文学部 人文学科 人間科学コース
心理学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年: 2年生 3年生 4年生
対象学部等:
環境行動学演習(社会・集団・家族心理学)

講義題目  環境行動学演習
教授/教育学部 南 博文
科目ナンバリングコード:
講義コード: 19072015
2019 前期
毎週 火曜4限
伊都イーストゾーン 教室
E/J科目 (日本語, English)
更新情報 : 2019/4/9 (01:32)
授業の概要 環境行動学と環境デザイン学
 
例えば、電車の中でどこに座るか、人はだいたい知っている。そこにある規則性は、気づかれているものもあるが、大部分は無自覚なまま「そのようにして」いる、という形で行動法則に従っている。あるいは講義室の中央前あたりが空席のままになっているとき、そこにあえて座る行動をとるだろうか。ここでも何となく人間の「環境の中での振舞い」について我々は、暗黙裏に理論を持っている。それを裏切る行動を誰かがとると、「あれっ」と驚かれる。
環境行動学は、人間を含めた動物の行動を、その行動を取り巻く周囲(環境)との間にある法則的な関係に着目し、その法則をデザインに活かすことを最終目標にしている。ここで「デザイン」という言葉は、意識的で専門家が行う造形行為という意味ではなく、行為と環境とのあいだに、まとまりのある形態(ゲシュタルト)を作り出すという意味で使っている。この観点から、
 「人は生活の中で、行動することによって環境をデザインしている」というのが、環境行動学の第一の原理である。
本演習では、1970年代から欧米および日本で心理学だけでなく、建築学やインテリアデザイン、都市計画など、人の住む環境をデザインする広範な学際領域で発展してきたEnvironment-Behavior Research (日本では「環境行動学」と訳される)の基本的な考えと主要な方法論を学ぶ。この学問の発祥が国際的であった関係から、英文のテキストも必要性に基づいて用いる。しかし、もっと大事なことは、実際に現地で観察することによる学び、すなわちLearning by Doing であり、演習では受講生が屋外・屋内で試行できる実習課題を設けて、「ははん、そういうことだったのか」と腑に落ちる体験をしてもらうように工夫する予定である。

(Environment-Behavior Studies and Environmental Design

The problem of "Environment-Behavior Studies" regards such situation when we wonder which seat to sit in the subway. Even though we do not know exactly what are the behavioral principles about where to sit we chose particular positions according to our habitual ways: this may not be conscious rules and in most cases implicit way of behaving in such particular environmental settings. We only notice when such assumed "rules" are violated.
Environment-Behavior Studies focus on regulative principles working between actors (human-being and animals) and their surrounding environment, and utilize the knowledge gained through observation in the actual designing of our physical environment including its layout and place settings.
The basic assumption of this inter-disciplinary studies is that we humans are designing our surroundings by choosing or not-choosing and using or not-using particular environments in particular ways. Human agents are natural designer in this respect.
This seminar deal with basic concepts and methods in the field of Environment-Behavior Studies by actually conducting research activities inside or outside of classrooms, This is the application of Learning by Doing. )
キーワード : 環境行動学 環境デザイン 観察 物的痕跡 行動マッピング 遭遇調査 相互主観性
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 : ・高校英語程度の長文読解力 ・人間行動に対する基本的関心と心理学の初級レベルの知識 ・人間と環境との相互作用という主題に対する関心と理解力 ・現象観察への基本技能(植物や虫、月の満ち欠けの観察をした経験) ・科学哲学、すなわち正しい認識に至る方法についての基礎理解
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :  認定心理士
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
B_A-b [アプローチの理解]
環境行動という現象への目のつけ方を学び、それが人間理解と人の住む環境について何を教えてくれるかを考えるきっかけとする。
環境行動学の歴史、用語などを的確に説明できる 環境行動学の歴史、用語などの概要を説明できる   環境行動学の基本的な用語の名称を知らない
B_B1-d [専門的研究手法]
観察したことを記述し、報告し、他者との相互理解を得るための基本的な研究行為の方法を学ぶ。
環境行動学的知見を得るための方法論について自分なりのやり方を提案できる 環境行動学的知見を得るための方法論について自分で調べることができる   環境行動学的知見について理解できない
英語テキスト慣れ
英語で書かれたテキストに対する苦手意識をなくす。
       
英語的思考法
英語的思考法の要領をつかみ、文化と常識を共有しない相手に考えを伝える際の、明晰な言語表現のパタンを学ぶ。
       
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : Zeisel, J. (1984). Inquiry by design: Tools for environment-behavior research. New York: Cambridge University Press.(J. ツァイゼル著 根建金男・大橋靖史 監訳 デザインの心理学−調査・研究からプランニングへ 西村書店 1995年)
ムーア, G.T., タトル,D.P., ハウエル, S.C.,(1999) 環境デザイン学−その導入課程と展望 小林正美・三浦研(訳) 鹿島出版会
高橋鷹志+チームEBS (2003) 環境行動のデータファイル 彰国社
Sommer, B., and Sommer, R. (1997). A practical guide to behavioral research. Oxford University Press.
ウィッカー, A.,W.,(1994) 生態学的心理学入門 安藤延男(監訳) 九州大学出版会
参考書 : 教育心理学概説を履修していること、あるいは心理学の基礎について一定の理解があることが望ましいが、必須ではない。
授業資料 : 教育心理学概説を履修していること、あるいは心理学の基礎について一定の理解があることが望ましいが、必須ではない。

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 環境行動学・環境デザイン学とは テキストの読解 指定範囲を読む
2 実習課題についての討議 個別発表と討議 予備的課題についての発表準備
3 物的痕跡を観察する(1)テキスト読解 テキストの読解 指定範囲を読む
4 物的痕跡を観察する(2)実習課題 指定課題の実習
5 観察の妥当性の検証:相互主観性 テキストの読解 指定範囲を読み、実習で得たデータの妥当性について吟味する
6 パブリックな場所での人の振舞い テキストおよび映像資料の読解・参照 指定範囲を読む
7 行動マッピング(Behavioral Mapping)-1 野外でのフィールドワークの実施
8 行動マッピング(Behavioral Mapping)-2 各自のフィールドデータの発表と読み合わせ
9 遭遇調査 調査法とそれを実践した研究論文を扱う 指定範囲を読む
10 近隣調査 テキストの読解 自分の場合に当てはめて近隣地図を作成する
11 近隣調査とコミュニティの診断 各自の近隣地図の読み合わせと討議
12 行動場面と生態学的心理学 テキストの読解
13 行動場面調査(1) 野外でのフィールドワークの実施
14 行動場面調査(2) 各自の観察データの相互検証
15 全体討議 行動環境学の長所と限界についての議論

成績評価
観点→
成績評価方法
B_A-b
[アプローチの理解]
B_B1-d
[専門的研究手法]

英語テキスト慣れ

英語的思考法
備考(欠格条件、割合等)
レポート 40%
プレゼンテーション 20%
授業への貢献度 20%
出席 20%

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 授業後、および火曜日12-13時

授業以外での学習に当たって : 環境行動という分野において、野外での観察とそのための基礎を習得する演習となるので、授業以外の屋外でのフィールドワークに授業時間と同等あるいはそれ以上の実習が課される。また、毎回のテーマについて討議中心の演習形式では、自分が観察したことを他者に理解できるように提示し、説明し、参加するメンバーのあいだでの「相互主観性」を高めるコミュニケーションが要求される。そのための準備に大きなウェイトが置かれることを想定して受講してください

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)