文学部 人文学科 文学コース
独文学 専門分野
専門分野科目 (単位数 1)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
ドイツ文学講義 VA
German Literature (Lecture V)A
講義題目  『魔の山』研究
教授 小黒 康正
科目ナンバリングコード: LET-HUM3630J
講義コード:
2024 前期
毎週 火曜2限
伊都イーストゾーン B101 教室
M/J科目 (日本語, German)
更新情報 : 2024/2/7 (14:59)
授業の概要 ノーベル賞作家トーマス・マン(1875-1955)の『魔の山』(1924)は、世界文学における「最高峰」の一つと言えましょう。この小説は実際に古今東西の文学の中でもとりわけ複雑難解であります。それにもかかわらず、いや、それだからこそ、人生において一度は登っておきたい「山」なのです。人はなぜ「山」に登るのでしょうか。そこに「山」があるからです。もっともこうした険しい山を一人で登るのはなかなか難しいかもしれません。私は「登山ガイド」として2024年5月に NHK の「100分 de 名著」に出演します。その経験をいかしながら、皆さんと一緒に登頂をめざそうと思っています。

そもそも『魔の山』はいかなる小説でしょうか。スイスのダヴォースにある国際結核療養所ベルクホーフを舞台とし、七つの章を通じて主人公ハンス・カストルプの1907年から1914年までの滞在7年間を描きます。主人公は従兄弟のヨーアヒム・ツィームセンを見舞うために3週間の予定で結核療養所を訪れますが、自分自身も肺を病んでいることがわかり、長期滞在を余儀なくされてしまうのです。そこで彼が見たのは、微視的には世界各国から集まる患者たちの自堕落な生活と死が日常化した日々であり、巨視的には第一次世界大戦前のヨーロッパの社会的・政治的・精神的行き詰りであり、詰まるところ、デカダンスの時空でありました。

『魔の山』が示す時空は決して単なる虚構ではありません。なぜならば、私たち自身が今や病気と死の密封空間にいるからです。現代の世界でも、繰り返し感染症が蔓延し、各地でテロリズムや戦乱が絶えません。いまや私たち一人一人が『魔の山』の主人公ハンス・カストルプなのです。それだけに、私たちが『魔の山』を通じて、主要登場人物であるヨーアヒム、セテムブリーニ、ショーシャに、そしてナフタやペーペルコンと出会うことの意味は大きいと言えましょう。混迷を極める世界の中で、私たちは「ルート」を各自で見極めなければなりません。刊行100年を迎えようとしている今こそ、『魔の山』の登頂をめざすときではないでしょうか。

(Vorlesung über Thomas Manns "Der Zauberberg")
キーワード : トーマス・マン、『魔の山』、デカダンス、世紀末、第一次世界大戦
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項 基本的に講義形式の授業です。但し、授業中に何度か書いてもらうレスポンスペーパーを通じて、授業が一方通行にならないように努めます。状況に応じてオンライン(Teams もしくはZoom とMoodleを使用)も併用しますので、Moodle にて適宜ご確認ください。なお、この科目はEU研究ディプロマプログラム(EU-DPs)指定科目です。同プログラムについては、以下のサイト(http://eu.kyushu-u.ac.jp/indexjp.html)をご参照ください。
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業  受講者は本講義の Moodle に参加登録をしてください。授業資料は、毎回、講義前日までに Moodle に載せます。掲載された授業資料は講義中に配布しませんでの、ご注意ください。
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
U_C-1-1 [文献分析力]
それぞれの専門分野の基本文献を正確に解釈、分析することができる。
人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法をかなり十分に説明できる。 人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法を十分に説明できる。 人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法を説明できる。 人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけておらず、人文学固有の思考や方法を十分に説明できない。
U_C-1-2 [研究手法]
それぞれの専門分野に固有の問題設定を理解し、研究手法を正しく身に付けて実践し、必要な史資料や文献を収集できる。
「言葉」に対する自覚的かつ反省的な関わりを通じて、人間存在への理解を深め、それをかなり十分に説明できる。 「言葉」に対する自覚的かつ反省的な関わりを通じて、人間存在への理解を深め、それを十分に説明できる。 「言葉」に対する自覚的かつ反省的な関わりを通じて、人間存在への理解を深め、それを説明できる。 「言葉」に対する自覚的かつ反省的な関わりを通じて、人間存在への理解を深め、それを説明できることが十分にできない。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義 授業担当教員による解説を主とした形態であり,時折,学生との問答を通じて,関連の知識を深めていきます。
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : <教科書>

この授業では、以下の文献を教科書として指定します。毎回、ご持参ください。

小黒康正編著『対訳 ドイツ語で読む「魔の山」』、白水社、2023年。
参考書 : <参考図書> 

『魔の山』の翻訳は複数あります。参考書の購入は義務でありませんが、できれば、「参考書1」として指定した新潮文庫の『魔の山』(高橋義孝訳)もご購入ください。古本でも構いません。また、岩波文庫の『魔の山』(関泰祐・望月市恵訳)でも、他の既訳でも構いませんので、いずれかの既訳をご購入ください。授業進度に併せて『魔の山』を読むことをお勧めします。「参考書2」と「参考書3」は当方の著作です。これもかなり参考になると思います。

参考書1:『魔の山』(高橋義孝訳、新潮文庫、2005年)

参考書2: 『黙示録を夢みるとき トーマス・マンとアレゴリー』(小黒康正著、鳥影社、2001年 )

参考書3:『100分 de 名著 2024年5月 トーマス・マン「魔の山」』(小黒康正著、NHK テキスト、2024年4月刊行予定)
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 導入
2 講義
3 講義
4 講義
5 講義
6 講義
7 講義
8 講義
9 講義
10 講義
11 講義
12 講義
13 講義
14 講義
15 総論

成績評価
観点→
成績評価方法
U_C-1-1
[文献分析力]
U_C-1-2
[研究手法]
備考(欠格条件、割合等)
小テスト 平常点としてレスポンスペーパーを適宜行う。
レポート

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)