『ドイツ国民の境界』(今井宏昌)

いささか前の話ですが、水野博子・川喜田敦子編『ドイツ国民の境界:近現代の時空から』(山川出版社、2023年)をいただいておりました。寄贈者は同僚で、いつも精力的なお仕事をされている西洋史研究者の今井宏昌氏です。

近現代のドイツ語圏を「境界」という観点から問い直す論集になっています。その際、問題となるのは、市民社会、市民と労働者、人種と民族、スイスにおけるユダヤ人、西ドイツと東ドイツ、想起文化、シンティなどです。序の他に12本の刺激的な論攷が揃っています。

今井氏の担当は第4章で、反共主義者であったが、のちにコミュニストに転向するアレクサンダー・シュテンボック=フェルモア伯爵、別名「赤い伯爵」を考察されました。ドイツ亡命後に「境界」を社会的にも政治的にも越境していく人物です。とても刺激的な論攷です。(小黒康正)