文学部


学芸員に関する科目 (2単位)
博物館概論
講義題目:これからの博物館を考える
九州国立博物館 文化交流展室長河野 一隆
前期・通常

木曜1限
授業の概要  今、博物館は大きな転換期に立っている。何十万人もが殺到する超大型の特別展に光が当たる一方で、地域の歴史や文化の普及啓発の役割を担ってきた博物館・資料館が経営的な危機に陥り、閉館の危機に瀕している。博物館の前身である東京上野の湯島聖堂博覧会(明治5(1872)年)から約1世紀半、日本の博物館を取り巻く社会的な状況は、今までに類がないほどの複雑かつ困難な問題の解決に迫られていると言って過言ではない。本講義では、博物館が歩んできた歴史と現状を実例を挙げて紹介しつつ、その中からいくつかのさまざまな現代的課題を抽出する。たとえば、「博物館の目的は研究か、ビジネスか」、「展覧会(展示)の満足度は量的基準ではかれるか」、「博物館展示は実物か、バーチャルか」など、かつての「博物館のイメージ」とは、一見かけはなれた問題提起をしながら、博物館の将来像を拓くための可能性について受講者と一緒に考えていくことにしたい。
学習目標 (1) 全般的な教育目標:
 単に博物館の概説を聴講するだけでなく(それは既に不要であろうから)、博物館をリベラルな立場から俯瞰できるような見方、考え方を身に付けてもらいたい。博物館学芸員にとって個別の学術分野の専門的知識が必要なことは言うまでもないが、それだけでは喫緊の現代的課題を解決することはできない、という自己認識を出発点にして、博物館の社会的使命とは何かを問いかけてみたい。

(2) 個別の学習目標:
 博物館の概説的な知識だけでなく、博物館を自発的・積極的に訪問し、各自の学術専門領域に照らし合わせて、問題意識を持って展示や館の活動を評価できるような知識基盤を身に付けたい。自分だったらどのような博物館を設計するか、どのような展覧会が自己表現に最適であるか、などの「博物館を考える」視点をもって積極的に授業参加をしてもらいたい。
授業の進め方  授業では、現代社会の諸問題を踏まえて博物館の課題を設定し、それを実例紹介や意見交換等の方法を交えて受講者と共に考えながら、将来の博物館の可能性を導き出すような授業にしたい。また、単に授業に出席・聴講するだけでなく、各自、自発的、積極的に展覧会や博物館を訪れて問題意識を触発し、考える体験をしてほしい。
教科書等
成績評価方法 博物館・展覧会の実地取材を踏まえて、現代社会と関わりを持った課題を見出し、考察を加えたレポートを提出していただきたい。
学習相談 メールでの質問や、当館を訪れての相談も歓迎します。
その他 学芸員