ヘミングウェイ+α研究ページ

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「カーナビ」

私は昔からカーナビが嫌いで、これまでずっとかたくなにつけることを拒否していたのですが、この4月に車を買ったとき、ついにこの私もカーナビをつけることにしてしまいました。というのもちょうどカーナビを設置する場所が、何もつけていないと大きな穴が開いたようになっていてあまりにもみっともない。そのぽかんと開いた口はまるでいい加減カーナビくらいつけろよと車に呆れられているようにも見えてきて、つい折れてしまったというわけです。


私は車であちこち気ままに旅をするのが好きなのですが、旅の醍醐味はやはり迷うことだと思います。道に迷うと路肩に車を止めて地図とにらめっこし、あちこちをさまよい動き回ったあげくにやっと当初の予定を大幅に遅れて目的地に到着、そんなときやっと着いたことにほっとするとともに、迷っていなければ決して見ることのなかった景色をたくさん見ることになってずいぶん豊かな気持ちになってくるのです。電子辞書と違って紙の辞書だと隣の単語まで目に入って勉強になるのですが、それとちょっと似ていなくもないでしょうか。


とはいえあると使ってしまうものですね。4月以降いろいろな場所に行きましたが、やはりカーナビがあると便利です。ちょっとした場所に行くには効率的ですし、見知らぬ土地に旅行に行ってもぜんぜん迷うこともなく、スムーズに旅が進みます。便利だなあと思う反面、ちょっと残念な気持ちもどこかにつきまといます。


旅行というと最近は天気の保険みたいなものもあるそうで、私なんかは雨が降ったら降ったでそれなりに美しい景色が見られるでしょうし、大雨で足止めを食うのも旅のおもしろさ、後になって思い出に残るのはむしろそういう突発事のほうなのではないか、なんて思うのですが。世の中なんでもカーナビつきの車みたいに効率だけを重視して目的地まで一直線、途中で迷ったりするのは無駄の極み、失敗しないことが何より大事みたいな風潮になってきているのでしょうね。


そして先日、大分からフェリーで四国に渡り、関西を経由して中国地方を通って福岡に戻るという総走行距離1600キロの自動車旅行をしてきたのですが、その途中で四万十川に立ち寄ったときのことです。香山寺市民の森という山の頂上にある場所から四万十の街を一望できると聞いて、カーナビに「香山寺市民の森」を入力、勢いよく車をスタートさせたのでした。するとどういうわけか目的地と違う方向に進み始め、変だなあと思いながらしばらく進むと右折の指示が出たので道を曲がってみたところ、いきなり高速道路に乗ってしまいました。何でこの距離で高速に?と不思議に思いながらさらに車を進ませると、長いトンネルに入ります。そしてそのトンネルのちょうど真ん中あたりに来たとき、突然カーナビの音声ガイドが「目的地付近です。ルート案内を終了します」とのたまうではありませんか!


「この真上に行きたいんじゃ、ぼけえ!!」と思わず叫んでしまったのはご愛敬ですが、カーナビがあってもトラブルは起こるものですね。腹を立てると同時にちょっとだけ得したような気もしたのでした。