文学部 人間科学コース 心理学 専攻 専門科目 (2単位) |
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後期・通常 火曜4限 |
授業の概要 | 心理学では、実証的な方法によって研究が行われるため、実験や調査によって得られたデータを証拠として理論の正しさを証明しようとする。その際に有効な道具として考えられるのが統計的方法である。心理学では様々な統計的方法が利用されており,研究を理解し,さらに独自の研究を行うためには、各種統計的な方法に関する知識が必要である。本授業では,研究方法によらず基礎的な方法である「記述統計」,「推測統計」,実験研究でよく利用される「分散分析」,調査研究でよく利用される「重回帰分析」,「因子分析」を取り上げ,各手法に関して可能な限り数式によらない概念的な説明を行う。さらに代表的な統計解析ソフトウェアを利用する場合の各手法における留意点についても解説を行う。 1.オリエンテーション:実証科学における統計的方法の必要性を論じ,データとは何かまたデータの尺度水準について解説を行う。 2.平均と分散・標準偏差:指標の持つ意味,計算方法,外れ値の影響を取り上げ、他の基礎統計の授業の復習を行う。 3.相関:相関とは、相関係数の求め方、相関係数を解釈する上での注意点、相関係数に影響を与える要因を取り上げ,他の基礎統計の授業の復習を行う。 4.統計的仮説検定:独立ならびに対応のある2標本の平均の差の検定を取り上げ,検定の基本的な考え方について他の基礎統計の授業の復習を行う。 5.重回帰分析1:重回帰分析の基礎となる単回帰分析について解説を行う。内容としては,回帰分析とは,回帰直線の求め方,予測の標準誤差,決定係数である。 6.重回帰分析2:重回帰モデル,重相関係数,モデル全体の評価,偏回帰係数の検定といった理論的な面を中心に解説を行う。 7.重回帰分析3:引き続き理論面を中心に、変数の選択,抑制変数,多重共線性及びその診断方法,残差分析について解説を行う。 8.重回帰分析4:偏回帰係数を利用した結果の解釈並びに留意点,パス解析との関係,分析するにあたっての留意点など応用面を中心に解説を行う。 9.因子分析1:構成概念と潜在変数,質問紙調査と因子分析,因子分析の基本モデルを通して因子分析の基本的な考え方について解説を行う。 10.因子分析2:因子の抽出法(重み無し最小2乗法),因子の回転(バリマックス回転・プロマックス回転)といった分析時に必要な理論について解説を行う。 11.因子分析3:調査用紙の作成、データ収集と入力,分析時の留意点(因子数の決定,変数選択,回転の選択),結果の解釈の仕方といった応用面について解説を行う。 12.分散分析1:実験と分散分析,2標本の検定との違い,さらに1要因分散分析モデルを通して分散分析の基本的な考え方(結果の見方も含む)について解説を行う。 13.分散分析2:多重比較(Tukey, REGWQ, REGWF),2要因分散分析モデル(交互作用,単純主効果も含む)について解説を行う。 14.分散分析3:心理学でよく利用される被験者内要因・被験者間要因を扱ったモデルと分散分析を利用する際の留意点に関して解説を行う。 15.まとめ |
学習目標 | (1) 全般的な教育目標: 卒業研究(卒業論文)を行うにあたって必要な統計的な方法に関する理論と方法について学び、統計に関する基本的な考え方を身につけ,分析手続きに関する知識とスキルの習得を目指す。 (2) 個別の学習目標: 1.オリエンテーション:心理学において統計的な方法が必要であることを理解すること。 2.平均と分散・標準偏差:1変数データを数値によって整理・要約する方法を理解すること。 3.相関:2変数データを数値によって整理・要約する方法を理解すること。 4.統計的仮説検定:推測統計の基本的な考え方や手続きについて理解すること。 5〜8.重回帰分析:予測のために利用される重回帰分析を通して多変量データ解析の基本的な考え方について理解すること。 9〜11.因子分析:因子分析の理論と応用を学び、調査法(質問紙法)におけるデータ解析のスキルを身につけること。 12〜14.分散分析:分散分析の理論と応用を学び、実験法におけるデータ解析のスキルを身につけること。 |
授業の進め方 | スライドを用いた講義形式を基本とする。内容により演習問題を課し、その解説を行うこともある。毎授業において出席確認を兼ねた質問シートを配布し、次回の授業において重要だと思われる質問の解説ならびに授業の復習を行う。 |
教科書等 | <教科書> 中村知靖・松井仁・前田忠彦 (2006). 心理統計法への招待 サイエンス社 渡部洋(編著)(2002). 心理統計の技法 福村出版 <参考図書> 南風原朝和 (2002). 心理統計学の基礎 有斐閣 山田剛史・村井潤一郎 (2004) よくわかる心理統計 ミネルヴァ書房 村井潤一郎・柏木惠子 (2007). ウォームアップ心理統計 東京大学出版会 |
成績評価方法 | レポート50%,宿題10%,出席40%(質問シートへの記入)の割合で成績を総合的に評価する。また心理実験・調査への協力状況も成績に考慮する。 |
学習相談 | 電子メールによる質問は随時受け付ける予定。メールアドレスは授業開始時に連絡する。研究室訪問は事前に電子メールによる予約があれば随時可能。 |
その他 | この授業は社会調査士資格取得のための量的データ解析の方法に関する科目ならびに認定心理士資格取得のための科目として認定されている。 対象学年:2年生以上 履修条件:なし:但しその他をよく読むこと。 教職(公民) 社会調査士 |