文学部
歴史学コース
西洋史学 専攻
専門科目 (2単位)
広域文明史学演習 IV
講義題目:西洋古代の経済をめぐる近年の論争
別府大学文学部准教授池口 守
後期・通常

金曜5限
授業の概要  M. I. フィンリーが1973年に発表した The Ancient Economy は西洋古代経済史の分水嶺となった。古代の経済を近代の経済に比肩しうるものと捉える M. ロストフツェフらの「モダニズム」を徹底的に批判し,古代の経済を近代のそれとは「質的に違う」ものとして認識するフィンリーを中心に,その後「プリミティヴィズム」が長く学界を支配してきた。ところが近年,実証・理論の両面からフィンリー説への批判が展開され,さらにこれへの再反論がフィンリーなき後のプリミティヴィスト側から挙がり,加えて一部の経済学者がこの論争に関心を寄せるなどして一大論争へと発展している。暫く低調期の続いた古代経済史研究が近年再び活況を呈してきたのは,この動向に刺激された部分が大きい。本演習では The Ancient Economy を中心に,この論争に関連する特に重要な文献を講読し,論文執筆のためのトレーニングを実践する。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
論文執筆のためのトレーニングとして,外国語文献(英語)を正確に読み,著者の論理や関連情報を抽出・記録・活用して自らのアイディアを練り上げていく技術を獲得させること。

(2) 個別の学習目標:
毎週,課題として決められた文献を読み,要旨・重要事項・自らのアイディアを適宜記録していくこと。また,学期末にはこれらをまとめてレポートに仕上げること。
授業の進め方 基本的に輪読形式とするが,(i) 文章を和訳するだけでなく,(ii) 論文全体の趣旨,(iii) 段落ごとの要旨,(iv) 学生各自の発想や批評等を適宜求めていく。西洋古代史の基本事項や論争の背景については適宜解説するが,伊藤貞夫・本村凌二編『西洋古代史研究入門』(東京大学出版会, 1997年)のギリシアの経済 (pp.46-58) とローマの経済 (pp.169-183) の解説には目を通しておいて戴きたい。
教科書等 <教科書>
M. I. Finley, The Ancient Economy, California, 1973 (Updated Edition, 1999).
その他の関連文献は授業中に指示する。

<参考図書>
伊藤貞夫・本村凌二編『西洋古代史研究入門』(東京大学出版会, 1997年)
成績評価方法 授業中の評価50%,レポート50%。なお,正当な理由のない欠席や遅刻は減点対象とする。
学習相談 授業の前後以外は主にEメールを活用して相談に応ずる。
その他 対象学年:3年生 4年生
履修条件:西洋古代史の予備知識を必須としないが,下記の「学習目標」を念頭に積極的に取り組む学生を歓迎する。