文学部 人文学科 人間科学コース
心理学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年: 2年生 3年生 4年生
対象学部等:
環境心理学講義T(社会・集団・家族心理学)

講義題目  人間環境心理学
教授/教育学部 南 博文
科目ナンバリングコード:
講義コード: 19071003
2019 前期
毎週 月曜3限
伊都イーストゾーン 教室
J科目 (日本語, 日本語)
更新情報 : 2019/4/7 (23:48)
授業の概要 人の一生の過程において「環境(人を取り巻くもの全般)」が重要であることは、「孟母三遷」の教えにあるように、人は環境を選び、その選んだ環境によって自らが変わるという人間と環境とが「対話的」に相互を規定し合う、ある特別な関係性をもつことから理解できる。環境心理学では、人と環境との特別な関係を、理論的、実証的に確かめることを目標としている。たとえば、吉本ばななのデビュー作『キッチン』は、「私がこの世で一番好きな場所は」で始まる。ここで環境は、表に出るというよりは、影の主役を演じている。環境を含めての人間(person-in-environment )は、そのような自己変容を引き出す文脈(context)を成しており、〈今自分がどこに居るか〉〈私の場所はどこなのか〉という居場所に関する問いは、個人あるいは他者という人間にのみ着目する視野を広げて、私と私たちを取り巻く「まわり」をよく観察し、そこに居る自分の在りかをふり返ってみることへの誘いーすなわち「人間環境心理学」への視点転換ーをもたらす経験となるだろう。
 本講義では、1.身の周り、2. 空間、3.場所という3つの人間環境の側面を扱うことによって、個人のアイデンティティ(自分が何者であるかについての自己理解)が、「居る場所」に基礎と根拠をもつものであること、それが一方で「自分(自己)」と「まわり(環境)」として、分かれていくのは、発達の初期の母子一体化の状態から徐々に進行する、行為する私(agent)、行為(action)、状況(scene)、手段・道具(instumentality)、目標(goal)という劇学的な発生の過程(Genetic process)であるという視点から捉えてみる。

(In our lives environments are part of educational resources as exemplified in the proverb of "Three moves by Mencius' mother (孟母三遷). We choose our environments, and those environments we chose would change us accordingly. Such mutual constitutive relationships between our development and the environment throughout our lives are called "person-in-environment transactions." Various aspects of these transactions in the educational phenomenon as well as daily experiences are explored in this course. The basic nature of our surroundings are observed and interpreted from a general standpoint of person-in-environment transactions. Where are you, and who are you are interdependent questions in this perspective. )
キーワード : 周囲、環境体験、人間と環境との相互浸透(トランザクション)、空間(性)、場所、居場所、場面、サードプレイス、発生的劇学(Genetic Dramatism)、原風景
履修条件 : 心理学の基礎を心得ていることが望ましい(「心理学入門」の受講、あるいは心理学の基礎的なテキストを読んだ経験)。
履修に必要な知識・能力 : ・知的好奇心(初めて聞くことに興味・関心をもつ開かれた心) ・あいまいさ耐性(分かりにくいことを既存の知識で割り切らず、「まあ見てみよう」と成り行きに任せられるおおざっぱさ) ・文系的分節力(話されること、読むもの、暗示されることなどについて、その中に潜んでいる小さな差異や、まとまりを見分けるゲシュタルト認識) ・要約する力(いろいろとある物事の中から、本質を成す大事なことを引き出し自分の言葉で言い表す言語的知性)
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :  認定心理士
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
B_A-b [アプローチの理解]
環境心理学の基本的な用語・概念を理解する
環境心理学の基礎用語などを的確に説明できる 環境心理学の基礎用語などの概要を説明できる 環境心理学の基本的な用語の名称について説明できる 環境心理学の基本的な用語の名称を知らない
B_B1-d [専門的研究手法]
身の回りの環境を見て、言葉にする観察力と言語的表現力を得る
身の回りの環境を観察し、記述するための方法論について自分なりのやり方を提案できる 身の回りの環境を観察し、記述するめの方法論について自分で調べることができる 観察と記述について概要を理解できる 観察と記述について理解できない
汎用的技能
日常現象に対する原理的な探求のコツをつかむ
日常的な現象を,自らのポジションの偏りを認めながら構造的に捉える論理的な文章として構成することができる 日常的な現象の中から有意味な内容を引き出し,構造化された論理的な文章として構成することができる 日常における人間ー環境の関係について最低限必要な情報を文章化できる 日常における人間ー環境の関係について必要な情報を文章化できない
態度
自分のあたまで考え、直接、経験にあたって確かめる新鮮な探求心を持ち続ける
あいまいな問題に対して、自分なりの解釈を交えながら、説得的な議論を十分に行うことができる あいまいな問題に対して、指示された事柄以上の学修を自発的に行なうことができる 指示された最低限の学修を行うことができる 指示された学修を行わない
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 羽生和紀 『環境心理学−人間と環境の調和のために』サイエンス社 2008年
参考書 : 適宜、授業で紹介する
授業資料 : 適宜、授業で配布する

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 オリエンテーション
2 環境とは何か 周囲を記述する
3 生態学的環境 「生態学的」の意味を考える
4 環世界とアフォーダンス 「ユクスキュルのダニ」の話を読む
5 アフォーダンス II 片手課題
6 対人的環境 ・inter-subjectivity
7 人の居る環境「居方」論を読む カフェでの観察による実習(課題1)
8 文化的環境 ウィニッコットの移行対象論
9 『となりのトトロ』を観る 子ども時代に過ごした場所を地図に描く(課題2)
10 愛着と安全基地
11 環境心理学の道具箱 テキストに出る用語のおさらい
12 居場所の心理学
13 『キッチン』を読む 夢の記述−そこはどのような場所だったか(課題3)
14 サードプレイス
15 ふりかえり

成績評価
観点→
成績評価方法
B_A-b
[アプローチの理解]
B_B1-d
[専門的研究手法]

汎用的技能

態度
備考(欠格条件、割合等)
レポート 40%
プレゼンテーション 10%
授業への貢献度 10%
出席 25%
小レポート 15%

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 火曜日12時~13時

授業以外での学習に当たって : 授業では、実習課題を出して、内容を各自で具体的に経験してもらうことを求めます。また、その内容を小レポートにまとめてもらいます。それらのための時間が、授業以外に必要であり、また学外でのミニフィールドワークも課されることを予め時間配分に入れてください。

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)