文学部
歴史学コース
東洋史学 専攻
専門科目 (2単位)
東洋史学講義 XIII
講義題目:漢朝の国家構造に関する諸問題
中央大学文学部 教授阿部 幸信
後期・集中

授業の概要 〔内容〕
 前漢末に確立された新秩序のありようを再検討し、その歴史的意義と世界史的背景について論ずる。
 前漢の武帝の時代、黄河流域と長江流域を覆う巨大な政治的単位が成立した。以後、この広大な空間を安定的に支配するための諸制度が模索され、前漢末に至って、新しい秩序が誕生することになる。この新秩序がもつ諸特質について、社会史・思想史・文化史的観点から多角的に追究し、あわせて、漢朝が後世に与えた影響にも言及する。
 漢朝による大規模な長期安定支配を可能とした諸条件は、「中国」の内部に求められることが通例であるが、本講義ではアフロ=ユーラシア史全体の動きにいっそう注目し、アフロ=ユーラシアと東部ユーラシアとの相互関係のなかで、漢代史の展開をグローカルな視点から捉え直すことを試みたい。
〔講義計画〕
1.ガイダンス
2.紀元前3世紀〜紀元2世紀の世界史の動向
3.漢武帝による「海内一統」
4.漢朝の「グランドデザイン」
5.成帝綏和元年改革総論
6.漢代の綬制
7.綏和元年綬制改革の理念的背景
8.官僚制度上における周制の機能
9.「無印の官」と印の賜与基準
10.綬の儀礼上の機能と「擬制的封建」の構造
11.漢王朝の「内臣―外臣構造」
12.漢朝の自己意識形成と対匈奴意識
13.追憶される漢朝
14.総括
15.筆記試験
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
 漢代の政治・社会・文化についての理解を深めながら、アフロ=ユーラシア史上においてひとつの特徴ある時代であった紀元前3世紀〜紀元2世紀の状況を、東部ユーラシアの具体的実情をとおして把握する。

(2) 個別の学習目標:
1.紀元前3世紀〜紀元2世紀の世界史の全体的な動向の中で、漢朝の果たした役割を説明できる。
2.前漢末の新秩序が、漢代史の流れの中で占めた意義を説明できる。
3.前漢末における漢朝の国家構造の特徴を、具体例を挙げながら説明できる。
授業の進め方  講義形式で行われる。出席をとることはしないが、積極的参加を期待する。
 授業中に随時、関連史料を参照するので、漢文力に自信のない者は、漢和辞典(電子辞書可)を持参するとよい。
教科書等 <教科書>
 指定しない。関連史料は、集中講義初日の冒頭で配付する。

<参考図書>
 漢代史の通説的理解については、一般向けの概説書を参照しておくとよい。下記は一例である。
・西嶋定生『秦漢帝国―中国古代帝国の興亡』(講談社学術文庫、1997年、ISBN:978-4-061-59273-5)
成績評価方法  最終時間に実施する筆記試験により、学習目標の達成度を判断し、評価する。
 出席点は加味しない。
 
学習相談  講義内容に関する質問については、随時受け付ける。授業中に質問する場合は、挙手のうえ、発言の許可を求めること。
 それ以外の質問・相談で、本シラバスをみても明らかでないものについては、電子メールにて受け付ける。
  yukiabe〔@〕tamacc.chuo-u.ac.jp(入力時には〔@〕を@に置き換えること)
その他  12月中の開講を予定している。

対象学年: 制限しない。
履修条件: とくに設けないが、下記の2点を満たしていれば、講義内容に対する理解をさらに深めることができる。
(1)漢代史の流れについての通説的理解に対して、基本的な知識を有すること。
(2)訓点のない初歩的な漢文を、辞書を引きながら訓読できる程度の、漢文読解力があること。