文学部 文学コース 独文学 専攻 専門科目 (2単位) |
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前期・通常 木曜2限 |
授業の概要 | 2009年12月にノーベル文学賞を受賞したヘルタ・ミュラーは言う、「多くの人にとって私の本は証言です。しかし私は書いている自分が証言者であると感ずることはありません。私が書くことを学んだのは沈黙からです。そこから書くことが始まりました」と。総じて優れた現代ドイツ文学は、矛盾を意図して犯す。言語ならざる「沈黙」に言葉を与えようとするのだ。 ドイツ語圏の文学では、言語批判的な意識が先鋭化した19世紀末以降、文学の表現媒質としての言語の原理的機能不全性、つまり「言語の否定性」が強く意識される。こうした傾向はニーチェ、マウトナー、ベンヤミンを経て自覚化され、また、主としてホーフマンスタール、ムージル、カフカによって問題意識が高められた。いわゆる「否定性の文学」は、トーマス・マンの「自己イロニー」やインゲボルク・バッハマンによる「新しい言語の模索」などの更なる展開を経て、ヘルタ・ミュラー文学における「沈黙」へと至る。現代ドイツ文学は、「言語の否定性」から饒舌な詩的「沈黙」へと向かう。 本講義では、本講義は、以上の展開を分かりやく繙きながら、「沈黙の詩学」を新たに打ち立てたい。 |
学習目標 | (1) 全般的な教育目標: 講義を通じて、みずからの思索をみずからの言葉で論述できるようにする。 (2) 個別の学習目標: ドイツ文学に関する知見を深める。 |
授業の進め方 | 以下の順番で講義を行う予定である。括弧内に使用テキストを示す。 (1) 導入 (2) Fr. シュレーゲル、ノヴァーリス(プリント配布) (3) ヘルダーリン(プリント配布) (4) アイヒェンドルフ(プリント配布) (5) シュトルム(『シュトルム選集』、伊藤武雄訳、清和書院) (6) 補論:アンデルセン(『完訳アンデルセン童話集1』、大畑末吉訳、岩波文庫) (7) ホーフマンスタール1(『チャンドス卿の手紙 他十篇』、桧山哲彦訳、岩波文庫) (8) ホーフマンスタール2 (9) リルケ(プリント配布) (10) バッハマン(プリント配布) (11) ツェラーン(プリント配布) (12) ヘルタ・ミュラー1(『狙われたキツネ』、山本浩司訳、三修社) (13) ヘルタ・ミュラー2 (14) 総括1 (15) 総括2 |
教科書等 | <教科書> 特になし。 <参考図書> 授業中に指示する。 |
成績評価方法 | 平常点50%、レポート50%(但し、レポートの執筆要領ならびに採点基準を授業中に数回にわけて説明するので、必ず遵守すること) |
学習相談 | 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(木曜4限)にて相談に応じる。 |
その他 | 教職(ドイツ語) |