文学部
人間科学コース
社会学・地域福祉社会学 専攻
専門科目 (2単位)
社会学講義 I
講義題目:質的調査法を通して学ぶ社会学
福岡県立大学 准教授中村 晋介
後期・通常

月曜2限
授業の概要 社会調査には、量的調査(アンケート調査)と、インタビューや参与観察、あるいは文書資料の解読といった技法を用いる質的調査という2つの技法があります。この講義では、このうち質的調査の方法を学んでいきます。くわえて、「社会学」が成立した過程についても初歩的な内容説明を行い、「社会学」的な考え方/問題設定のあり方についての理解を深めます。
具体的には、以下のテーマを中心に講義を展開することになるでしょう。第1回の講義で、講義の進め方についてより精密な説明を提示しますので、受講希望者は、必ず出席するようにしてください。

1.「社会学的な社会調査」の特徴:
「社会学」とは何をする学問なのか、なぜ「社会学」と名乗るのか、「社会学的な問題設定」とは何か、人類学と社会学との違いはどこか、など。

2.質的調査法にもとづく社会調査の準備:
問題設定の方法、対象選定の方法、仮説構成/修正の方法など。

3.質的調査法にもとづく社会調査の実践@:
フィールドへの参入、インフォーマントの選び方、インフォーマントとの関係の取り方など。

4.質的調査法にもとづく社会調査の実践A:
インタビューの諸技法、フィールドノーツのつけ方、視覚データの収集方法、録音機器を使用する場合の注意など。

5.質的調査法にもとづく社会調査の実践B:
データのコード化とカテゴリー化の諸技法、アブダクションとKJ法など。

6.質的調査法にもとづく社会調査研究の実践C:
報告書(エスノグラフィー)の書き方、書く作業がもたらす影響など。

7.質的調査の基礎づけと評価基準:
選択的なもっともらしさ、信頼性と妥当性、トライアンギュレーション、社会調査の倫理など。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
単に「調査をうまく進める」「論文をうまくまとめる」ための小手先のテクニックの習得だけがこの講義の目標ではありません。講義を通して、@テクニックそれ自体を方向付ける「社会学的なものの見方・考え方」の習得、A「社会学」に関する基礎的な知識の習得を目指します。本講義を通して、受講生が「社会学を実践することの意義・重要性」を理解できれば幸いです。

(2) 個別の学習目標:
学習目標を2つ設定します。

@質的調査法に基づいた社会調査研究を実践する上での認識枠組み、具体的な技法、調査結果の解釈、まとめ方などに関する知識を得ることを通して、質的調査法に関する知識を習得することが第1の目標です。とくにインタビューを用いた調査について、準備段階での認識、フィールドの選び方、調査対象との関係の作り方、インタビューの方法、分析や解釈の手法、報告書作成後の対応、調査倫理などを学びます。

A「社会学的なものの見方・考え方」の習得。a)みなさんは「社会学」が何を目指す学問なのかを説明できますか? b)なぜ、この学問が「社会学」と名乗っているのかを説明できますか? この講義が終わる頃に、みなさん自身の言葉でそれが説明できるようになっていることを期待します。
授業の進め方 この講義を担当して4年目になりますが、毎年、受講生の数が70人を超えています。故に、プリント(レジュメ)に基づく講義形式を取らざるを得ません。しかし、受動的に講義を聴くだけで、質的調査の方法は修得できません。受講生の主体的な取り組みを促すために、しばしば課題を出します。それ以外の部分でも、アンサーシートを通して、なるべく双方向的な意見のやりとりができるような授業を心がけます。なお、授業内で提示された課題は、授業以外の時間帯に取り組むことになります。その旨はご了承ください(「試験・成績評価の方法等」欄も参照のこと)。
教科書等 <教科書>
教科書はとくに使用しません。
私が配布するプリントを保管するためのバインダー、クリアフォルダなどを準備してください。

<参考図書>
フリック,ウヴェ,1995=2002『質的研究入門――<人間の科学>のための方法論』春秋社.
箕浦康子編著,1999,『フィールドワークの技法と実際――マイクロ・エスノグラフィー入門』ミネルヴァ書房.
ロフランド,ジョン・ロフランド,リン,1995=1997,『社会状況の分析――質的観察と分析の方法』恒星社厚生閣.
佐藤郁哉,2002,『フィールドワークの技法』新曜社.
その他、授業中に適宜指示します。
成績評価方法 平常点(出席・課題提出・アンサーシート)30%+期末試験70%
期末試験は持ち込み一切不可の客観テスト
(「社会調査士」資格に関係する科目ですので我慢してください)。

【注意】出席や課題の提出状況を、これまでより厳密に判定します。
・1/3を超えて欠席した学生、課題提出が著しく少ない学生には、期末試験の受験資格を認めません。
・授業中に出された課題は原則として翌週の講義時に提出すること。3週間以上提出が遅れた場合は、未提出扱いとします。
・1月中旬に、受験資格を失った学生の学籍番号を掲示します。このような学生は、期末試験を受験した場合でも、答案を採点しません(無条件で0点とします)
学習相談 講義時間中にアンサーシートを配布しますので、そこに質問や意見を書きこんでください。次の時間にできる限り回答します。面談を希望する方は、授業終了後の昼休み、あるいは月曜日の3限目以降にできるかぎり対応いたします(文学部の社会学研究室にいることが多いです)。本講義に直接関係のないことでも気軽に相談してください。
その他 社会調査士資格認定科目(F:質的な分析の方法に関する科目)
教職(社会)(公民)

対象学年:2年生 3年生 4年生
教職(社会)(公民)
社会調査士