文学部
哲学コース
倫理学 専攻
専門科目 (2単位)
日本倫理思想演習 I
講義題目:近世日本倫理思想史の諸問題
准教授宮島 磨
前期・通常

月曜5限
授業の概要  本居宣長の研究
 近世日本の国学運動を代表する本居宣長の思想を扱う。宣長の思想は大きくは、「もののあはれ」論に結晶する前期の歌論・物語論と、『古事記伝』へとまとめ上げられるに至る後期の“生き方論”(神道論)とに分かたれるが、両者は“もののあはれ”から”真心“へという流れにおいて一貫性をもってもいる。こうした思想潮流は、もとより思想史的には、儒学の「理」、あるいは武士道における「自敬」、「矜恃」といった人間像に対するものであるが、同時に、人間理解、あるいは世界理解という準位において、いまなお倫理学として問われるべき内容を豊かにはらんでもいる。本講義では、受講者自らが直に宣長のテキストに取り組むことによって、彼の思想の奥深さを垣間見てもらえればと思う。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
(1)国学という思想運動が近世日本倫理思想史においてどのような役割をになったのかを、宣長前期の歌論・物語論から後期の生き方論を通して考えてみたい。
(2)本居宣長における人間理解のありよう、とりわけ「もののあはれ」から「真心」論へと至る存在了解の倫理学的な意味を考察する

(2) 個別の学習目標:
@ひとにとって「もののあはれ」にとらえられるとはどのような事態なのか、Aその際、どうして歌が詠み出される必要があるのか、B詠み出される歌がしかるべき様式をそなえた“巧い歌”でなければならないのはなぜか、C巧い歌を詠もうと心を砕くことは“実情”に背く行為ではないか、Dこうした「もののあはれ」論が、後期宣長において生き方論としての「真心」論へと結晶していった理路はいかなるものか等々、宣長思想の核心について考えてみたい。
授業の進め方 学生による発表・論議形式。
教科書等 <教科書>
未定。

<参考図書>
日本倫理思想史全体にかかわる文献集としては相良亨編『日本思想史入門』(ぺりかん社)。そもそも日本倫理思想史がどのような学問であるかを確認し、テキストをどのように相手取るのか、その手つきを学ぶには、佐藤正英著『日本倫理思想史入門』(東大出版会)。
演習のテーマに直接かかわるものは、相良亨『本居宣長』(東京大学出版会)
相良亨著作集4『死生観 国学』(ぺりかん社)
成績評価方法 発表内容および期末レポートによる総合評価。
学習相談 随時;要予約
その他 「死を悲しむべきこととはっきり捉えた」唯一の思想家という評価(相良亨氏)の意味をしみじみとうけとめてほしい。

対象学年:2年生以上
履修条件:特になし。