科学研究費基盤研究B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究

【はじめに】本ページは文部科学省科学研究費基盤研究B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究のためのものである。主には研究会の告知や記録公開のために用いる。

【メンバー】代表:飯嶋秀治(九州大学大学院人間環境学研究院・共生社会システム論)
北川由紀彦(放送大学・都市社会学)
間宮郁子(国立障害者リハビリテーションセンター・福祉機器開発部・文化人類学)
増田健太郎(九州大学大学院人間環境学研究院・心理臨床学)

【研究会開催記録】
□2014年度第1回研究会20140930@放送大学
飯嶋秀治「科学研究費基盤B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究オリエンテーション」
間宮郁子「精神病院の制度史と『精神病』概念の系譜」
北川由紀彦「居所のない人々の収容施設と<ホームレス>の系譜―東京を中心に」
増田健太郎「プロフィール紹介」
□課題:メンバーが網羅している「施設」の狭さ、施設職員の実態把握の薄さ

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第2回研究会プログラム20150309@国立障害者リハビリテーションセンター小会議室2
飯嶋秀治「民俗社会の変容と施設―第1回研究会の課題から」
ランジャナ・ムコパディヤーヤ「仏教福祉と社会参加」
20150310@ 国立障害者リハビリテーションセンター第2会議室
飯嶋秀治「児童福祉施設の定量的把握」
間宮郁子「精神病院等医療機関、福祉施設の職員について」
北川由紀彦「生活困窮者施設に関する量的把握」
増田健太郎「教員の臨床心理学的研究と実践」
□課題:宗教と福祉の関係研究の薄さ、網羅的に施設を把握した際の個々の施設利用者の特異性

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第3回研究会プログラム20151002@滝乃川学園記念館2階
米川覚「社会福祉法人滝乃川学園について」「『働き方』アンケートまとめ」
飯嶋秀治「オリエンテーションと児童養護施設との関わり」
間宮郁子「精神障害者通所授産施設に関して」
北川由紀彦「都区の『路上生活者対策』における支援の変化の動向について」
増田健太郎「ボストン自閉症施設視察報告」
□課題:施設内暴力、職員の専門性の布置状況、施設の資源(投資)の比較、比較から見えてくる諸問題の難易度評定

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第4回研究会プログラム20161004@国立障害者リハビリテーションセンター第2会議室
飯嶋秀治「事例検討」
間宮郁子「精神障害者福祉領域での児童養護施設利用者について」
北川由紀彦「複数の施設の経験者の事例~生活困窮者施設を中心に~」
増田健太郎「ロング・コメント」
□課題:「全制的施設」概念の臨界、診断名とのつきあい方、対国家施策との脆弱さ、施設の地域性、二者択一の発想からネットワーキングの発想へ

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第5回研究会は20161223@九州大学東京オフィス
飯嶋秀治「日本における児童の社会的養護の多様性と方向性」
北川由紀彦「施設間移行者の推計(仮)」
増田健太郎「行政との連携(仮)」
□課題:国際比較の政治性、相互行為として捉える意味、施設間移行の推計、民間委託の捉え方、対職員・職員間・行政支援のあり方、非正規がマジョリティになる構造

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第6回研究会20170328@九州大学東京オフィス
永野咲「社会的養護におけるライフチャンスの保障」
飯嶋秀治「3年間の課題を振り返る―特に海外比較の現状と課題」
間宮郁子「施設間移行者の生存経路多様化に関する基礎的研究―精神障害者通所授産施設の場合」
北川由紀彦「研究紹介+文化人類学会報告に向けて」
増田健太郎「対人援助職のバーンアウト予防に着目して」
□課題:児童の社会的養護研究における記述的親族体系研究の不備、精神科病院研究者の必要性、ホームレスの海外研究での視点の不均等さ、施設入所者と支援者の相互行為研究の必要性、同一自治体での研究の必要性、問題意識のぶれ

□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究―中間報告分科会20170528@神戸大学
飯嶋秀治「施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究―児童福祉施設・通所授産施設・(野宿者)自立支援施設の連携研究から見えてきたこと」
飯嶋秀治「児童福祉施設の施設間移行と生存経路多様化―歴史・統計・事例・施設間移行」

間宮郁子「通所授産施設の施設間移行と生存経路多様化」
北川由紀彦「自立支援施設の施設間移行と生存経路多様化」
増田健太郎「児童福祉施設と施設間移行と心理的ストレスの援助のために」
□課題:事前の準備不足のため10年後の比較研究が不ぞろいとなっていたこと。それが揃ったとしても、概念的な課題(施設間を間接的に往来した場合)や同一自治体での実態が見えないこと。また比較対照する資料がなかったため絶対数や割合の解釈の基盤がないこと(増加傾向か減少傾向か、良いか悪いかの価値判断の基礎の不在)。ある意味だからこそ、基礎的研究の意味がある。

【研究会報告】
□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第7回研究会20170926⁻27@九州大学東京オフィス
渡邊守「オーストラリアの社会的養護―”児童福祉先進国”を斜めからみて―」
飯嶋秀治「児童福祉施設の安全委員会方式とべてるの家の当事者研究の考察」
間宮郁子「精神障害者福祉施設進捗」
北川由紀彦「文化人類学会報告を終えて―施設からの退所と『施設間移行』についてのノート」
増田健太郎「安全委員会方式の万相談/メンタルヘルス・セルフチェックシート」
□課題:研究上の課題、実践上の課題、発表上の課題、論文上の課題、の4つを共有。特に後半に入ってからは、座学や科学知だけではどうにもならず、臨地や臨床知での検討が必要となる。このため、日本ソーシャルワーク学会、日本保健医療社会学会、日本社会臨床学会、日本臨床知識学会などでの検討が必要であると思われる。

【研究会報告】
□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第8回研究会20180318@九州大学東京オフィス
佐藤文「子どもたちはどこから来てどこへ行くのか」
飯嶋秀治「生存経路の多様化に向けて」
北川由紀彦「経過報告」
増田健太郎「キーアセットについての報告」
□課題:研究会も最終年度の前年になったため、研究会で蓄積してきた研究を発表する適切な場について議論を行った。後半では具体的なオルタナティブとその効果をディスカッションできる場がふさわしいため、社会科学系ではなく福祉学系が良いのではないかと話し合いになる。

【研究会告知】
□科研B施設間移行と生存経路多様化の基礎的研究第9回研究会20180926@放送大学文京区学習センター
阿部正美「『地域生活移行支援』制度の可能性と課題―徳島県における救護施設の現状」
飯嶋秀治「総括に向けて」
間宮郁子「清野絵『障害のある生活困窮者の実態および支援の課題―アンケート調査による探索的研究』」「医学系論文 文献より」
北川由紀彦「厚生施設調査(前回の続き)」「退所者調査・通所事業利用者調査」
増田健太郎「総括に向けてのコメント」
□成果と課題:以下は当日のディスカッションの主な点になる。
成果①「施設間移行」の現象は体験的に現場の実務者や研究者に知られていたにも関わらず、それを具体的な施設を拠点にしてどのような移行の実態があるのかを把握できた。
成果②その結果「全制的施設」といった概念や「アサイラム空間」といった概念だけではない中範囲の術語が必要とされ「同種内施設間移行」「異種間施設間移行」、「連続施設間移行」「間断施設間移行」、「同一人物施設間移行」「異世代施設間移行」等の語彙で現象を分析できるようになった。
成果③但し関心の中心は施設ということではなく、入所者および職員のウェルネスであるため、こうしたパターン把握を超えた「生存経路多様化」基礎的研究としては「施設外生存経路多様化」「施設内生存経路多様化」などの開き方の多様性がある。
課題②
他方で職員との相互行為への介入や国家およびよりグローバルシステムへの介入への関心は周辺化した。
課題③また全国統計を行わない限り、この種の自治体の異なるフィールドワークの記述を得ても、同一自治体での施設間移行を把握しないと問題の生態から離床する危険性もあることが分かった。