人文科学府 言語・文学専攻 西洋文学 分野
独文学 専修
博士演習 (単位数 2)
選択科目
対象学年:
対象学部等:
博士演習
Seminar
講義題目  ドイツの文学・思想における「自然」研究
教授 小黒 康正
科目ナンバリングコード:
講義コード:
2019 前期
毎週 金曜4限
伊都イーストゾーン 独文演 教室
M/J科目 (日本語, German)
更新情報 : 2019/4/5 (15:03)
授業の概要  日本人は古来より花鳥風月を歌い、「自然」を愛でる民族だと言われてきました。いわゆる日本人論にはそうした言説が少なくありません。「自然」は日本人のアイデンティティを証明する領域として理解されてきたとも言えましょう。もっとも、かつて日本人は「自然」を漢音で「シゼン」と読む場合は「万が一」という意味で用い、呉音で「ジネン」と読む場合は「ありのまま」という意味で用いてきました。現代の日本では、明治以降、西洋語の影響を受けながら、かつての「ジネン」に近い意味で「自然」という言葉を用いています。それでは西洋では「自然」はいかなる意味で用いられてきたのでしょうか。

 ヨーロッパにおける「自然」もしくは「自然観」には、なかなか複雑な背景があります。かつて四大元素と見られていた「自然」は、文化によって耕される対象であり、文明によって克服されるべき対象でありました。17世紀に入っても、ガリレオやデカルトの自然観が示すように、「自然」は数量化され解体される対象だったのです。しかし、ヨーロッパの啓蒙主義ではいささか事情が異なります。「自然」、それも「自然の光」lumen naturale には、人間から偏見を取り払い、理性の自立を促す力が、特にカントにおいては、人間を未成熟状態から自由に至らしめる力が認められたようです。また、18世紀に活躍したルソーの思想によれば、「自然」は人間が堕落した社会から戻るべき空間でありました。また、『ヴィルヘルム・テル』で著名なシラーによれば、「自然」は近代人が失ったものであり、失われた「自然」は近代人が憧れを抱く対象でもありました。しかし、19世紀前半には「自然」を有機体論的に捉えるロマン派的傾向がありましたが、19世紀後半に至ると、実証主義が重んじられる中で「自然」は自然科学的視点によって細分化される対象となったのです。そして20世紀の後半になると、「自然」は保護されるべき対象となり、現在に至っています。

 こうしたヨーロッパにおける「自然」の複雑な経緯は、ヨーロッパ文学、それも近現代のドイツ文学に極めて屈折した形で刻み込まれています。本演習では、近現代ドイツの文学・思想における「自然」を、「ヨーロッパ自然思想の原史」「新しい自然観、新しい恋愛観、新しい読書観」「四大元素と音楽神話」「異教表象としての自然」「イニシエーションとしての自然」「自然への呪い」「監視する自然」などの観点から考察し、皆で議論をしたい思っています。

(Hauptseminar)
キーワード :
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 :
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
ML_A-c [研究史と方法論の体系的理解]
専門分野に固有の問題設定や研究手法を正しく身につける。
当該分野における研究史と方法論の体系的説明がかなり優れている。 当該分野における研究史と方法論の体系的説明が優れている。 当該分野における研究史と方法論の体系的説明ができる。 当該分野における研究史と方法論の体系的説明ができない。
ML_B2-b [理論的思考力]
専門分野に固有の実証的な方法と理論的な思考力を身につける。
当該分野における実証的な方法と理論的な思考力がかなり優れている。 当該分野における実証的な方法と理論的な思考力が優れている。 当該分野における実証的な方法と理論的な思考力をもつ。 当該分野における実証的な方法と理論的な思考力をもたない。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : 授業中に指示する。
参考書 : 授業中に指示する。
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 導入 演習
2 演習 演習
3 演習 演習
4 演習 演習
5 演習 演習
6 演習 演習
7 演習 演習
8 演習 演習
9 演習 演習
10 演習 演習
11 演習 演習
12 演習 演習
13 演習 演習
14 演習 演習
15 予備日 演習

成績評価
観点→
成績評価方法
ML_A-c
[研究史と方法論の体系的理解]
ML_B2-b
[理論的思考力]
備考(欠格条件、割合等)
期末試験
授業への貢献度

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(火曜3限)にて相談に応じる。

授業以外での学習に当たって :

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)