください。
テキストに指定した『人工知能のための哲学塾』は、各回の授業で指定した範囲を読んでおくことを前提に授業を進めますので、そのための時間と努力を組み込んで授業に参加して下さい。

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)