人文科学府 歴史空間専攻 広域文明史学 分野
西洋史学 専修
専修科目 (単位数 2)
選択必修科目
対象学年:
対象学部等:
ヨーロッパ史学研究VIII
Historical Sources in Early Modern Europe (Seminar II)
講義題目  19世紀イギリスの女性と職業教育
人間環境学研究院 教授 野々村 淑子
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2018 後期
毎週 火曜3限
伊都イーストゾーン 演習室 教室
E/J科目 (日本語, English)
更新情報 : 2018/10/25 (09:54)
授業の概要  今回は、19世紀後半イギリスでミドルクラスの女性たち職業教育のために設立された女性雇用促進協会(SPEW, the Society for Promoting Employment for Women, 1859~, 1926年にthe Society for Promoting the Training of Women (SPTW), 2014年にFutures for Women (FfW)と名称変更)を皮切りに、1850年代から1870年代にヨーロッパ諸国で数多く設立された同様の目的をもつ団体の組織構成や、運営形態などを明らかにした下記の論文を講読する。James C. Albisetti, 'Philanthropy for the middle class: vocational education for girls and young women in mid-Victorian Europe', History of Education, vol.41, No.3, 2012, pp.287-301.
 19世紀後半のイギリスにおいて男女比の不均衡や不況により、「家庭の天使」として働くべきではないとされていたミドルクラスの女性に働く必要が迫られていた。しかし彼女たちが受けていた教育は結婚や家庭の中でのたしなみに留まり、自活のものではなかったため、その多くは困窮していたとされる。SPEWは、このような状況下で、彼女たちに職業訓練を施し、その自活を促そうという目的で設立された。それは、女性参政権運動、フェミニズム運動の組織的基盤となった雑誌『イングリッシュ・ウーマンズ・ジャーナル(English Woman’s Journal,1858~1864)』と、その発展として形成されたランガム・プレイス・サークルにより、設立されたという。
 ミドルクラスの女性としてのリスペクタビリティを保持しつつ、有給の仕事に就くという矛盾を回避しうる唯一の職業として、女家庭教師(ガヴァネス)があったが、既に供給過剰になっていた。また、ガヴァネス職であっても、有給であるという時点でクラスの境界を逸脱していることは確かであり、家族の一員ではなく使用人として位置づけられ、また経済的に困窮状態であったとされている。SPEWは、そのようななかで設置されたのである。
 クラス(階級)とジェンダーのこの複雑な関係は、産業化のなかで家族の近代化と、それを特徴づける性別領域分離主義によって生じたともいえる。女性の社会進出、という一つのファクターでは説明できない現象なのである。
 今回講読する論文は、その問題を解決するための協会の、ヨーロッパ各地への普及とその関係性、トランスナショナルな特徴に着目していることも興味深い。まずは丁寧に読み進め、以上の点も踏まえたうえで、議論を重ねてみたい。

(The aims of this course is to help students acquire an ability of historical and critical consideration and researches of education. This term deals with the vocational for middle class girls and women in mid-Victorian Europe. We would consider and discuss about the historical context and meaning of the life and work for the middle class women in 19th century Europe, when they were thought to be ‘Angel in the House’ and not to do paid work.)
キーワード : イギリス史、近代史、女性史、教育し
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(社会)(地理歴史)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
MH_A-a [史資料の分析]
収集した史資料・データを文献史学・考古学・地理学的な方法論にもとづいて的確に分析し、実証的な歴史像および歴史・地域認識を提示することができる。
収集した史資料・データを文献史学・考古学・地理学的な方法論にもとづいて的確に分析し、実証的な歴史像および歴史・地域認識を提示することがよくできる。 収集した史資料・データを文献史学・考古学・地理学的な方法論にもとづいて的確に分析し、実証的な歴史像および歴史・地域認識を提示することができる。 収集した史資料・データを文献史学・考古学・地理学的な方法論にもとづいて的確に分析し、実証的な歴史像および歴史・地域認識を提示することがある程度できる。 収集した史資料・データを文献史学・考古学・地理学的な方法論にもとづいて的確に分析し、実証的な歴史像および歴史・地域認識を提示することができない。
MH_B1-a [資料体の構築]
歴史空間論の領域に関する文献史料や一次資料、調査データを分析し、その結果を他の研究者にも幅広く活用可能な資料体として構築できる。
MH_B1-b[書誌の作成]関連する先行研究について網羅的な書誌を作成できる。
歴史空間論の領域に関する文献史料や一次資料、調査データを分析し、その結果を他の研究者にも幅広く活用可能な資料体としてよく構築できる。 歴史空間論の領域に関する文献史料や一次資料、調査データを分析し、その結果を他の研究者にも幅広く活用可能な資料体として構築できる。 歴史空間論の領域に関する文献史料や一次資料、調査データを分析し、その結果を他の研究者にも幅広く活用可能な資料体としてある程度構築できる。 歴史空間論の領域に関する文献史料や一次資料、調査データを分析し、その結果を他の研究者にも幅広く活用可能な資料体として構築できない。
MH_B2-a [総合把握力]
高度に専門的な知識を総合的に把握する能力を身につける。
高度に専門的な知識を総合的に把握する能力をよく身につける。 高度に専門的な知識を総合的に把握する能力を身につける。 高度に専門的な知識を総合的に把握する能力をある程度身につける。 高度に専門的な知識を総合的に把握する能力を身につけていない。
MH_C-a [積極性]
自ら進んで新しい問題に取り組む積極性を持つ。
自ら進んで新しい問題に取り組む積極性をよく持つ。 自ら進んで新しい問題に取り組む積極性を持つ。 自ら進んで新しい問題に取り組む積極性をある程度持つ。 自ら進んで新しい問題に取り組む積極性を持たない。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : James C. Albisetti, 'Philanthropy for the middle class: vocational education for girls and young women in mid-Victorian Europe', History of Education, vol.41, No.3, 2012, pp.287-301
参考書 :
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 オリエンテーショ
2 2回〜14回は論文講読
3 15回めは総合討論

成績評価
観点→
成績評価方法
MH_A-a
[史資料の分析]
MH_B1-a
[資料体の構築]
MH_B2-a
[総合把握力]
MH_C-a
[積極性]
備考(欠格条件、割合等)
プレゼンテーション
授業への貢献度

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 :

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)