文学部 人間科学コース 比較宗教学 専攻 専門科目 (2単位) |
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後期・集中 |
授業の概要 | この授業では、人が生きていくうえで直面する生活困難(心身の病、老い、失業・貧困、社会的排除)を主題として取り上げる。まず、生活困難を抱える人々の経験を二つの側面に、すなわち、客体としての側面と主体としての側面に分けて考えることから始めたい。客体としての側面とは、具体的には、痛み・苦しみを受ける、政策の対象となる、差別を受けるなどの経験を指す。主体としての側面とは、自らの力で現実を変える、すこしでも状況をましなものにする、他者と協働するなどの経験を指す。 客体としての側面を理解するためには、まず、生活困難とそれへの社会的対応(社会保障・社会福祉制度)の歴史的変遷を辿る必要がある。この授業では、19世紀の救貧法から21世紀のベーシックインカム論までを概観しつつ、受苦者を救済/迫害する機制について検討する。次に、主体としての側面を把握するための一助として、受苦者の連帯と自助努力に着目する。具体的には、コレラ一揆から自立生活運動までの運動史と、集団・組織という形態をとらないアモルフかつアナーキーな生活実践の系譜を辿りつつ、行為と現実変革の関係性について検討する。 本授業では、上記の一連の作業をつうじて、社会学・人類学はいかにして生活困難を抱える生と向き合うことができるのかについて考えてみたい。 |
学習目標 | (1) 全般的な教育目標: 近代社会の医療・社会保障政策史について、個々の政策の内容について具体的な理解を深めるとともに、それぞれの時代において制度を支えてきた思想・理念について学習することを通じて、個々の政策を広い文脈の中において捉えることを目標とする。さらに、実際に政策の影響下にあった人々の実践に着目することによって、かつて当事者によって何が問題とされ、それが社会問題としてどのように提起されてきたのか、その問題提起によって現実がどのように変わった(変わらなかった)のかを知り、それを手がかりに、現実のダイナミズムを把握しえる社会学的・人類学的な認識枠組みについて学習・再考することを目標とする。 (2) 個別の学習目標: 人は誰でも病を患う。その意味で、潜在的には誰もが、社会的弱者になりうる可能性を持っている。歴史的な出来事やそれを認識するための枠組みについて、ただ受け身に学ぶだけでなく、「もし自分がその場で病者(貧困者)だったら」と想像しながら授業を受けてみてほしい。想像力を働かせながら、歴史を知り、社会学・人類学を学ぶことは、私たちが生きている現代の日常生活のありようを相対化する作業へと繋がる。受講生は本講義の内容から、身近な諸問題を考察する視点を掴んでください。 |
授業の進め方 | 適宜レジュメを配布します。 |
教科書等 | <参考図書> 有薗真代「痛みと怒りをつうじて『問い』をつかむ」 『<体験型>社会学のすすめ―研究テーマの見つけ方』(ナカニシヤ出版 2011年) 有薗真代「『生活者』としての経験の力−国立ハンセン病療養所における日常的実践とその記憶」『過去を忘れない―語り継ぐ経験の社会学』(せりか書房 2008年) |
成績評価方法 | 出席40%、レポート60% |
学習相談 | 講義期間中は随時受け付けます。 |
その他 | 12月開講 教職(社会)(公民) |