文学部 文学コース 独文学 専攻 専門科目 (2単位) |
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後期・通常 木曜2限 |
授業の概要 | 我々の身の回り、とりわけ大学の世界には、「オタク」が少なくない。20世紀から21世紀にかけて、日本のみならず、世界的に急増した新たな人間像である。もっとも、既に19世紀から20世紀にかけて、「新しい人間」像が問題になっていた。専門的な知識や技能を有しながら、専門家とは一線を画す好事家や趣味人、すなわち「ディレッタント」である。イタリア語の語源 dilettare に相応しく、まさに「享受する」人の出現であった。 「ディレッタンティズム」は、「デカダンス」とともに、19世紀後半から20世紀初頭にかけての重要な概念であり、同時に精神的傾向でもある。例えば、ポール・ブールジェ(1852-1935)とフリードリヒ・ニーチェ(1844-1900)から多大な影響を受けた作家トーマス・マン(1875-1955)の場合、とりわけ初期作品群において、観察するだけで決して決断せず、あるゆる営為に対して醒めた批判的まなざしを投げかけ、それでいて「認識の嘔吐」に苦しむ「デカタント」を、いわば「距離のパトス」をもって示す。 また、独自の「観相学」を展開したオーストリアの思想家ルードルフ・カスナー(1873-1959)は、個性(Individualität)に基づく「仮面」の世界に生き、「人間の偉大さ」に無縁な近代人を「ディレッタント」とみなし、19世紀に顕著になった個人主義の産物を「ディレッタンティズム」に見出した。 本講義は、ブールジェとニーチェを繙き、マンならびにカスナーにおける「ディレッタンティズム」を考究しながら、我々の存在を新たな光で照らし出してみたい。 |
学習目標 | (1) 全般的な教育目標: みずからの思索をみずからの言葉で論述できるようにする。 (2) 個別の学習目標: 講義を通じて、ドイツの文学ならびに思想に関する知見を深める。 |
授業の進め方 | 以下の順番で講義を行う予定である。 (1)導入――「ディレッタンティズム」とは何か。 (2)予備的考察(1)――ニーチェ (3)予備的考察(2)――アドルノ、ホルクハイマー『啓蒙の弁証法』 (4)予備的考察(3)――ポール・ブールジェ (5)予備的考察(4)――ポール・ブールジェ (6)トーマス・マン(1) (7)トーマス・マン(2) (8)トーマス・マン(3) (9)トーマス・マン(4) (10)ルードルフ・カスナー(1) (11)ルードルフ・カスナー(2) (12)ルードルフ・カスナー(3) (13)ルードルフ・カスナー(4) (14)総論 (15)予備日 |
教科書等 | <教科書> 特になし。 <参考図書> 授業中に指示する。 |
成績評価方法 | 平常点50%+レポート50% |
学習相談 | 本授業の終了後、ならびにオフィスアワー(木曜4限)にて相談に応じる。 |
その他 | 対象学年:2年生〜4年生 教職(ドイツ語) |