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美学・美術史研究室

美の理念を問い、その諸相をあきらかにする

本研究室は、学部は美学・美術史を、大学院は芸術学を名乗っていますが、いずれも哲学分野の「美学/芸術学」と歴史学分野の「美術史」という、ふたつの学問領域にまたがる研究内容を持っています。美について深く思索することと、芸術作品という眼前の美の様態をあきらかにすることは、本来分かちがたく結びついているものです。美や芸術の理念やその現実の有りようを、哲学的かつ歴史的な観点から、さまざまなアプローチを通して、究め問いただしていくところに、私たちの研究室の特色があります。

教員陣は、研究対象と領域が古今東西にわたり、その研究方法も一様ではありません。価値観の多様化する今日、「美術史」はもちろん、「芸術」「美術」「音楽」等の概念自体も既存の枠組みでは捉えることのできない広がりを有しています。しかし美学・美術史の研究は、まずは作品についてよく鑑賞し、関連する文献や哲学的美術書の精読と作品の分析というアカデミックな方法論をふまえながら、作品をとりまく文化的・社会的な問題へと視野を広げ、今日的な問題についても思索を深めることが必要とされます。多彩な教員は、それに応えうる陣容となっています。各教員の専門にかかわる演習や講義のほか、フィールドワークを実践的に学ぶ実習の授業では、美術館・博物館・寺社などに出向き、作品を調査し、企画者や制作者とディスカッションを行っています。また、1950年以来、学生による自主的な研究会(金曜会)が毎週行われており、毎年恒例の研修旅行は関西関東を中心に海外へも積極的に出かけています。

大学院生になると、個々の研究テーマを計画的に深め、ゼミや研究会における発表と議論を主導していきます。そこではなによりも、思索を続ける力と作品を理解する力、日常の研鑽が求められます。また、大学院生は、学内の九州大学芸術学研究会や当研究室が事務局をつとめる九州藝術学会、あるいは美学会や美術史学会において、研究成果を積極的に発表しています。卒業生の多くは全国各地の主要な美術館・博物館の学芸員として活躍しています。

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教員

井手 誠之輔 (IDE Seinosuke) 芸術学講座/教授

  • 専門
    東洋美術史
  • 専門分野
    中世以来、日本に舶載されて伝来してきた中国・朝鮮の仏画を中心に研究している。これらの請来仏画が、本来、宋元時代や高麗時代のどのような文化的・社会的な文脈を反映していたのかを、中国絵画史・朝鮮絵画史の問題として再検討するとともに、請来仏画が日本側でどのように機能したのか、また日本側でどのような受容が行われたのかについても議論し、既存の影響伝播論・受容論の枠組みを再検討していきたいと考えている。
  • 主要業績
    『アジア仏教美術論集 東アジアⅣ 朝鮮半島』(共編著、中央公論美術出版、2018年)
    『大徳寺伝来五百羅漢図』(共著、思文閣出版、2014年)
    『Light & Color 絵画表現の深層をさぐる』(共著、中央公論美術出版、2009年)
    『日本の宋元仏画』(単著、至文堂、2001年)
    『故宮博物院 南宋の絵画』(共著、日本放送出版協会、1998年)
    「高麗仏画の世界−東アジア美術における領分とその諸相」(単著、『国華』1313、2005年)

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東口 豊 (HIGASHIGUCHI Yutaka) 芸術学講座/准教授

  • 専門
    美学、音楽学、映像学
  • 専門分野
    近現代ドイツ美学における自然の問題について研究。また、音楽や写真・映画等の映像表現、サブカルチャーもカヴァーする。更に美学史研究を土台にしつつ、藝術体験の存在論や社会学、先端技術の感性論等に関する新しい美学思想の構築を目指している。
  • 主要業績
    “Can AR Technologies Have an Impact of theDefinition of Art?” (AM Journal of Art and MediaStudies, No.20, 2019)
    「Th・W・アドルノの音楽言語論における「沈黙」」(『哲學年報』 第69輯、2010年)
    “The Aesthetics of Periphery without Center—A New foundation of the Aesthetics ofNature”(International Yearbook of Aesthetics, Vol.5,2002)

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伊藤 拓真 (ITO Takuma) 芸術学講座/准教授

  • 専門
    西洋美術史 、美術批評史
  • 専門分野
    イタリア・ルネサンス美術を中心に研究を行っている。ルネサンス期の美術は、その後の西洋における美術の在り方を形作ったともされている。その展開の歴史的・地理的特殊性を、具体的な作品および美術批評の分析によって跡付けることを目指している。また、学問領域としての美術史学の確立・発展にルネサンス美術研究が果たした歴史的役割を再検討し、今後の研究に活用したいと考えている。
  • 主要業績
    『西洋美術史における「古典」の創出』(共著、中央公論美術出版、2021年)
    “Ghirlandaio Brothers Reconsidered: The Master of the Saint Louis Madonna as Young Benedetto Ghirlandaio”, Journal of the Warburg and Courtauld Institutes, LXXXIII, (2020)
    『オリジナルとコピー:16世紀および17世紀における複製画の変遷』(共著、三元社、2019年)
    『ルネサンス期トスカーナのステンドグラス』(中央公論美術出版、2017年)

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石井 祐子 (ISHII Yuko) 基幹教育院/准教授

  • 専門
    西洋美術史、芸術学
  • 専門分野
    西洋近現代の美術の中でも、特にシュルレアリスムの美術をめぐる諸問題について研究。両大戦間の展覧会活動や、コラージュの理念と実践、シュルレアリスムの国際化と日英での受容など、様々な観点から考察を進めている。近年は、イギリスのモダン・アートと趣味論の関わりにも関心を広げている。
  • 主要業績
    「「海外超現実主義作品展」(一九三七年)における複製写真展示の意義:シュルレアリスム「国際」展の観点から」(『藝術研究』33、2020年)
    Michael Richardson, Dawn Ades, Steven Harris, Krzysztof Fijalkowski, Georges Sebbag (eds.), The International Encyclopedia of Surrealism, London:Bloomsbury, 3 vols, 2019.
    『コラージュの彼岸:マックス・エルンストの制作と展示』(ブリュッケ、2014 年)
    「その道は、長いというより広い:1930年代のコーク・ストリートにみるイギリスにおけるシュルレアリスム受容の一側面」(『藝術研究』28、2015年)

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