人文科学府 言語・文学専攻 西洋文学 分野
独文学 専修
専修科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
ドイツ近代文学研究史特論 I
German Modern Literature (Specialized Lecture I)
講義題目  ドイツ文学における「自然」
教授 小黒 康正
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2019 前期
毎週 火曜2限
伊都イーストゾーン E-110 教室
M/J科目 (日本語, German)
更新情報 : 2019/4/5 (15:01)
授業の概要  ヨーロッパにおける「自然」もしくは「自然観」には、なかなか複雑な背景があります。かつて四大元素と見られていた「自然」は、文化によって耕される対象であり、文明によって克服されるべき対象でありました。17世紀に入っても、ガリレオやデカルトの自然観が示すように、「自然」は数量化され解体される対象だったのです。しかし、ヨーロッパの啓蒙主義ではいささか事情が異なります。「自然」、それも「自然の光」lumen naturale には、人間から偏見を取り払い、理性の自立を促す力が、特にカントにおいては、人間を未成熟状態から自由に至らしめる力が認められたようです。また、18世紀に活躍したルソーの思想によれば、「自然」は人間が堕落した社会から戻るべき空間でありました。また、『ヴィルヘルム・テル』で著名なシラーによれば、「自然」は近代人が失ったものであり、失われた「自然」は近代人が憧れを抱く対象でもありました。しかし、19世紀前半には「自然」を有機体論的に捉えるロマン派的傾向がありましたが、19世紀後半に至ると、実証主義が重んじられる中で「自然」は自然科学的視点によって細分化される対象となったのです。そして20世紀の後半になると、「自然」は保護されるべき対象となり、現在に至っています。

 こうしたヨーロッパにおける「自然」の複雑な経緯は、ヨーロッパ文学、それも近現代のドイツ文学に極めて屈折した形で刻み込まれています。本講義では、以下の7冊を扱いながら、ヨーロッパにおける「自然」、いや私たちにとっての「自然」を一緒に考えていく予定です。7冊全部を読んでいただくのが望ましいですが、心配はご無用、全冊読まれなくても構いません。私としましては、1冊でも多く読んで授業に臨んでいただければ幸いです。多く読んでいただければいただくほど、それだけ皆さんの糧になることは間違いありません。

1.ヨーロッパ自然思想の原史: ホメロス『オデュッセイア』(紀元前8世紀)→岩波文庫(松平千秋訳)
2.新しい自然観、新しい恋愛観、新しい読書観:ゲーテ『若きウェルテルの悩み』(1774年)→新潮文庫(高橋義孝訳)
3.四大元素と音楽神話: ブレンターノ/ゲレス『時計職人ボークスの不思議な物語』」(1807年)→九州大学独文学会編『九州ドイツ文学』第23号(2009年、小黒康正訳)
4.異教表象としての自然: アイヒェンドルフ『大理石像』(1819年)→岩波文庫(関泰祐訳)
5.イニシエーションとしての自然: シュティフター『水晶』(1853年)→岩波文庫(手塚富雄訳)
6.自然への呪い:トーマス・マン『トニオ・クレーガー』(1903年)→新潮文庫(高橋義孝訳)
7.監視する自然:ヘルタ・ミュラー『心獣』(1994年)→三修社(2014年、小黒康正訳)

 

(This lecture course focuses on xxxxxxxxxxxxxxxxxxx in order to provide an overview of the basic perspectives and concepts of modern German literature and thoughts.)
キーワード : ドイツ文学、ドイツ、自然、ホメロス、ゲーテ、トーマス・マン
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項 基本的に講義形式の授業です。但し、授業中に何度か書いてもらうレスポンスペーパーを通じて、授業が一方通行にならないように努めます。なお、この科目はEU研究ディプロマプログラム(EU-DPs)指定科目です。同プログラムについて、詳しくは以下のサイト(http://eu.kyushu-u.ac.jp/indexjp.html)をご参照ください。
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(ドイツ語)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
ML_A-b [先行研究の読解]
人文学の基礎知識を踏まえて、現代人文学の視座の特質を理解できる。
講義内容に関する問題を十全に説明できる。 講義内容に関する問題を充分に説明できる。 講義内容に関する問題を概ね説明できる。 講義内容に関する問題を説明できない。
ML_B2-a [総合把握力]
専門分野に固有の問題設定や研究手法を正しく身に付けることができる。
みずからの思索をみずからの言葉でかなりよく論述できる。 みずからの思索をみずからの言葉でよく論述できる。 みずからの思索をみずからの言葉で概ね論述できる。 みずからの思索をみずからの言葉で論述できない。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 授業中に指示します。
参考書 : 授業中に指示します。
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 導入
2 講義
3 講義
4 講義
5 講義
6 講義
7 講義
8 講義
9 講義
10 講義
11 講義
12 講義
13 講義
14 講義
15 予備日

成績評価
観点→
成績評価方法
ML_A-b
[先行研究の読解]
ML_B2-a
[総合把握力]
備考(欠格条件、割合等)
小テスト
レポート

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 : 平常点50%+レポート50%(レポートの執筆要領ならびに採点基準を授業中に数回にわけて説明する)
学習相談 学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)