ヘミングウェイ+α研究ページ

ヘミングウェイ+α研究ページ

「著書の出版を終えて」

これも九英会の機関誌に載せた雑文です。

5月に拙著『引き裂かれた身体――ゆらぎの中のヘミングウェイ文学』を出版したのですが、英語学英文学講座の先生方と学生たちにその出版記念パーティを開いていただきました。私のような若造が出版記念パーティなどとんでもないと何度も固辞したのですが、内輪だけだからと押し切られ、結局6月に福岡タワーの上のレストランでパーティをしていただくことになり、大勢の人たちに参加していただきました。


これまでパーティの主役になどなったことなく、どうも人前に立つのが苦手でもあって、ずいぶんとこそばゆいというか、落ち着かない気分でしたが、心のこもった会にしていただいて非常に感謝しています。その場ではどうも照れくさくて、いやがっているようにしか見えなかったかもしれませんが、本当は感謝の気持ちでいっぱいだったのです。改めてこの場を借りてお礼を言わせていただきます。


実のところ、本を1冊書くというのは職場の環境がしっかりとしていて、安心して執筆に向かえる状況でないとなかなかできることではないと、強く思いました。そういう意味でパーティのことだけでなく、同僚の先生方や学生の皆さんには本当に助けていただきました。


本の執筆は前の職場、岩手県立大学にいる頃から合計4年ほどかかってしまいました。岩手の同僚の先生方や学生たちにもお礼を言いたかったので、この8月には久しぶりに前の職場に遊びに行ってきました。


本の出版を引き受けてくれたのは、実は京都の大学院時代の後輩で、今は松籟社という出版社に勤めている木村浩之氏です。本当はよその出版社から発行することになっていたのですが、赴任の際に岩手から福岡に車で移動中、木村氏から京都で会いたいと連絡をもらい、まだアメリカ文学関係の本がないのでうちで出しませんかと打診していただいたのです。出版不況のこのご時世、こちらから頼んでもなかなか本が出せない昨今ですが、そういう申し出をしていただいて本当にありがたかったのと、何より木村氏が信頼できる人柄であったのとで、出版社を変える決意をしました。ちなみに木村氏の目標は大学院時代に読書会を開いていたメンバー全員の本を出版することだそうです。


考えてみると、この本は京都・岩手・福岡と三カ所にわたって人に恵まれたおかげで出せたのだなあと改めて実感した次第です。もちろんこれで研究が終わるわけではなく、今回の出版を区切りとして今後も周囲の人たちにご迷惑をおかけしながらも、次の本に向けてがんばっていきたいと思います。