文学部
文学コース
中国文学 専攻
専門科目 (2単位)
中国文学講義 V
講義題目:旧抄本唐詩集研究T
准教授静永 健
前期・通常

月曜2限
授業の概要 日本の平安から鎌倉時代にかけて筆写された漢籍類を総称して「旧抄本」と言います。その中には、現在の中国には伝わっていない詩歌や、古いバージョンのテキストが残っており、中国文学において大変貴重な資料となっているものが数多くあります。また、日本の学術史においても、中世の知識人たちの文化や教養のありようを探る上で、極めて重要な資料となっています。しかし、その研究はまだ十分には確立されていません。古代中国文学と日本文学との「はざま」にあるこれらの資料について、幾つかを紹介しつつ、その書影を実際に読んでゆきます。
なお、かなり「難解」な古文献を読み解くので、中国文学のみならず、東アジア全体の文化・芸術に対する予備知識が必要になる。その点は、あらかじめご諒解ください。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
中国の古代および中世の文学に親しみ、その書物の成り立ちを知る。

(2) 個別の学習目標:
古典漢文を東アジアの広い視点で考え直してみよう。
授業の進め方 第一回(4/11):@「旧抄本」とは何か。A文学の国境を超える話(7・8世紀の唐と日本)B万葉集はなぜ雄略天皇御製歌から始まるのか。C額田王歌と張華「情歌」。D中臣宅守歌の主人公。E大伴坂上郎女歌と「漢文」。F紀友則歌の「しづ心なく」と唐詩の「無情(無常)」G中間レポート課題(5/17締切)【下欄参照!】
第二回(4/18):@七世紀〜八世紀の中国・朝鮮・日本。A四書五経とは何か?B万葉集と詩経(后妃を祝う。宴席の鹿鳴。国見と天香具山。)C登鸛雀楼詩の視野。D羽衣伝説と稲作文化。
第三回(4/25):@古代日本と中国の暦(太陰太陽暦)のしくみ。A暦の知識と政治の関係。B暦(=統治)と文学の関係。C藤原公任(966-1041)『和漢朗詠集』について。D和漢朗詠集・古今和歌集の巻頭和歌二首(在原元方・紀貫之)について。E大江維時(888〜963)撰『千載佳句』について。
第四回(5/09):@中国の王朝(秦から清まで)A古典のテキスト(版本)について。B戦争・災害と古典の新テキスト……バージョン・ダウンしてゆく本文の話。C和漢朗詠集・千載佳句巻頭の白楽天詩(府西池)について。
第五回(5/23):@千載佳句にはどんな詩句が収められているのか。A任氏伝と白居易。B幻の名作「任氏行」。C光り輝く女性(かぐや姫・任氏・王昭君)
第六回(5/30):@漢字の同訓異義字の使い分け。A王昭君伝説とその文学作品群。『楽府詩集』所収作品から。B李白「王昭君」詩について。
第七回(6/06):@「残」字の諸相。A「残鶯」/白居易「除蘇州刺史別洛城東花」詩の例から。Bむごい「忍」/杜甫「茅屋為秋風所破歌」から。C白居易「王昭君」詩について。D千載佳句所収の「王昭君」詩句について。
第八回(6/13):★『竹取物語』論を開始しました。@小アンケート「かぐや姫はなぜ月に帰ったのか?その理由は?」A五人の貴公子の求婚とその拒絶、そして五行思想との連環。B月を見るは忌む…その理由の二説。C『白氏文集』贈内詩の誤読。D中国に月を見る忌避は無いこと。
第九回(6/20):@訓点(ヲコト点)の読み方。A白楽天の長女の夭折をめぐる詩歌。B幼い我が児(娘)への鎮魂の文学:『竹取物語』『土佐日記』
第十回(7/11):@ふたたび竹取物語「月の顔見るは忌むこと」考。A中国伝統思想の中での「人間の一生」:『論語』為政篇(吾十有五而…)と『礼記』曲礼篇の年齢感。B「七五三」の起源と幼児の生育率。C夭折した我が子を嘆く父親:『世説新語』傷逝篇。D白居易の「不能忘情」詩歌群。E白居易「簡簡吟」。
以上。今学期の講義は終了しました。受講生諸君に感謝します。
★毎時間の講義内容を授業進度に従って更新します。
教科書等 <教科書>
コピーで配布する。

<参考図書>
静永健『漢籍伝来:白楽天の詩歌と日本』(勉誠出版、2010年)
成績評価方法 毎回出席を取ります(40%)。また、5月と学期末の二回、レポートを提出してもらいます(60%)。5月のレポートを提出しなかった者は、その時点で自動的に期末レポートの提出資格を失います。
★第一レポート要領/【タイトル】「任氏伝」の主題について 【要領】*沈既済「任氏伝」を読み、作者が「作品の主題」として最も文才を傾注したと思われる名場面を三つ例示しながら、この唐代の伝奇小説が、読者に何を訴えようとしているのかを自分なりに答えよ。【規格】:原稿用紙に必ず手書きすること。(用紙の大きさは自由)*パソコン等による印刷作成されたものは評価を「0点」とする。【字数】おおよそ一二〇〇字以上(四百字詰め用紙三枚以上)。【提出先】:学生第一係【締切】:五月十七日(火)午後五時
*表現上における要望:@「私(筆者)は…」を主語とする文章を使わぬこと。/A厳密に文字数を数え上げ、文末に明記しないこと。/*参考文献(日本語訳本):前野直彬『唐代伝奇集』(一九六三年、平凡社[東洋文庫])/今村与志雄『唐宋伝奇集』(一九八八年、岩波文庫)/内田泉之助『唐代伝奇』(二〇〇二年、新書漢文大系)/黒田真美子『中国古典小説選5』(二〇〇六年、明治書院)/*郵送も認める。その場合は「九州大学文学部静永」宛とし締切日必着とする。
★期末レポート要領/【タイトル等】愛娘の死を悼む白居易の詩歌について。字数2000字以上。縦書き原稿用紙に手書きであること。(パソコン入力+印刷のものは受け取らない)。/文中、主語に「私は」を用いず、自分以外の客観的事物とすること。/要件:白居易詩の最も胸を打つフレーズ(詩句)を三つ以上挙げて、文中に挿入し、論述を進めること。参考図書は上記↑第二部「かぐや姫のくにへ」/  【締切日・提出先】八月二十六日(金)午後三時まで。学生第一係のレポート提出函へ。 / *郵送も認める。その場合は「九州大学文学部静永」宛とし締切日必着とする。
学習相談 オフィスアワーは金13:00〜14:00。また毎時講義終了後、文学部棟一階中国文学研究室にて憩う。相談のある者はお立ち寄り下さい。メールも可。shizuka@lit.kyushu-u.ac.jp
その他 4月11日の第一回開講日におおよその座席を決めますので、当日欠席の者は、聴講届を誰かに託すか、あるいは4月15日午後5時までにshizuka@lit.kyushu-u.ac.jpにメールで受講希望を伝えてください(氏名、所属講座、学年、学籍番号を伝達してください)。なお、後日の受講の取消しは、構いません。

対象学年:2年生・3年生・4年生
履修条件:漢語の基礎的な知識を要する。
教職(国語)