人文科学府 言語・文学専攻 西洋文学 分野
独文学 専修
専修科目 (単位数 2)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
ドイツ文学特殊研究 III
German Literature Special Studies (Seminar III)
講義題目  二十世紀初頭のウィーン文学とその周辺
大東文化大学外国語学部 准教授 荒又 雄介
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2019 後期
集中
伊都イーストゾーン 教室
M/J科目 (日本語, German)
更新情報 : 2019/11/5 (14:12)
授業の概要 一般に「世紀末ウィーン」と呼ばれる19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーン文化については、日本でもすでに一定のイメージが形成されていると思われる。ハプスブルク王朝の最後の華やぎ、爛熟期を迎えた市民文化、滅びゆく時代の内に胎動するモデルネなど、その枚挙にいとまがない。ところが、音楽(マーラー、シェーンベルク)、芸術(クリムト、シーレ)、精神分析学(フロイト)などへの高い関心はともかく、この時代の文学については、日本の読者には明確な像が結ばないようである。
本講義では、この時代の代表的な作家フーゴ・フォン・ホーフマンスタールが、アルトゥーア・シュニッツラーの戯曲に寄せた序文を手掛かりにして、文学の新潮流とそれを担った作家たちを紹介した後、第一次世界大戦までこの都市で展開した文学運動を概観し、さらに戦後、アルプスの小国に転落したオーストリアで、ハプスブルク帝国の文化や文学がどのように表象されてきたかを考察する。

(This lecture course focuses on selected works by the authors of the Viennese Modernism in order to provide an overview of the basic perspectives and concepts of the literary scene in the capital of the Habsburg monarchy and its reception after the First World War.)
キーワード : 文学 世紀末ウィーン ハプスブルク
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項  10月28日(月) 2,3,4限
 10月29日(火) 2、3、4限
 10月30日(水) 2、3、4限
 10月31日(木) 2、3、4限
 11月1日(金)  3、4、5限  以上、合計15コマ
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(ドイツ語)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
ML_A-a [言語データの分析]
言語を対象とする領域では、収集した言語データを言語学的な方法論にもとづいて的確に分析し、文法的な構造や特徴を理論的に説明できる。
ドイツ語の表現に十分親しみ、翻訳では汲み取れないニュアンスを感じ取ることができる。 ドイツ語の表現に親しみ、味わい楽しむことができる。 翻訳の助けを借りつつ、対象作品のオリジナルにアプローチできる。 翻訳のみに依拠した理解に留まる。
ML_A-b [先行研究の読解]
文学を対象とする領域では、過去に蓄積された重要な文献、とりわけ古典を厳密かつ精確に読解し、先行研究を踏まえつつその内実を深く掘り下げて説明できる。
個々の文献の成立背景を考慮しつつ、文献を批判的に取り扱うことができる。 個々の文献の成立背景を考慮しつつ、文献を利用できる。 二次文献の助けを借りて、文学作品を学問的に読解できる。 二次文献の影響から出られず、文学作品を自分の目で楽しめない。
ML_B2-b [理論的思考力]
人文学の実証的な方法と理論的な思考力を身につける。
自分の考えを、適宜先行研究を参照しながら、筋道を立てて述べることができる。先行研究に依拠するばかりでなく、独自の見解が含まれていることが望ましい。 自分の考えを、適宜先行研究を参照しながら、筋道を立てて述べることができる。 自分の考えを、筋道を立てて述べることができる。 研究対象との距離が十分とれないため、議論の筋が十分通らない。
ML_B2-c [コミュニケーション能力]
口頭発表などの場での表現能力と討論におけるコミュニケーション能力を鍛え、他の領域と交流する視点を養う。
研究成果を説得力のあるプレゼンテーションにまとめることができる。理路整然とした質疑応答ができれば更に良い。 研究成果を説得力のあるプレゼンテーションにまとめることができる。 研究成果をプレゼンテーションにまとめることができる。 研究成果をまとめる手際が十分でない。
ML_C-a [積極性]
自ら進んで新しい問題に取り組む積極性を持つ。
講読や研究発表において、理路整然とした質疑応答ができる。 講読や研究発表において、積極的に質疑応答に参加できる。 講読や研究発表に、議論の筋道を理解しながら参加できる。 準備不足で、講読や研究発表の内容が十分理解できない。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 以下のテクストの抜粋を教場でプリントを配布します。
Altenberg, Peter: Wie ich es sehe.
Andrian, Leopold: Der Garten der Erkenntnis.
Bahr, Hermann: Das unrettbare Ich.
Hofmannsthal, Hugo von: Erinnerung schöner Tage. Prolog zu dem Buch Anatol.
Klaus, Karl: Die demolierte Literatur.
Musil, Robert: Kakanien.
Roth, Joseph: Radetzkymarsch
Schnitzler, Arthur: Anatol. Casanovas Heimfahrt.
Zweig, Stefan: Die Welt von Gestern.
参考書 : カール・E・ショースキー『世紀末ウィーン』安井琢磨訳 岩波書店 1983年
W.M.ジョンストン『ウィーン精神 : ハープスブルク帝国の思想と社会1848-1938』井上修一他訳 みすず書房 1986年
クラウディオ・マグリス『オーストリア文学とハプスブルク神話』鈴木隆雄,藤井忠,村山雅人訳 書肆風の薔薇 1990年
岩ア周一『ハプスブルク帝国』講談社現代新書 2017年
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 「早熟で雅で憂鬱な」1
『アナトール序曲』あるいはカフェ文学
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
2 「早熟で雅で憂鬱な」2
『認識の庭』と従順なアヴァンギャルド
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
3 「早熟で雅で憂鬱な」3
老いた帝国の若者たち
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
4 精読『美しい日の思い出』1
ウィーンの作家たちと北イタリア
講読 テクスト(ドイツ語ないし日本語訳)の予習が必要です。
5 精読『美しい日の思い出』2
「語り手」というプリズム
講読 テクスト(ドイツ語ないし日本語訳)の予習が必要です。
6 精読『美しい日の思い出』3
官能性と想像力
講読 テクスト(ドイツ語ないし日本語訳)の予習が必要です。
7 ドン・ファンのオーストリア・ヴァリエーション1
『山師と歌姫』に見るホーフマンスタール文学の二つの人物形象
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
8 ドン・ファンのオーストリア・ヴァリエーション2
世紀転換期ウィーンの文学に見られる文学形象カサノヴァ
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
9 ドン・ファンのオーストリア・ヴァリエーション3
シュニッツラーの『カサノヴァの帰郷』とWiener Moderne の残滓
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
10 Ausgleich とその周辺、Anschluss とその周辺1
皇妃エリーザベトとハンガリー
グループワーク 分担作業でテクストないし映像資料を分析し、その成果を報告してもらいます。
11 Ausgleich とその周辺、Anschluss とその周辺2
ヒトラーとウィーン市民たち1
グループワーク 分担作業でテクストないし映像資料を分析し、その成果を報告してもらいます。
12 Ausgleich とその周辺、Anschluss とその周辺3
ヒトラーとウィーン市民たち2
グループワーク 分担作業でテクストないし映像資料を分析し、その成果を報告してもらいます。
13 ハプスブルク神話の諸相1
精読ムージル『天才の国カカーニエン』
講読 テクスト(ドイツ語ないし日本語訳)の予習が必要です。
14 ハプスブルク神話の諸相2
ロートの『ラデツキー行進曲』とツヴァイクの『昨日の世界』−第一次世界大戦勃発場面を中心に
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。
15 ハプスブルク神話の諸相3
クラウディオ・マグリスとその後のハプスブルク像
プリントで配布するテクストと講義で紹介した文献をよく読んでおいてください。

成績評価
観点→
成績評価方法
ML_A-a
[言語データの分析]
ML_A-b
[先行研究の読解]
ML_B2-b
[理論的思考力]
ML_B2-c
[コミュニケーション能力]
ML_C-a
[積極性]
備考(欠格条件、割合等)
レポート 40%
プレゼンテーション 30%
授業への貢献度 10%
出席 20%

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 : 【レポート課題について】
下記の課題どちらかを選んで、4000字程度のレポート(ワードファイル、あるいはPDFファイル)にまとめて提出してください。

締め切り:2019年12月31日
送付先:aramata@ic.daito.ac.jp
件名に「ウィーン文学とその周辺レポート」と入れてください。
受領確認の返信をします。返信メールは各自保管してください。

1.
Joseph Roth: Radetzkymarsch の作者自身による前書きを読んで(原文を参照のこと)、これを前提にして同じ作者の短編『皇帝の胸像』から読み取れるオーストリア君主国像について思うところを自由に述べてください。

2.
Hugo von Hofmannsthal: Das Märchen der 672. Nacht を、Leopold Andrian: Der Garten der Erkenntnis と比較しながら読み、das Fremde の描き方について自由に述べてください。その際、Hermann Bahr: Das unrettbare Ich を参照してください。
学習相談 学習相談 : 授業の前後に学習相談の時間を作ります。
メールでの問い合わせに関しては、初回の授業でメールアドレスをお知らせします。

授業以外での学習に当たって : 文献の必読箇所、講義で一緒に参照するテクストは、プリントで配布します。

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)