近代国家生成史研究会とは?

近代国家研究会は、1999年4月に、福岡近辺に在住する西洋前近代史研究者の学問的交流の活発化を目指して発足しました。
 発起人は、藤井美男(九大経済学部)、花田洋一郎(西南学院大学経済学部)、中堀博司(九大人文科学研究科院生・当時)、小山啓子(九大比較社会文化研究科院生・当時)の諸氏に、連絡係をつとめる岡崎(九大文学部)でした。

 研究会では、さまざまな研究報告会を開催するとともに、当初の共同作業として、当時ヨーロッパ財団支援の共同研究として組織されていた、「近代国家の形成」プロジェクトのフォローを掲げました。
 このテーマを選択したのは、発展段階論を初めとする大理論の図式の適用に過度に傾斜する一方、「国家」現象を王権や領邦などの領域的権力主体と同一視しがちな日本の学界のあり方を相対するための、多くの新しい問題関心を含んでいるようにみえたからです。たとえば、以下の諸点があげられます。

 1。諸権力のからみ合いや実践の蓄積を、社会制度・ルールとみなすような発想(社会的合意形成)。都市・農村関係や紛争解決等の問題関心に近いものがあります。
 2。「国家の形成」を実体ではなく、さまざまな「場で」働く社会権力関係の凝集力の強化とみなす発想(権力関係の凋密化)。「場」も都市、特権層集団、知識人・学問世界など多様で、また、王権と都市、貴族などの「関係」自体が焦点となります。
 3。新しい歴史学方法論の実験場の観を呈していること。プロソポグラフィーやイコノロジー研究はもちろん、社会学、文化人類学の影響も感じられます。

 以上の共同作業の成果は、参加した研究者がそれぞれの個別研究のなかで結実させました。

 その後も、2003-2005年度には、科研「西欧中・近世における国家の統治構造と機能」(代表者・神寳秀夫)と一部連携したほか、個別の研究報告会を開催し続けています。

 近代国家研究会は、誰にでも開かれた勉強の場です。関心をお持ちの方は、お気軽にご参加ください。

(文責・岡崎敦)