人文科学府 言語・文学専攻 西洋文学 分野 独文学 専修 専修科目 (単位数 2) 選択科目 対象学年: 対象学部等: |
German Modern Literature (Seminar II)
|
科目ナンバリングコード: 講義コード: 2019 後期 毎週 金曜4限 伊都イーストゾーン 独文演 教室 M/J科目 (日本語, German) |
授業の概要 |
「第三の国」Das dritte Reichをめぐる思想は、 12世紀イタリアに実在したフィオーレのヨアキムによる独自の「ヨハネの黙示録」解釈を源流とする。カラブリアの修道院長は十字軍の時代に三位一体説に基づく独自の解釈を黙示録に対して行った。歴史が「父、子、聖霊」の三つの時代に分割され、「旧約の時代」「新約の時代」が過ぎ去り、今や「第三の国」der dritte Statusである「聖霊の時代」が始まろうとしている、とヨアキムは言う。ヨアキム独自の聖霊論は十六世紀のドイツ、とりわけトーマス・ミュンツァーやミュンスター再洗礼派による急進的な宗教改革運動に多大な影響をもたらしただけではなく、ロシアを含めヨーロッパの近現代思想に多大な影響を与え、メラー・ファン・デン・ブルックの著作『第三帝国』(1923年)を経て、最終的にナチス・ドイツの「第三帝国」das Dritte Reichに行き着く。同書以後の見解では、「ライヒ」を巡る三段階としてあるのは、第一に神聖ローマ帝国、第二にドイツ帝国であり、第三に1919年成立のヴァイマル共和国を認めない保守勢力が求めた新たな政治体制であり、詰まる所、ナチス・ドイツの「第三帝国」であったのである。 もっとも、ヨアキムを源流とする思想的潮流は、ナチス・ドイツの思想に必ずしも還元されえない志向を有していた。本論では、ナチスに結びつけられてしまう「第三帝国」という言葉と区別するために、ナチスの別称とは異質な das dritte Reichを「第三の国」と称する。ヨアキムの思想が中世や近世にもたらした宗教的な影響(ミルチャ・エリアーデの言う「ヨアキム主義」)に対して、近代以降の哲学的・弁証法的な影響を「ネオ・ヨアキム主義」と称するならば、その思想的核心である「第三の国」は、ヨアキム的な時代区分を啓蒙主義に持ち込んだレッシング、「第三王国の預言者」イプセン、三位一体の宗教を呼びかけたメレシコフスキー、抽象絵画の到来を「新しい精神の国」とみなしたカンディンスキー、既に第一次世界大戦時に「第三の国」を「ゲルマン的理想」と批判したシュペングラー、「宗教的人間愛の第三の国」を希求したトーマス・マン、1935年の時点で「第三の国」の理念を革命の側に取り戻そうとしたエルンスト・ブロッホなどに顕著に認められよう。 本演習では、以上の系譜の中でもとりわけ特異を占めるパウル・フリードリヒの『第三の国 個人主義の悲劇』を扱う。ライプツィヒのクセーニエン社から1910年に出版されたこの劇作品は、(1)いわゆるニーチェ神話を内容とすること、(2)第一次世界大戦前のドイツで『第三の国』Das dritte Reich というタイトルを持つこと、(3)1913年10月10日に日本で刊行された雑誌『第三帝国』が創刊号にこの作品に関する言及があること、以上の点にこの作品の際立つ特異性があると言えよう。 (Hauptseminar) | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
キーワード : 第三の国、パウル・フリードリヒ、ニーチェ | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
履修条件 : 履修に必要な知識・能力 : | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
特記事項 |
教職 : 教職(ドイツ語) 資格 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
到達目標 |
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー 九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ 九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
授業方法 |
テキスト : 授業中に指示する。 参考書 : 授業中に指示する。 授業資料 : 授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
| ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
成績評価 |
GPA評価
成績評価基準に関わる補足事項 : | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
学習相談 |
学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。 授業以外での学習に当たって : 合理的配慮について : 障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。 <相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階) (電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp) |