安全なフィールドワーク教育へのデザイン・エスノグラフィ

 私のフィールドは①オーストラリア先住民の「暴力」問題、②児童福祉施設での暴力問題、③ポスト被災地での共生を主として来ました。他方で、九州大学での事件事故の対策策定過程で、この経験を他大学でも活かしていただきたいと考えましたので、私が行ってきた研究、講演、成果物などをまとめておきます。
 私が対応できるのは①社会的フィールドワーク教育の安全性構築(コロナ後のプログラム再開指標を含む)、②大学における安全環境の構築(暴力問題対策、カルト問題対策やSNS対策を含む)、③事件事故が生じた場合の支援体制の構築(School Crisis Response Team)、④それぞれの研究教育機関でのワークショップの実施、です。
 私たちのところではこうした問題が生じていないというのではなく、むしろ私たちが直面した問題をもとに行ったデザイン・エスノグラフィを、お互いの教育環境をモニターして、互助し、それぞれの現状により安全な方策を取り込んでゆくことが目指すところです。

1.作成過程*職位は全て当時のもの
20161124九州大学全学安全管理検討WG(大槻恭一教授(農学部)、飯嶋秀治准教授(文学部)、池田剛准教授(理学部)、笹岡孝司准教授(工学部)、中野伸彦講師(地球社会統合科学府)、水野清義教授(総合理工学府)、安田章人准教授(基幹教育院))に参画20170331九州大学全学安全管理検討WG(大槻恭一WG長)「九州大学における安全の指針~野外活動編~」公表。
20170526九州大学全学安全管理検討WG(大槻恭一WG長)の下、「野外活動SWG」(大槻恭一SWG長以下6名)、「実験室活動SWG」(水野清義SWG長以下5名)、「学外活動編SWG」(飯嶋SWG長以下暫定1名(安田))が決まる。
20171001九州大学のフィールドワーク引率教員105名を悉皆インタビュー(文学部、教育学部、法学部、経済学部、農学部、工学部、医学部、薬学部、歯学部、芸術工学部他総合新領域大学院等)し、各授業のガイドライン資料を入手。
20171115教育実習経験学生135名へのアンケート調査を木村拓也准教授に依頼し実施。
20180325丸野俊一教育担当理事より、ガイドライン作成のための研究費を援助いただく。
20180330「学外活動SWG」(飯嶋秀治SWG長以下17名で男女比率は8:2で九大教員男女比よりも女性比率を高くデザイン)開催。飯嶋 秀治 准教授(文学部)、田尻 義了 准教授(共創学部)、田上 哲 教 授(教育学部)、目代 武史 准教授(経済学部)、與倉 豊 准教授(経済学部)、前野 有佳里 准教授(医学部)、菊川 誠 講 師(医学部)、田中 昭代 講 師(医学部)、築山 能大 教 授(歯学部)、黒瀬 武史 准教授(工学部)、清野 聡子 准教授(工学部)、田上 健一 教 授(芸術工学部)、朝廣 和夫 准教授(芸術工学部)、森高 正博 准教授(農学部)、安武 大輔 准教授(農学部)、大場 信恵 教 授(人間環境学研究院)、安田 章人 准教授(基幹教育院)より構成する。矢原 徹一 教授(決断科学センター長)講義を拝聴。
20180426「学外活動SWG」第2回会合開催。
20180529「学外活動SWG」第3回会合開催。
20180628「学外活動SWG」第4回会合開催、SWG18名(姜 益俊 准教授(共創学部)参加)より各学部での学外活動の留意点と実際にあったヒヤリハットを提出してもらう。
20180820平成30年度人間環境学研究院萌芽的学際研究助成「現場に応答することから始まる人間環境学プログラムの萌芽的学際研究」第1回研究会。
20180822平成30年度人間環境学研究院萌芽的学際研究助成「現場に応答することから始まる人間環境学プログラムの萌芽的学際研究」第2回研究会。
20181121「学外活動SWG」第5回会合開催、全体案を共有(当初は構成も異なっていたが、他のSWGの様式に沿わせたいというWG長の要請で原則野外活動編に揃える)。平野琢講師(経済学部)講義を拝聴。
20190206平成30年度人間環境学研究院萌芽的学際研究助成「現場に応答することから始まる人間環境学プログラムの萌芽的学際研究」第3回研究会。
20190215平成30年度人間環境学研究院萌芽的学際研究助成「現場に応答することから始まる人間環境学プログラムの萌芽的学際研究」第4回研究会。
20190222教育企画委員会で質疑。田中 眞理 教授(基幹教育研究院)よりPsychological First Aid加筆の進言を受け、吉良 安之 教授(キャンパスライフ・健康支援センター)に作成協力していただく。
20190718「九州大学教育における安全の指針~学外活動編~(第1版)」公開。
20210924「 九州大学教育における安全の指針~学外活動編~ (第2版)」公開。
20220401Kyushu University Guidelines for Safety in Education–Off-Campus Activities– (Ver.2)公開。

2.口頭発表、FD等招待講演
20170122「フィールドワークの命綱―『ガイドライン』を形骸化にも萎縮化にも帰結させないために」第30回課題研究懇談会応答の人類学+第5回科研研究会。
20170506International Union of Anthropology and Ethnographic Sciences2017(Otawa,Canada)の‘Moving beyond the home discipline: where is anthropology going in multi-disciplinary research and community-based research’パネルにて‘Comparative Study of Fieldwork’発表。
20170726人間環境学研究院FDにて「九州大学教育における安全の指針~野外活動編~」招待講演。
20190609「宗教と社会」学会「宗教を巡る調査・研究の倫理」分科会において招待発表。20190830 International Union of Anthropology and Ethnographic Sciences2019(Poznan,Poland)の‘Teaching and Learning Anthropology’パネルにて‘Need for International Solidarities for Fieldwork Education’発表。
20190915「宗教の社会科学教育―大学ガイドライン作成の経験から」、日本宗教学会第78回学術大会にて発表。
20191010TA講習会参画。TAの複数化に当たり「教育における安全の指針」講習教材に参画。のちに、「九州大学教育における安全の指針~学外活動編~」の受講ビデオと確認質問となる。
20191024西南女学院大学全学FDにて「文系研究倫理と大学ガイドラインについて」招待講演。
20191130國學院大學宗教文化教育推進センター・日本文化研究所・宗教文化の授業研究会合同研究会にて「宗教学、宗教文化に関わる授業と危機管理」招待発表。
20200214九州大学医学部看護学科FDにて「教育における安全の指針~学外活動編~」招待講演とワークショップ。
20200307上智大学グリーフケア研究所にて、「九州大学教育における安全の指針~学外活動編~」発表。
20200531日本文化人類学会会分科会「応答の人類学」にて「エデュケーションでの応答ーその学理と技法の探究」発表。
20201119西南女学院大学全学FDにて「文系研究倫理と大学ガイドラインについて」オンライン招待講演。
20201130大学における海外体験学習研究会(JOELN)危機管理ガイドラインWG招聘参加。
20210614一般社団法人梅村尚久記念多文化連帯館(Casa de UME)主催「ポストコロナ時代のスタディツアー再開のために」第15回フォーラム招待講義。
20210730津田塾大学多文化・国際協力学科FDにて「ポストコロナにおける海外体験学習の注意点」招待講演。
20210908「人類学者が語る『児童養護施設の暴力・性暴力』」NPO法人CAPNA&赤い羽根共同募金配分金事業「子どもたちに安心・安全な暮らしを」WEB研修会(50分講演)。
20210908「虐待・修行・運動-フィールドワーク教育の死角」、日本宗教学会第80回学術大会にて発表。
20211221北海道医療大学にて全学教員FD「大学の安全配慮(義務)について―カルト対策を中心に」講演。
20211227福岡女学院大学にて研究倫理講習会(教員FD・大学院)「人文社会科学系研究倫理、教育ガイドライン、コロナ禍のプログラム」講演。
20220326福岡県社会福祉協議会里親の集い講演「SDGsと社会的養護のあいだで」ビデオ講演。
2023.07.22エレパニエ山口「文化人類学から見た暴力と安全の研究」


3.論文、報告書、オンライン教材等
飯嶋秀治20180624平成30年度人間環境学研究院萌芽的学際研究助成「現場に応答することから始まる人間環境学プログラムの萌芽的学際研究」 | 教員・飯嶋秀治 Shuji, IIJIMA (kyushu-u.ac.jp)開設
飯嶋秀治ほか20190718「九州大学教育における安全の指針~学外活動編~」九州大学
飯嶋秀治20200107「TA教材 教育における安全の指針~学外活動編~」九州大学
飯嶋秀治20200108「人類学会の安全教授と大学ガイドラインの間で」、『FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ第9巻 フィールドワークの安全対策』古今書院:102-112
飯嶋秀治20200331a「屋久島事故から大学授業運営の安全を祈って」、『会報 63』九州大学文学部同窓会:29-32
飯嶋秀治20200331b「宗教の社会科学教育-大学ガイドライン作成の経験から-」、『宗教研究 別冊』:420-421
飯嶋秀治ほか20200331c『令和元年度九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野FD報告書 テーマ「教育における安全の指針~学外活動編~」』九州大学大学院医学研究院保健学部門看護学分野令和元年度FD委員広域生涯看護学講座母性助産領域
JOELN コロナ禍におけるリスク管理ガイドライン作成ワーキング・グループ20210331『コロナ禍における「海外学習体験」再開のためのガイドライン作成にむけた提言』
飯嶋秀治20210609a「飯嶋秀治さん仕事と経歴(44分13秒)」Casa de UMEポストコロナ時代のスタディツアー再開のために第15回フォーラム用資料
飯嶋秀治20210609b「提言解説 飯嶋秀治さん(32分 12秒)」Casa de UMEポストコロナ時代のスタディツアー再開のために第15回フォーラム用資料
飯嶋秀治ほか20210618「ポストコロナ時代のステディーツアー再開のために」Casa de UMEポストコロナ時代のスタディツアー再開のために第15回フォーラム
飯嶋秀治20200630「研究倫理から大学ガイドラインへ」『宗教と社会』第26号:114-116
飯嶋秀治ほか20210331「コロナ禍における「海外体験学習」再開のためのガイドライン作成に向けた提言」(主に第1部、第3部分析、おわりに及び付録2A/B作成)
飯嶋秀治20210908「人類学者が語る『児童養護施設の暴力・性暴力』」NPO法人CAPNA
飯嶋秀治20220430「パンデミックとフィールドワークのリスク管理」、北野真帆・内藤直樹編『コロナ禍を生きる大学生 留学中のパンデミック体験を語り合う』昭和堂:231-247
飯嶋秀治20231122「宗教2世問題『虐待に宗教という聖域はない』 九州大大学院・飯嶋秀治教授に聞く」『西日本新聞』ウェブ版・紙面版
飯嶋秀治・安田章人20220ー「対人・対社会フィールドワークガイドラインの策定」椎野若菜・小西公大編『フィールドでの災難、失敗にどうむきあうか』FENICS 100万人のフィールドワーカーシリーズ第8巻 古今書院:第二稿提出済み