2017年度行事開催記録

【報告】「応答の人類学:フィールド、ホーム、エデュケーションにおける学理と技法の探求」(基盤A) 第9回研究会

以下の通り、科研メンバー間で非公開研究会を開催しました。

日時:2018年3月29日(木)13:00~17:00
場所:愛知県立大学名古屋サテライトキャンパス
参加人数:9名
報告者:
1. 清水展「はじめに」
2. 関根康正、真島一郎、青木理恵子各位からの発表
3. 質疑と全体討論


【報告】日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」最終シンポジウム
(応答の人類学第35回研究会/科学研究費補助金基盤研究 (A)「応答の人類学」第8回研究会)

「フィールド/ホーム/エデュケーションにおける人類学の応答可能性に向けて」

以下の通り公開研究会を開催しました。

主催:日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」
共催:科学研究費補助金基盤研究 (A)
「応答の人類学: フィールド、ホーム、エデュケーションにおける学理と技法の探求」

日時:2018年3月28日(水)13:30〜17:00(13:00開場)
会場:愛知県立大学サテライトキャンパス
愛知県産業労働センター(ウインクあいち)15階
〒450-0002 名古屋市中村区名駅4丁目4-38
[アクセスマップ]
参加人数:19人

■開催趣旨
2012年に発足した日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」は、4年の当初期間および2年の延長を加え、計6か年にわたって研究活動を続けてきた。この3月にその期間を満了し、活動を終了するにあたって、最終シンポジウムを開催する。

この懇談会の議論を通じて、人類学は、フィールド/ホーム/エデュケーションの三つの場面/方向性における応答性をもちうるし、これまでももってきたし、さらに、今後ともさらにもつことを目指していきたいという議論へと収斂してきた。

本シンポジウムでは、本懇談会の申請時から運営に携わってきた3名のメンバーが、自身の取り組む研究課題に引き付けつつ、フィールド/ホーム/エデュケーションのそれぞれの方向性における人類学の課題と役割について現状を総括し、展望する。

さらに、「応答の人類学」の場が育んできた研究者のネットワークは、今後とも人類学と社会の出会いと対話の方法を実践的に模索していく予定である。「応答性」をめぐる議論を今後どのような展開へと接続させていくかについて、予備的な議論を行う。

■プログラム
・全体趣旨説明 亀井伸孝(「応答の人類学」代表世話人/愛知県立大学)

・報告1【フィールドにおける応答】
「万人のためのフィールドワーク?:職人技から「社会人基礎力」まで」
小國和子(「応答の人類学」世話人/日本福祉大学)

・報告2【ホームにおける応答】
「応答するエスノグラフィ:植民・戦争・統治から開発・ビジネス・デザインへ」
飯嶋秀治(「応答の人類学」世話人/九州大学)

・報告3【エデュケーションにおける応答】
「人種主義との格闘を通して:中等教育、大学教育、一般社会啓発における人類学の役割」
亀井伸孝(「応答の人類学」代表世話人/愛知県立大学)

・提言【応答性と社会連携】
「エスノグラフィ・インク:文化人類学と社会をつなぐ新たな組織的実践」
内藤直樹(徳島大学)

・全体討論

・おわりに 清水展(京都大学名誉教授/科研費基盤 (A)「応答の人類学」代表)

■各報告の要旨
□報告1【フィールドにおける応答】
「万人のためのフィールドワーク?:職人技から「社会人基礎力」まで」
小國和子(「応答の人類学」世話人/日本福祉大学)

本研究会では当初、人類学者自身のフィールドワークにおいて、幾つかの異なる次元でいかに・どのように応答してきたか/してこなかったかが議論の中心であった。その後、大学教育現場の需要等も踏まえ、人類学者/学徒にとどまらない広範な実践主体にとってフィールドワークとはどのようなコンセプト、スキルたるかという関心が生まれた。昨今の大学教育では、学部にかかわらず、アクティブラーニングやサービスラーニング等、「現場」に出て情報収集を行うカリキュラムが行われている。本発表では、研究会での議論の一端を紹介し、様々な領域の学生や実務者が自身の文脈において意味を見出すフィールドワーク実践に向けて、会場の皆様と共に考えたい。

□報告2【ホームにおける応答】
「応答するエスノグラフィ:植民・戦争・統治から開発・ビジネス・デザインへ」
飯嶋秀治(「応答の人類学」世話人/九州大学)

近代人類学者がホームに戻ると、まずとりかかるのがパトロンへの成果報告であり、物としての博覧会・博物館での異界展示、書き物としてのエスノグラフィ作成であった。なかでもエスノグラフィ(民族誌)はこの100年の間に文化人類学が異文化を表象する手法として大きな変貌を遂げてきた。「未だ開かず(未開)」のフィールドを描く手法として発達したエスノグラフィが、大きな批判にさらされながら、いかにして「未来を開く(もうひとつの未開の)」エスノグラフィとなったのか。本発表では、応答の人類学の6年間と自らの実践を振り返り、その試みをホームでの応答の歴史に位置づける。

□報告3【エデュケーションにおける応答】
「人種主義との格闘を通して:中等教育、大学教育、一般社会啓発における人類学の役割」
亀井伸孝(「応答の人類学」代表世話人/愛知県立大学)

本懇談会が活動した6か年とは、世界各地で排外主義的な言説が吹き荒れた時期とも重なった。ことばの暴力は、インターネット上を駆けめぐったのみならず、人びとの行動を左右して、街頭におけるヘイトスピーチ/ヘイトクライムの出現を招いたり、排外主義的な政治勢力の台頭を見たりもしている。本報告では、この数年における、SNSやウェブメディア、集会などを通じた反人種主義の取り組み、日本学術会議での高校新科目をめぐる議論、人種をめぐる博物館展示の調査などの事例を通じ、教育・啓発の場面において人類学こそが果たしうる役割を展望したい。

□提言【応答性と社会連携】
「エスノグラフィ・インク:文化人類学と社会をつなぐ新たな組織的実践」
内藤直樹(徳島大学)

本発表の目的は、文化人類学的な知が活用される社会的文脈の中で、その知のあり方を鍛える可能性について考えることにある。社会からの「呼びかけ」の少なさを嘆く文化人類学者を置き去りにして、近年はビジネス、デザイン、まちづくり等の文脈でエスノグラフィが活用されている。本発表ではそうした日本における「人類学者不在のエスノグラフィの隆盛」という事態(伊藤 2013, 2015)を、むしろ公共人類学的な関心の沃野を広げるための好機として捉えなおす。そのために発表者の徳島県における行政や企業との連携事例を紹介しながら、そこで文化人類学的な知が持つどのような特徴がウケているのか/いないのかについて検討する。その上で文化人類学的な知に対する社会的要請の発見、発掘および応答方法を模索する組織的・実践的な活動の可能性を提案する。

■問い合わせ・連絡先
日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」事務局
outou.office[a]gmail.com
http://www2.lit.kyushu-u.ac.jp/~com_reli/jasca_outou/


【報告】応答の人類学第34回研究会
共催:JAISTイノベーションデザインセミナー
http://www.jaist.ac.jp/innovation_design/activity/seminar/2017/180327notice.html

「ビジネス人類学の実践と理論:組織文化とその変革のために」

以下の通り公開研究会を開催しました。

日時:2018年3月27日(火)19:30~21:30 (開場は19:30)
場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)東京サテライト
〒108-6019 港区港南2-15-1 品川インターシティA棟19F
https://www.jaist.ac.jp/satellite/sate/access/
参加人数:47人

講演者:Dr. Elizabeth K. Briody (Cultural Keys LLC)
題目:Identifying Solutions for Organizational-Culture and Change Issues: Lessons from a Business Anthropologist

コメンテータ:久保隅綾(GOB Incubation Partners株式会社 Co-Founder)
コメンテータ:比嘉夏子(京都大学大学院人間・環境学研究科研究員)
コメンテータ:大戸(水元)朋子(KDDI総合研究所研究員)

コーディネータ・司会:伊藤泰信 (JAIST知識マネジメント領域准教授)
通訳:    エリック・ベイリー(JAIST博士前期課程)

参加費:無料(事前申し込み不要)

■プログラム
19:30 開講あいさつ・趣旨説明(伊藤泰信)
19:40 講演(Dr. Elizabeth K. Briody)
「Identifying Solutions for Organizational-Culture and Change Issues: Lessons from a Business Anthropologist」
(休憩)
20:40 コメント(久保隅 綾)
20:50 コメント(比嘉 夏子)
21:00 コメント(大戸(水元) 朋子)
21:10 聴講者を交えたフリーディスカッション
21:30 終了
(時間は若干前後することがありますことをご了承ください。)

■要旨
Business success depends critically on effective collaborations within organizations. These interactions involve people with different viewpoints, work practices, roles, and backgrounds, sometimes creating barriers within an organization’s culture. Briody has a unique perspective on organizational culture; for 24 years, she was a research anthropologist at General Motors, one of the world’s largest and most complex companies. Over the last decade, she has studied complex organizations in health care, consumer goods, petrochemicals, and other industries. In this presentation, she will discuss lessons regarding blaming behavior, decision making, and patient care. Asking study participants to imagine an ideal future offers insights into workable solutions for businesses. She will also discuss the unique value that anthropologists and their tools bring to businesses and other organizations.

■略歴
□ Elizabeth K. Briody
Elizabeth K. Briody, Ph.D., has been involved in cultural-change efforts for over 30 years. She is founder and principal of Cultural Keys LLC, helping organizations transform their culture. She worked over two decades at General Motors R&D, most recently as Technical Fellow. Recent clients are in petrochemicals, aerospace, health care, consumer products, and service industries. Recent books include Cultural Change from a Business Anthropology Perspective, The Cultural Dimension of Global Business (8th ed.), and the award-winning Transforming Culture.

□ 久保隅 綾(くぼすみ あや)
精密機器メーカーR&D部門研究所にて、生活者調査、ライフスタイル・ワークスタイル研究に従事した後、大阪ガス行動観察研究所にて、行動観察やフィールドワークをベースとした調査研究、サービス現場の改善や製品サービスの機会領域発見、コンセプトデザイン作りなどに従事。2014年よりGOB Incubation Partnersを立ち上げ、新規事業開発や商品開発のコンサルティング、リサーチ業務、イノベーションやリーダーシップ教育研修などに従事。他者理解と自己内省を通じて、個人や組織の機会や可能性を開発することを探求。

□ 比嘉夏子(ひが なつこ)
京都大学大学院人間・環境学研究科研究員。文化人類学者、エスノグラファー。オセアニア島嶼をフィールドとして人間の行動や価値観を研究してきた傍らで、広くデザインやリサーチなどの業界にも関わりつつ、人間理解を深める手法を探究中。博士(人間・環境学)。2018年4月よりJAIST知識マネジメント領域に助教として着任予定。

□ 大戸(水元)朋子(おおと(みずもと) ともこ)
2007年に北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)博士前期課程入学し、伊藤泰信准教授の下で文化人類学を学ぶ。腐女子と呼ばれる女性グループに対する調査を約10年実施し、2017年博士号(知識科学)取得。2015年KDDI研究所(現KDDI総合研究所)に入社以来、文化人類学的エスノグラフィを用いて顧客理解、コミュニティの帰属心形成に関する研究に従事。

□ 伊藤 泰信(いとう やすのぶ)
JAIST 知識マネジメント領域 准教授


【報告】応答の人類学第33回研究会兼科研「応答の人類学:フィールド、ホーム、エデュケーションにおける学理と技法の探求」(基盤A) 第7回研究会

以下の通り、科研メンバー間で非公開研究会を開催しました。

日時:2018年1月28日(日)13:00~29日(月)12:00頃
場所:北陸先端科学技術大学院大学(JAIST)
参加人数:7名
報告者:
1. 清水展「はじめに」
2. 香月洋一郎、山本紀夫、赤嶺淳、飯嶋秀治、伊藤泰信各位からの発表
3. 質疑と全体討論


【報告】応答の人類学第32回研究会兼科研「応答の人類学:フィールド、ホーム、エデュケーションにおける学理と技法の探求」(基盤A) 第6回研究会

以下の通り、科研メンバー間で非公開研究会を開催しました。

日時:2017年10月1日(日)13:30~17:30頃
場所:京都大学 稲盛財団記念館3階 小会議室 I
参加人数:8名
報告者:
1. 清水展「応答の人類学の初心と構想」
2. 小國和子「応答のフィールドワーク」企画構想
3. メンバー各位からの話題提供
質疑と全体討論


【報告】応答の人類学第31回研究会を開催しました。【日本文化人類学会課題研究懇談会「医療人類学教育の検討」との共催】

日時:2017年5月26日(金)19:00~21:15
場所:関西大学梅田キャンパス 701号室
テーマ 「医療者向け人類学教育の課題──医学教育のニーズへ応答するために」
参加人数:25人

プログラム:
19:00-19:10 趣旨説明 伊藤泰信(医療、応答)
19:10-19:40 話題提供 星野 晋(医療)
19:40-20:10 話題提供 飯田淳子(医療)
20:10-20:15 コメント1 錦織 宏(医療)
20:25-20:30 コメント2 飯嶋秀治(応答)
20:30-20:35 コメント3 小國和子(応答)
20:35-21:15 自由討議

「人類学が医師養成に関わるその先にどのような医師像を見いだすか」
星野 晋(山口大学)
報告者は、これまで医学部における教育実践および医学教育学会における委員会活動を通して、医学教育における社会科学系教育のカリキュラム設計や授業設計の方向性について検討を重ねてきた。本報告では、その経験を踏まえて、医学教育モデル・コア・カリキュラムに医療人類学の項目が加わったことの意味とそれに対して人類学はどう応えるべきかについて議論したい。
医学教育で我々に求められているのは、医療人類学という「学問」を教えることではない。医学教育には、社会で通用する良き医師を育てるという明確な目的があり、その目的に向かって一貫した学修プログラムが構成されている。その最低限学ぶべきリストであるコア・カリキュラムに加えられたということは、少なくとも医学教育の枠組み内においては人類学もその目的を共有し、これを達成する教育プロセスの一部となることが求められていることを意味する。またそこには同時に、従来の医学教育では欠けていた何かを補うことへの期待がある。とすれば、人類学がこれに応えるためには、まず良き医師とはどのような存在か、良き医師になるためにはどのような能力が求められているか、その能力をどのようなプロセスを経て修得するよう学修プログラムが構成されているかを吟味し、その上で、人類学が提供しうる能力を見定め、適切にカリキュラムや授業を設計する必要がある。

「医学教育モデル・コア・カリキュラム改訂に至る経緯とこれから」
飯田淳子(川崎医療福祉大学)
2017年3月末日に公開された「医学教育モデル・コア・カリキュラム」平成28年度改訂版(以下、コア・カリキュラム)には、日本の医学教育史上初めて、文化人類学(特に医療人類学)(および社会学(特に医療社会学))の項目が入った。現在、全国には82の医科大学・医学部があり、大学に勤務する文化人類学者は、医療人類学を専門領域とするか否かにかかわらず、上記のコア・カリキュラム改訂に基づいて、今後学内あるいは近隣の大学医学部から医療者向けの文化人類学教育を依頼される可能性が高まっている。
本報告では、今回のコア・カリキュラム改訂に至った経緯、新コア・カリキュラムにおける人類学に関わる項目の内容について説明する。また、報告者がこれまでおこなってきた医師・医学教育研究者との協働、およびそれに基づいた医療者向け人類学教育の検討について報告する。それらをふまえ、今後、上記のコア・カリキュラム改訂に人類学(者)がいかに応答していくべきか、それにはどのような準備が必要かを論じる。