文学部
哲学コース
インド哲学史 専攻
専門科目 (2単位)
仏教学演習 I
講義題目:仏伝文学と大乗仏教
鹿児島国際大学大学院 教授外薗 幸一
前期・集中

授業の概要  仏陀釋尊の伝記文学としての「仏伝文学」は、人間としてのゴータマ・シッダールタが現世において悟りを得て仏陀となったこと(成仏)の因由を多面的な視点から考察する文献群である。そのなかには、現世での釋尊の言行に焦点をあてるもの、前世での精進努力に注目するもの、自利的修行よりも利他的修行を重視するもの、仏陀の永遠性に着目して釋尊から人間的具象性を剥奪しようとするものなど、多種多様な文献が含まれている。これらの仏伝文献を思想的に分析すると、その中には大乗仏教の核心となった諸種の思想の起源を見いだすことができる。
 本講義においては、以上のような観点から、仏伝文学と大乗仏教との思想的連関を考察の中核におきながら、菩薩、六波羅蜜、十地、授記、誓願、廻向、方便などの思想を取りあげる。それら、大乗仏教の核心的思想が、仏伝文学のなかにどのような経緯で胚胎し、展開し、大乗の中核的思想へと発展していったのか、ということについて学習する。
 なお、大乗仏伝経典ラリタヴィスタラについての文献学的考察をも講義のなかに取り入れる。特に、その第18章についてレフマン編の既刊テキストを対照しながら、逐語的に原文の批判的校訂の作業を行なう。
学習目標 仏伝文学についての概要と、その歴史的な位置づけについて把握する。そのなかに含まれる、「仏陀観の展開過程」に隠された仏教自身の思想的変遷について理解する。大乗仏教を思想的に把握するうえで仏伝文学が占める位置の重要性を認識する。
(1) 全般的な教育目標:
大乗仏教とはどのような特質を持つ仏教であり、それが発生してきた経過の思想的展開はどのようなものであったかを全般的に考察し、理解する。

(2) 個別の学習目標:
大乗仏伝経典ラリタヴィスタラの原文校訂の方法や和訳の仕方、それらの作業にともなう問題点などについて、教員と学生とが共同学習しながら、考察を深める。
授業の進め方 講義のための自製テキストを用意します。そのテキストを講読しながら、質問や対話をまじえ、理解度を確かめながら授業を進めます。テキストの朗読は基本的に受講学生にしていただきます。
教科書等 教科書はありません。
<参考図書>
外薗幸一『ラリタヴィスタラの研究 上巻』(大唐出版社、平成6年)
成績評価方法 出席点50%、レポート提出40%、平常点10%で成績評価をします。
学習相談 集中講義ですので、講義期間の毎日の終わりの時間を活用して、学習相談に応じます。
その他 集中講義日程(予定)は8月2日(火)から5日(金)です。

教職(社会)(公民)