文学部
歴史学コース
西洋史学 専攻
専門科目 (2単位)
ヨーロッパ史講義 II
講義題目:ヨーロッパ近現代の社会と国家
下関市立大学経済学部教授高田 実
後期・通常

金曜2限
授業の概要 ヨーロッパ近現代の社会と国家の特徴について、社会史の視点から考察します。その際、比較の座標軸としてイギリスを設定します。
具体的には、次の5点を課題とします。
1)ヨーロッパ近代社会はどのようにして形成されたのか、市民革命と産業革命に焦点を当てて検討します。
2)ヨーロッパ近代社会の特徴はどこにあるのか、主に、結社(association)のあり方に焦点を当てて検討します。
3)ヨーロッパ近代における社会と国家の関係はどのようなものであったのか、主に19世紀後半に焦点を当てて検討します。
4)ヨーロッパにおける近代から現代への移行について、第一次世界大戦を中心にして検討します。
5)ヨーロッパ社会の現代化の起点となる大戦間期における、社会と国家の再編過程を検討します。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
ヨーロッパの近現代社会の特徴を、日本の近現代史を意識しつつ、理解してほしい。

(2) 個別の学習目標:
1)「近代」とは何かを再検討してほしい。一般に「近代」のイメージは「進んだヨーロッパの近代」と直結して理解されがちであるが、それが歴史的な構築物であることを理解してほしい。とくに、日本人にとって、「ヨーロッパ近代」とはどのような意味をもってきたのか、また現在どのような意味をもっているかをしっかりと理解してほしい。
2)近代において社会と国家は分離しているものと理解されてきたが、歴史の実態から検討するとそうしたイメージが誤っていることに気づく。社会と国家の結びつき方の各国別の形態に注目してほしい。
3)第一次大戦後、ヨーロッパ社会が「現代化」するが、この現代化の中身について、今日的な視点から再検討してほしい。キーワードは、「総力戦体制」である。
4)歴史における連続性と断続性について、自分なりにイメージを作ってほしい。歴史は積み木を重ねたように、断続しているわけではないこと、重層的な時間の層のなかで、一つの社会が構築されていくことを理解してほしい。
5)自分の言葉で、歴史を語る力をつけてほしい。特に、この科目が教職科目としての性格を持っていることを考えると、この科目の学習を通して、将来の教師を目指す人びとが、自らの言葉で歴史を語る力をつけることが不可欠である。教師になるものがそのような力をつけるkとなしに、生徒の歴史認識と歴史意識を作る仕事に携わることはできないであろう。
授業の進め方 受講人数も関係するが、それほど受講者が多くなければ、講義とグループ発表を合わせた形で授業を進めたい。受講者が多すぎる場合は、講義形式とする。

第1回 はじめに:講義の課題と方法の説明、歴史を学ぶ意味について
第2回〜第4回 近代ヨーロッパの形成(市民革命と産業革命)
第5回〜第6回 近代ヨーロッパの市民社会
第7回〜第8回 近代ヨーロッパの社会と国家
第9回〜第11回 現代化の起点:20世紀への転換期(帝国主義、国家福祉、第一次大戦、民主化)
第12回〜第14回 大戦間期と現代社会(総力戦体制の形成と大衆社会)
第15回 講義のまとめ
教科書等 テーマごとに参考文献表を提示する。
<教科書>
特に使用しない。

<参考図書>
1)遅塚忠躬『史学概論』(東大出版会、2010年)
2)福井憲彦『近代ヨーロッパの覇権』(講談社、2008年)
3)柴田三千男『近代世界と民衆運動』(岩波書店、)
4)シュテファン=ルードヴィヒ・ホフマン(山本秀行訳)『市民結社と民主主義1750〜1914』(岩波書店、2009年)
成績評価方法 1)3分の2以上の出席がなければ、試験を受験する資格を認めない。
2)成績は、定期試験(持ち込み不可)(50%)とグループ発表(資料とレポート)(50%)で評価する。
3)自主的な努力は追加加点する。
学習相談 1)毎回の講義後に質問や相談を受けます。
2)メールを通じて、学習相談を受け付けます。m-takada@shimonoseki-cu.ac.jp にメールをください。
その他 教職(社会)(地理歴史)