文学部 人文学科 文学コース 独文学 専門分野 専門分野科目 (単位数 2) 選択科目 対象学年: 対象学部等: |
German Literature (Lecture V)
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科目ナンバリングコード: LET-HUM3630J 講義コード: 19056012 2019 前期 毎週 火曜2限 伊都イーストゾーン E-110 教室 M/J科目 (日本語, German) |
授業の概要 |
ヨーロッパにおける「自然」もしくは「自然観」には、なかなか複雑な背景があります。かつて四大元素と見られていた「自然」は、文化によって耕される対象であり、文明によって克服されるべき対象でありました。17世紀に入っても、ガリレオやデカルトの自然観が示すように、「自然」は数量化され解体される対象だったのです。しかし、ヨーロッパの啓蒙主義ではいささか事情が異なります。「自然」、それも「自然の光」lumen naturale には、人間から偏見を取り払い、理性の自立を促す力が、特にカントにおいては、人間を未成熟状態から自由に至らしめる力が認められたようです。また、18世紀に活躍したルソーの思想によれば、「自然」は人間が堕落した社会から戻るべき空間でありました。また、『ヴィルヘルム・テル』で著名なシラーによれば、「自然」は近代人が失ったものであり、失われた「自然」は近代人が憧れを抱く対象でもありました。しかし、19世紀前半には「自然」を有機体論的に捉えるロマン派的傾向がありましたが、19世紀後半に至ると、実証主義が重んじられる中で「自然」は自然科学的視点によって細分化される対象となったのです。そして20世紀の後半になると、「自然」は保護されるべき対象となり、現在に至っています。 こうしたヨーロッパにおける「自然」の複雑な経緯は、ヨーロッパ文学、それも近現代のドイツ文学に極めて屈折した形で刻み込まれています。本講義では、以下の7冊を扱いながら、ヨーロッパにおける「自然」、いや私たちにとっての「自然」を一緒に考えていく予定です。7冊全部を読んでいただくのが望ましいですが、心配はご無用、全冊読まれなくても構いません。私としましては、1冊でも多く読んで授業に臨んでいただければ幸いです。多く読んでいただければいただくほど、それだけ皆さんの糧になることは間違いありません。 1.ヨーロッパ自然思想の原史: ホメロス『オデュッセイア』(紀元前8世紀)→岩波文庫(松平千秋訳) 2.新しい自然観、新しい恋愛観、新しい読書観:ゲーテ『若きウェルテルの悩み』(1774年)→新潮文庫(高橋義孝訳) 3.四大元素と音楽神話: ブレンターノ/ゲレス『時計職人ボークスの不思議な物語』」(1807年)→九州大学独文学会編『九州ドイツ文学』第23号(2009年、小黒康正訳) 4.異教表象としての自然: アイヒェンドルフ『大理石像』(1819年)→岩波文庫(関泰祐訳) 5.自然言語と人間言語: アンデルセン『人魚姫』(1837年)→岩波文庫(大畑末吉訳) 6.自然への呪い:トーマス・マン『トニオ・クレーガー』(1903年)→新潮文庫(高橋義孝訳) 7.監視する自然:ヘルタ・ミュラー『心獣』(1994年)→三修社(2014年、小黒康正訳) なお、私の講義は常に次の三つの点で共通しています。(1)本質を問うこと、(2)脱線が多いこと、(3)役に立つこと、以上の三つです。 (1)本講義はドイツ文学の講義ですが、同時に文学の講義でもあります。いわゆる文学入門と解されても構いません。私にとって入門の授業は最も本質を問う授業だと思っています。これまであまり文学作品を読んでこなかった方が受講されても構いません。むしろ大歓迎です。この講義を通じて文学の本質を少しでも理解していただければと思っています。 (2)文学研究は、哲学と並んで、人間とは何か、世界とは何か、自分とは何かを問う学問として、ある種の人間学であります。それだけに、文学研究は、百科全書的であり、別の言い方をしますと、ある種の雑学です。昨年度、私の授業を受講された先輩や友人にお聞きください、小黒の講義はどんな授業だったかと。受講された多くの方々授業アンケートに書かれました、「雑談が楽しみだった」「雑談が役に立った」「雑談をもっとしてほしかった」などと。当方、文学の本質を問うあまり、ついつい脱線をしてしまいました。 (3)私の授業では、本質を問い、雑談を交えながら、レポートの書き方を指導します。私なりに徹底的にです。その証左として、これまで全員のレポートに朱を入れて返却してきました。かなり大変な作業ですが、体力が続く限り、今回も行うつもりです。分野を問わず、大学でも、社会でも役に立つレポートの書き方を教えます。まあ、私の講義はいわば道場、気軽に門を叩いてください。入門された方々には「竹刀」の振り方を伝授するつもりです。こうした稽古があって初めて「木刀」が振れるようになり、最後に「真剣」勝負ができるようになります。 (This lecture focuses on nature in German literature./ Diese Vorlesung konzentriert sich auf die Natur in der deutschen Literatur.) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キーワード : ドイツ文学、思想、自然、ホメロス、ゲーテ、ロマン派、トーマス・マン | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
履修条件 : 履修に必要な知識・能力 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特記事項 |
基本的に講義形式の授業です。但し、授業中に何度か書いてもらうレスポンスペーパーを通じて、授業が一方通行にならないように努めます。なお、この科目はEU研究ディプロマプログラム(EU-DPs)指定科目です。同プログラムについては、以下のサイト(http://eu.kyushu-u.ac.jp/indexjp.html)をご参照ください。
教職 : 資格 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
到達目標 |
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
授業方法 |
テキスト : 授業中に指示する。 参考書 : 授業中に指示する。 授業資料 : 授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
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成績評価 |
GPA評価
成績評価基準に関わる補足事項 : 平常点50%+レポート50%(レポートの執筆要領ならびに採点基準を授業中に数回にわけて説明する) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
学習相談 |
学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。 授業以外での学習に当たって : 合理的配慮について : 障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。 <相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階) (電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp) |