文学部 人文学科 歴史学コース
西洋史学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択必修科目
対象学年:
対象学部等:
ヨーロッパ史学演習 VII
European History (Seminar VII)
講義題目  18世紀後半〜19世紀前半イギリスの児童書と教育
人間環境学研究院 教授 野々村 淑子
科目ナンバリングコード: LET-HUM3442J
講義コード:
2024 前期
毎週 火曜3限
伊都イーストゾーン B430 教室
E/J科目 (日本語, English)
更新情報 : 2024/3/28 (14:16)
授業の概要 今回は、18世紀後半から19世紀前半のイギリスで花開いた児童書出版の始まりと、同時に起きていた、子どもの教育に相応しいのは家庭か学校か、という論争に注目したGrenby, M.O., ‘Children’s literature, the home, and the debate on public versus private education, c. 1760-1845’, Oxford Review of Education, Vol.41, No.4, pp.464-481, 2015を講読する。
18世紀の産業革命は、製紙、印刷、出版、流通という大衆読者層の拡大につながる物理的条件を準備した。それまで書物や文字に縁遠かった子ども、女性、労働者が、書物に手軽にアクセスできるようになったのである。子どもの読者、特に労働者階級の子どもの読者が増加したのは、日曜学校などの慈善学校がモラル・リフォーム運動のなかで宗教教育とともに識字教育を行ったことも背景にあるといわれる。
 Grenbyの論文は、子ども向けの書物の出現、流行現象の意味を、それらのターゲット層(読み手や読まれる場)や内容をもとに、中上流層の男女の子どもたちに相応しい教育の場についての論争(家庭か学校か)において明らかにする。公的な学校教育が、女性の領域としての私的な家庭教育を凌駕していくプロセスとして描く従前の研究に対して、教育に利用された書物の分析により、その再考を迫る研究である。教育の近代化は、学校教育の普及過程として捉えることが多い。しかしここでは、むしろ学校教育と家庭、すなわち近代家族が共に連動しながら、子どもの教育への関わりを強めていく様相が、児童書を通して注目される。
 英語論文講読前に、マーティン・ライオンズ(田村毅訳)「十九世紀の新たな読者たちー女性、子供、労働者」(『読むことの歴史―ヨーロッパ読書史―』大修館書店、1997年、 445-490頁)、閑田朋子「イングランドにおける大衆読者層の形成と拡大」(小林英美、中垣恒太郎編『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化ー19世紀以降にみる英米出版事情』音羽書房鶴見書店、2017年、104-126頁)、岩下誠「18世紀末のイングランドにおけるモラル・リフォームと教育ーサラ・トリマーを事例としてー」(『近代教育フォーラム』第16巻、教育思想史学会、2007年、95-110頁)等を読む。

(The aim of this course is to help students acquire an ability of historical and critical consideration and research of education. This term deals with new flourishing phenomenon of children’s literature, and its historical meaning for education c. 1760-1845.
We would consider and discuss the historical context and meaning of the new genre, children’s books and their role for the education of children, the amalgam of modern public school and modern child-centered family.)
キーワード : 18世紀後半から19世紀前半イギリス、児童書、家庭教育、学校教育
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項 初回までに所定のMoodleに、下記の諸情報をアップロードします。必ずご確認ください。

・オリエンテーション レジュメ
・授業の進め方
・テキスト、参考論文、他。
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業 https://moodle.s.kyushu-u.ac.jp/course/view.php?id=55429
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(社会)(地理歴史)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
U_A-1 [主体的な学び]
深い専門的知識と豊かな教養を背景とし、自ら問題を見出し、創造的・批判的に吟味・検討することができる。
英語論文を的確に、かつ歴史的視座をもって読解することができる。 英語論文を的確に読解することができる。 英語論文を文脈をとらえ正しく読解することができる。 文意を取ることができず、翻訳は日本語になっていない。
U_B-1 [人文学の広範な知識と理解]
人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法を説明できる。
歴史研究論文に対して、独創的な意見をもつことができる。 歴史研究論文に対して、自分なりの意見をもつことができる。 歴史研究論文を相対化して読むことができる。 研究の課題と成果を理解できない。
U_B-3b [歴史学コース固有の課題]
先行研究を批判的に読む中で自らの問題関心を鋭敏にし、史・資料を解読し史跡を調査することにより、自らの視角から、ある特定の地域と時代の社会像を復原できる。
歴史論文について独創的かつ的確に論評することができる。討論をリードできる。 歴史論文について的確に論評することができる。 論評と発言を行うことができる。 殆ど発言しない。
U_C-1-1 [文献分析力]
それぞれの専門分野の基本文献を正確に解釈、分析することができる。
歴史研究論文講読を通して、史料の解釈、分析、考察の適切さと、研究上の位置づけを論じることができる。 歴史研究論文のオリジナリティとその意義を理解した上で、批判的に論じることができる。 歴史研究論文の課題と結論、それに至るまでの流れを理解することができる。 歴史論文の課題と方法が理解できない。
U_C-2-1 [知識・理解の深化と統合]
それぞれの専門分野の内容に関する深い理解と、学問固有の思考方法、研究手法を獲得し、知識を有機的に総合し、論文を作成することができる。
U_D [他者を尊重する公平な姿勢]
先行研究と自らの学説を批判的に討論し、自らの意見をより客観的視点から組み立て、他者の意見を尊重する、市民性のある公平な姿勢で論文を作成することができる。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : Grenby, M.O., ‘Children’s literature, the home, and the debate on public versus private education, c. 1760-1845’, Oxford Review of Education, Vol.41, No.4, pp.464-481, 2015

Moodleにて共有する。
参考書 : マーティン・ライオンズ(田村毅訳)「十九世紀の新たな読者たちー女性、子供、労働者」(『読むことの歴史―ヨーロッパ読書史―』大修館書店、1997年、 445-490頁)
閑田朋子「イングランドにおける大衆読者層の形成と拡大」(小林英美、中垣恒太郎編『読者ネットワークの拡大と文学環境の変化ー19世紀以降にみる英米出版事情』音羽書房鶴見書店、2017年、104-126頁)
岩下誠「18世紀末のイングランドにおけるモラル・リフォームと教育ーサラ・トリマーを事例としてー」(『近代教育フォーラム』第16巻、教育思想史学会、2007年、95-110頁)等

講読するものはMoodleにて共有する。
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 オリエンテーション 演習
2 導入 日本語参考論文講読@ 演習
3 導入 日本語参考論文講読A 演習
4 第3回〜第14回 英語論文講読 演習
15 総括討論 演習

成績評価
観点→
成績評価方法
U_A-1
[主体的な学び]
U_B-1
[人文学の広範な知識と理解]
U_B-3b
[歴史学コース固有の課題]
U_C-1-1
[文献分析力]
U_C-2-1
[知識・理解の深化と統合]
U_D
[他者を尊重する公平な姿勢]
備考(欠格条件、割合等)
授業への貢献度 担当発表の内容、議論への参加
出席

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 随時受け付けます。メールに連絡ください。
nonomura.toshiko.868@m.kyushu-u.ac.jp

授業以外での学習に当たって : 予習および復習 1時間程度

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)