人文科学府 言語・文学専攻 西洋文学 分野 独文学 専修 専修科目 (単位数 2) 選択科目 対象学年: 対象学部等: |
German Modern Literature (Specialized Lecture IV)
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科目ナンバリングコード: 講義コード: 2018 後期 毎週 火曜2限 伊都イーストゾーン E-110 教室 J科目 (日本語, 日本語) |
授業の概要 |
ノーベル賞作家トーマス・マンの『魔の山』(1924年)は「最高峰」である。というのもこの長編小説が世界文学の中でも最も難解で長大な文学作品だからだ。それにもかかわらず、いや、それだからこそ、人生においては一度は、それも若い時に、読んでおきたい。そこには人生のありとあらゆる問題が詰まっている。実は、人生も極めて難解複雑であり、それなりに長い。 『魔の山』は、難解であるにもかかわらず、日本では比較的よく読まれてきた。事実、日本の作家の中で、吉行淳之介、三島由紀夫、辻邦生、北杜夫、筒井康隆、倉橋由美子、大江健三郎、多和田葉子、平野啓一郎など、マンの小説技法や主題から影響を受けた者は少なくない。また、現代日本の生(あるいは性)と死を描く村上春樹の『ノルウェイの森』(1987年)は、主人公のハンブルク空港到着場面から始まり、『魔の山』を主人公の愛読書として設定しているなど、さまざまな形でマンの代表作を下敷きにしている。 そもそも『魔の山』はいかなる小説であろうか。スイスのダヴォスにある国際結核療養所ベルクホーフを舞台とし、7つの章を通じて主人公ハンス・カストルプの1907年から1914年までの滞在7年間を描く。主人公は従兄弟のヨーアヒム・ツィームセンを見舞うために3週間の予定で結核療養所を訪れるが、自分自身も肺を病んでいることがわかり、長期滞在を余儀なくされる。そこで彼が見たのは、微視的には世界各国から集まる患者たちの自堕落な生活と死が日常化した日々であり、巨視的には第一次世界大戦前のヨーロッパの社会的・政治的・精神的行き詰りであり、エロスとタナトスの密封空間であり、詰まるところ、デカダンスの時空だったのである。 マンは、亡命中の1939年5月10日、アメリカのプリンストン大学において英語で行った講演「『魔の山』入門」にて、作品の執筆経緯を自ら明らかにし、錬金術、ライトモティーフ、象徴、時間、イニシエーション、聖杯探求などの概念を用いて作品解説を行った。マンは自作に対する言及が世界文学の中でもおそらく最も多い作家だけに、マンの自作講演は『魔の山』読解においていわば饒舌な役割を果たし続けてきた。もっとも、作者による自作解説も、数多い登山口のひとつにすぎない。『魔の山』は高山峻嶺に富む世界文学においてもひときわそびえ立つ「山」である。それだけにいまだ知られざるルートも今なお少なくない。 本講義では、あまり文学に読み慣れていない方にも分かりやすく、それでいて『魔の山』の醍醐味を味わってもらえるように工夫をしながら、『魔の山』の全体像を示す。講義担当者としては、いわば登山ガイトとして随行し、深山幽谷に入る意義と楽しみを皆さんに示したい。登山前には入念な基礎体力作りと装備の点検も行う。さあ、一緒に世界文学の「最高峰」に登ろう! (This lecture course focuses on "Der Zauberberg" by Thomas Mann.) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キーワード : ドイツ文学、トーマス・マン、村上春樹、デカダンス、結核、第一次世界大戦、錬金術、ライトモティーフ、象徴、時間、聖杯探求 | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
履修条件 : 履修に必要な知識・能力 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特記事項 |
基本的に講義形式の授業です。但し、授業中に何度か書いてもらうレスポンスペーパーを通じて、講師と学生との相互交流を図り、授業が一方通行にならないように努めます。なお、この科目はEU研究ディプロマプログラム(EU-DPs)指定科目です。同プログラムについて、詳しくは以下のサイト(http://eu.kyushu-u.ac.jp/indexjp.html)をご参照ください。
教職 : 教職(ドイツ語) 資格 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
到達目標 |
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
授業方法 |
テキスト : プリントを配布する。 参考書 : 授業中に指示する。 授業資料 : 授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
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成績評価 |
GPA評価
成績評価基準に関わる補足事項 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
学習相談 |
学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。 授業以外での学習に当たって : 合理的配慮について : 障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。 <相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階) (電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp) |