文学部 人文学科 歴史学コース
西洋史学 専門分野
専門分野科目 (単位数 2)
選択必修科目
対象学年:
対象学部等:
ヨーロッパ史学演習 VI
European History (Seminar VI)
講義題目  20世紀初頭イギリスの料理、階級、女性
人間環境学研究院 教授 野々村 淑子
科目ナンバリングコード: LET-HUM3441J
講義コード:
2023 後期
毎週 火曜3限
伊都イーストゾーン 教室
E/J科目 (日本語, English)
更新情報 : 2023/10/2 (09:00)
授業の概要  今回は、イギリス両大戦間期における女性の生き方について、女性向け雑誌(Good Housekeeping)の主婦役割、特に料理に関する記事をもとに分析したHollows, Joanne, ‘Science and Spells: Cooking, Lifestyle and Domestic Feminities in British Good Housekeeping in the Inter-war Period’, Bell, D., and Hollows, J. ed., Historicizing Lifestyle: Mediating Taste, Consumption and Identity from the 1990s to 1970s, Chap. 2, pp.21-40, Ashgate, 2006を講読する。

 産業革命後、職住分離とともに成立した近代家族が性別領域分離主義を伴っていたことは知られている。そこで誕生したのが専業主婦という女性像と一家の稼ぎ手という男性像であった。なかでも、ここでは主婦役割に注目する。ミドルクラスの家庭は、その多くが家事使用人(domestic servant)を雇用していた。その数が減少し始めるのがこの時期である。それ以前は、料理は家事使用人の仕事であり、妻は、家事使用人たちの監督者としてのふるまいを期待されていた。しかしながらこの時期以降徐々に、家庭から家事使用人がいなくなっていくにつれて、家事仕事が、妻、主婦の仕事になっていくのである。その過程には何があったのか。本研究は、1922年に発刊した主婦向けの雑誌『グッド・ハウスキーピング』を素材に、それがターゲットとした女性たちの層や役割、主婦役割、特に料理に付与した価値やその機能を読み解いたものである。この時期は、参政権獲得や母性支援などの多様な女性運動、あるいは女子教育推進への取組など女性たちの活動が活発化した。そのような時期に、家族の近代化、主婦に期待される役割や価値の変容をめぐって、女性たちの生き方、階級や女性性をめぐるアイデンティティのゆらぎ、葛藤が、大衆文化のなかでどのように発現したのかについて考察してみたい。

 英語論文講読前に、山口みどり「ヴィクトリア朝の家族観と女性—男女の領域分離論をめぐって」(河村貞枝、今井けい編『イギリス近現代女性史研究入門』青木書店、第2章「家族と教育」第1節、36-50頁、2008年)、堀内真由美「イギリス大戦間期のフェミニズムと女子教育」(『西洋史学』日本西洋史学会、22-43頁、2003年)、松浦京子「世紀転換期イギリスの労働者女性運動にみるフェミニズム—女性共同組合ギルドと母性支援要求—」(『女性歴史文化研究所紀要』第9号、1-14頁、2001年)、松浦京子「ヴィクトリア・エドワード朝 イギリスの女性労働」(「京都橘大学女性歴史文化研究所第24回シンポジウム「近代と働く女性たち」U」『女性歴史文化研究所紀要』第9号、19-28頁、2016年)等を読む。
 さらに、英語論文講読後には、論文が分析対象としている史料をピックアップし、検討、検証を行う。

(The aim of this course is to help students acquire an ability of historical and critical consideration and research of education. This term deals with continuity and change of domestic femininities and housewifehood in interwar Britain. We would consider and discuss the historical context and meaning of female identity and their struggle in the early 20th century concerning the women’s role and class consciousness through the popular magazine to housewives. )
キーワード : 20世紀初頭イギリス、料理、主婦、女性、階級、雑誌、ドメスティック・フェミニニティ―
履修条件 :
履修に必要な知識・能力 :
特記事項 初回までに所定のMoodleに、下記の諸情報をアップロードします。必ずご確認ください。

・オリエンテーション レジュメ
・授業の進め方
・テキスト、参考論文、他。
遠隔/対面 Moodle 情報
対面授業 https://moodle.s.kyushu-u.ac.jp/course/view.php?id=53531
リアルタイム-オンライン授業
ハイブリッド授業(対面+オンライン)
オンデマンド型授業
課題提出型授業

教職 : 教職(社会)(地理歴史)
資格 :
到達目標
かなり優れている 優れている 及第である 一層の努力が必要
U_A-1 [主体的な学び]
深い専門的知識と豊かな教養を背景とし、自ら問題を見出し、創造的・批判的に吟味・検討することができる。
英語論文を的確に、かつ歴史的視座をもって読解することができる。 英語論文を的確に読解することができる。 英語論文を文脈をとらえ正しく読解することができる。 文意を取ることができず、翻訳は日本語になっていない。
U_B-1 [人文学の広範な知識と理解]
人文学全般の多様な専門分野の基礎知識を身につけ、人文学固有の思考や方法を説明できる。
歴史研究論文に対して、独創的な意見をもつことができる。 歴史研究論文に対して、自分なりの意見をもつことができる。 歴史研究論文を相対化して読むことができる。 研究の課題と成果を理解できない。
U_B-3b [歴史学コース固有の課題]
先行研究を批判的に読む中で自らの問題関心を鋭敏にし、史・資料を解読し史跡を調査することにより、自らの視角から、ある特定の地域と時代の社会像を復原できる。
歴史論文について独創的かつ的確に論評することができる。討論をリードできる。 歴史論文について的確に論評することができる。 論評と発言を行うことができる。 殆ど発言しない。
U_C-1-1 [文献分析力]
それぞれの専門分野の基本文献を正確に解釈、分析することができる。
歴史研究論文講読を通して、史料の解釈、分析、考察の適切さと、研究上の位置づけを論じることができる。 歴史研究論文のオリジナリティとその意義を理解した上で、批判的に論じることができる。 歴史研究論文の課題と結論、それに至るまでの流れを理解することができる。 歴史論文の課題と方法が理解できない。
U_C-2-1 [知識・理解の深化と統合]
それぞれの専門分野の内容に関する深い理解と、学問固有の思考方法、研究手法を獲得し、知識を有機的に総合し、論文を作成することができる。
U_D [他者を尊重する公平な姿勢]
先行研究と自らの学説を批判的に討論し、自らの意見をより客観的視点から組み立て、他者の意見を尊重する、市民性のある公平な姿勢で論文を作成することができる。
九州大学文学部ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府人文基礎専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学人文科学府歴史空間論専攻ディプロマ・ポリシー   九州大学人文科学府言語・文学専攻ディプロマ・ポリシー
九州大学文学部哲学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部歴史学コース・カリキュラムマップ
九州大学文学部文学コース・カリキュラムマップ   九州大学文学部人間科学コース・カリキュラムマップ
授業方法
授業形態(項目) 授業形態(内容)
講義
外国語演習
原典資料演習
実習/フィールド調査
Problem-Based Learning (問題発見・解決型学習)
学生のプレゼンテーション
Moodle の使用
学外実習
野外実習

テキスト : Hollows, Joanne, ‘Science and Spells: Cooking, Lifestyle and Domestic Feminities in British Good Housekeeping in the Inter-war Period’, Bell, D., and Hollows, J. ed., Historicizing Lifestyle: Mediating Taste, Consumption and Identity from the 1990s to 1970s, Chap. 2, pp.21-40, Ashgate, 2006、他
参考書 : 山口みどり「ヴィクトリア朝の家族観と女性—男女の領域分離論をめぐって」(河村貞枝、今井けい編『イギリス近現代女性史研究入門』青木書店、第2章「家族と教育」第1節、36-50頁、2008年)、堀内真由美「イギリス大戦間期のフェミニズムと女子教育」(『西洋史学』日本西洋史学会、22-43頁、2003年)、松浦京子「世紀転換期イギリスの労働者女性運動にみるフェミニズム—女性共同組合ギルドと母性支援要求—」(『女性歴史文化研究所紀要』第9号、1-14頁、2001年)、松浦京子「ヴィクトリア・エドワード朝 イギリスの女性労働」(「京都橘大学女性歴史文化研究所第24回シンポジウム「近代と働く女性たち」U」『女性歴史文化研究所紀要』第9号、19-28頁、2016年)等

講読するものはMoodleにて共有する。
授業資料 :

授業計画 (授業計画は予定であり、学びの進捗に合わせて変更することがあります。)
進度・内容・行動目標等 講義 演習・その他 授業時間外学習
1 オリエンテーション 演習
2 導入 日本語参考論文講読@ 演習
3 導入 日本語参考論文講読A 演習
4 導入 日本語参考論文講読B 演習
5 第4回〜第14回 英語論文講読、および史料検討
15 総括討論 演習

成績評価
観点→
成績評価方法
U_A-1
[主体的な学び]
U_B-1
[人文学の広範な知識と理解]
U_B-3b
[歴史学コース固有の課題]
U_C-1-1
[文献分析力]
U_C-2-1
[知識・理解の深化と統合]
U_D
[他者を尊重する公平な姿勢]
備考(欠格条件、割合等)
授業への貢献度 担当発表の内容、議論への参加
出席

GPA評価
A B C D F
授業を通じて、総じて「かなり優れている」に相当する活動を行った。 授業を通じて、概ね「優れている」を超える活動を行った。 授業を通じて、「及第する」に相当する活動を行った。 授業を通じて、総じて「及第する」には達しないものの、それに近い活動を行った。 授業を通じて、「一層の努力が必要」の活動にとどまった。

成績評価基準に関わる補足事項 :
学習相談 学習相談 : 随時受け付けます。メールに連絡ください。
nonomura.toshiko.868@m.kyushu-u.ac.jp

授業以外での学習に当たって : 予習および復習 1時間程度

合理的配慮について :
障害(難病・慢性疾患含む)があり、通常の方法による授業を受けることが困難な場合には、教育目的の本質的な変更など過重な負担を伴わない限り、合理的配慮を受けることができます。合理的配慮とは、教授・学習法の変更、成績評価の方法の変更、授業情報の保障(資料の字幕化、個別の資料配布、録音・撮影の許可)、受講環境の調整などを指します。実際の方法については担当教員と建設的対話を行なった上で決定されます。
<相談窓口> キャンパスライフ・健康支援センター インクルージョン支援推進室(伊都地区センター1号館1階)
(電話:092-802-5859 E-mail:inclusion@chc.kyushu-u.ac.jp)