九州大学文学部非常勤講師の石川充ユージン氏から、ふたつの朗報が届きました。
まず最初の朗報です。同氏は、当方の指導を受けて、2025年3月に博士(文学)の学位を取得しました。考えてみれば、最短で学位を取得した指導生です。その学位申請論文にもとづく著作「神との合一 説教者マイスター・エックハルトの人間学」が、2026年8月31日付で、九州大学出版会から刊行されることになりました。しかも、第17回九州大学出版会・学術図書刊行助成を受けてのことです。先生方との競争を経て、助成対象に選ばれました。本当にすごいことだと思っております。当方のもとには、7月24日に寄贈本が届きました。出藍の誉、指導教員として、実に感無量です。
もっとも、朗報はそれだけではありません。石川氏は、2026年10月1日付で、岩手大学人文社会学部に講師として着任することになりました。これまた、すばらしい朗報です。ちなみに、石川氏は、エックハルトを神秘主義者としてではなく、説教者として捉え直すことで、その思想の眼目である神との合一を新たに明らかにしました。従来の研究では、説教者としての側面が過小評価されてきましたが、石川氏は、エックハルトがラテン語だけではなく、当時の民衆語であったドイツ語を用いて、多くの説教を残した点に注目したのです。こうした考察は、中高ドイツ語、ラテン語、英語のたしかな読解能力に支えられています。事実、石川氏は、英語でTOEIC 870点を獲得、ドイツ語で日本のドイツ語検定1級(合格率15.65%)に合格、更にラテン語と中高ドイツ語の読解力をほぼ独学で獲得しました。
それにしても、皆さんにとって、腑に落ちない点がひとつあるのではないでしょうか。トーマス・マン研究者の当方が指導教員だなんて、考えてみればまったくおかしな話です。とはいえ、私なりにマイスター・エックハルトを読んできました。また、石川氏の研究発表を聞き続けた院生たちも、エックハルトの文章にそれなりに馴染んできたと思います。門前の小僧、習わぬ経を読む、私たちなりにエックハルトの「説教」を聞き続けました。そんな感じがします。なんという雑種性、これが九大独文です。いまはふたつの朗報にひたりながら、石川氏の今後の活躍を祈念しております。(小黒康正)

