
中国西南地区における
北方系青銅器文化の生成と展開
左写真は四川省甘孜藏族自治区炉霍県晏爾龍遺跡研究代表者
九州大学大学院人文科学研究院 宮本一夫
研究組織
九州大学教育研究プログラム研究拠点形成プロジェクト
2007年度~2008年度
氏名 | 所属(当時) | 研究戦略 |
宮本一夫 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
考古学的研究 |
辻田淳一郎 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
考古学的研究 |
川本芳昭 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
文献史学的少数民族の研究 |
中橋孝博 | 九州大学大学院 比較社会文化研究院 |
古人骨の形質人類学的研究 |
田中良之 | 九州大学大学院 比較社会文化研究院 |
古人骨の歯冠計測による 親族構造の研究 |
小池裕子 | 九州大学大学院 比較社会文化研究院 |
古人骨の安定同位体比分析による 食性分析 |
高大倫 | 四川省文物考古研究所 | 海外共同研究者 |
李映福 | 四川大学考古学系副教授 | 海外共同研究者 |
2009年度から2012年度
氏名 | 所属(当時) | 研究戦略 |
宮本一夫 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
考古学的研究 |
辻田淳一郎 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
考古学的研究 |
川本芳昭 | 九州大学大学院 人文科学研究院 |
文献史学的少数民族の研究 |
中橋孝博 | 九州大学大学院 比較社会文化研究院 |
古人骨の形質人類学的研究 |
田中良之 | 九州大学大学院 比較社会文化研究院 |
古人骨の歯冠計測による 親族構造の研究 |
高宮広土 | 札幌大学文化学部 | 植物種子からみる植生研究 |
研究目的 図は青銅器伝播のモデル

年度ごとの調査概要
2006年度
8月21日~8月27日
四川省甘孜蔵族自治区炉霍県晏爾龍遺跡石棺墓踏査
参加者:宮本一夫, 李映福, 徳留大輔



小結
・四川省甘孜蔵族自治区炉霍県における青銅器時代遺跡の踏査を行い、晏爾龍遺跡で石棺墓を発見する。・四川省文物考古研究所と九州大学考古学研究室による日中共同研究「中国西南地区における北方系青銅器および石棺葬研究」を行うこととなる。
2007年度
8月5日~8月11日
四川省甘孜蔵族自治区炉霍県卡莎湖石棺墓出土古人骨調査
参加者:中橋孝博, 田中良之, 岡崎健治, 邱鴻霖



小結
・関節炎が男性に異常に多い事実と、歯頸部における虫歯が多いという特異な事実が判明・歯の歯冠計測分析により、この集団が母系社会である可能性が考えられる
8月5日~8月11日
雲南省文物考古研究所および雲南省博物館における資料調査
遺跡踏査(李家山遺跡・石寨山遺跡・八塔台遺跡)
参加者:宮本一夫, 辻田淳一郎, 上條信彦, 戸川貴行, 李映福



小結
・雲南省博物館で雲南最古の青銅器遺跡といわれる雲南省剣川県海門口遺跡の青銅遺物資料の実測・写真撮影調査を行い、それらが北方青銅器文化の比較的古い要素を持つことを初めて確認した。11月18日~11月26日
四川省川西高原青銅器資料調査
参加者:宮本一夫, 白石渓冴, 森貴教, 金国林



小結
・宝興県博物館、蘆山県博物館、雅安文物管理所、滎経県博物館、茂県羌族博物館で悉皆的な川西高原石棺墓の青銅器遺物実測調査を行った。これにより73点の青銅器遺物の実測・写真撮影を行った。2008年度
10月11日~10月30日
四川省甘孜蔵族自治区炉霍県晏爾龍遺跡発掘調査
参加者:参加者:宮本一夫・岡崎健治・松本圭太・白石渓冴・高椋浩史・宮下浩太朗・唐飛・金国林・郭富・王橋



左から順に石棺墓出土状況, 8号石棺墓, 8号石棺墓銅戈出土状況
3月5日~3月11日
晏爾龍遺跡遺物実測調査
参加者:宮本一夫, 松本圭太, 白石渓冴



左から順に8号石棺墓出土青銅戈, 11号石棺墓, 11号石棺墓出土青銅戈
・北方系青銅器文化の影響を受けると共にそれを変容させ受容した社会であり、青銅戈のような在地的な青銅器生産が始まっていた。
・晏爾龍石棺墓民は、男女の性別が明確で比較的等質的な社会であった。そして、母系社会の可能性が高い。
・オオムギの穀物農耕と共に牧畜を営む山岳牧畜民の生活を行っていた。
小結
・晏爾龍石棺墓8号墓の青銅戈の存在や人骨のC14年代により、川西石棺墓の年代が商代前期(BC15~13世紀)並行まで遡る可能性が出てきた。すなわち、長城地帯青銅器文化第2期に北方青銅器文化との交流がはじまっていた可能性がある。・北方系青銅器文化の影響を受けると共にそれを変容させ受容した社会であり、青銅戈のような在地的な青銅器生産が始まっていた。
・晏爾龍石棺墓民は、男女の性別が明確で比較的等質的な社会であった。そして、母系社会の可能性が高い。
・オオムギの穀物農耕と共に牧畜を営む山岳牧畜民の生活を行っていた。
2009年度
9月12日~10月16日
四川省甘孜蔵族自治区炉霍県呷拉宗遺跡発掘調査
参加者:参加者:宮本一夫・中西哲也・村野正景・松本圭太・三阪一徳・森貴教・白石渓冴・高大倫・唐飛・李映福・陳衛東・王靖



左から順に呷拉宗遺跡全景, 3号墓人骨出土状況, 3号墓トルコ石製飾り出土状況
3月6日~3月12日
呷拉宗遺跡遺物実測調査
参加者:宮本一夫・中橋孝博・高宮広土・菊地大樹・松本圭太・三阪一徳・森貴教



左から順に15号墓出土土器, 15号墓出土青銅器, 15号墓出土青道鏡
・呷拉宗3号墓の副葬品構成は晏爾龍石棺墓に類似し、遺物は型式学的には退化したものである。川西石棺墓文化2期(紀元前9世紀~8世紀)と考えられる。
・5号墓の土器は、土器型式のⅡ段階のものであり、川西石棺墓文化3期(紀元前7世紀~6世紀)と考えられる。
・5号墓の青銅器は、紀元前7~6世紀のものであり、この段階から中原青銅器文化との接触が見られる。
小結
・呷拉宗石棺墓は晏爾龍石棺墓より相対的に後出するものである。・呷拉宗3号墓の副葬品構成は晏爾龍石棺墓に類似し、遺物は型式学的には退化したものである。川西石棺墓文化2期(紀元前9世紀~8世紀)と考えられる。
・5号墓の土器は、土器型式のⅡ段階のものであり、川西石棺墓文化3期(紀元前7世紀~6世紀)と考えられる。
・5号墓の青銅器は、紀元前7~6世紀のものであり、この段階から中原青銅器文化との接触が見られる。
2010年度
9月12日~10月5日
四川省雅江県本家地遺跡、湾地遺跡発掘調査
参加者:宮本一夫・松本圭太・主税英徳・三阪一徳・森貴教・藤元正太・高大倫・唐飛・李映福・李万涛・鄭氏
2月26日~3月4日
本家地遺跡遺物実測調査
参加者:宮本一夫, 中橋孝博, 高宮広土, 菊地大樹, 松本圭太, 主税英徳, 森貴教, 藤元正太



左から順に石棺墓人骨出土状況, 石積住居F1,F3, 竪穴住居址(F4)発掘状況
・ラマ寺院(F1・F2)に付属する窯跡を発見。
・ラマ寺院の下に吐蕃後期の竪穴住居址(F4)を発見。
・屈葬からなる同じく吐蕃後期の石棺墓(M1)を発見。
小結
・周辺遺跡である湾地石棺墓、脚泥堡石棺墓の遺物調査により、詳細な石棺墓編年を構築することが可能となった。・ラマ寺院(F1・F2)に付属する窯跡を発見。
・ラマ寺院の下に吐蕃後期の竪穴住居址(F4)を発見。
・屈葬からなる同じく吐蕃後期の石棺墓(M1)を発見。
2011年度
9月2日~9月3日
中日共同主催「西南地区における北方系青銅器および石棺葬研究」合作学術討論会を開催(中国四川省成都市凱賓斯基副楼五楼蜀竹庁にて)
・2011年9月2日
「雅礱江中上流地区遊牧社会の形成」陳 衛東
「中国川西高原石棺墓文化の研究」 宮本一夫
「川西高原青銅器時代の人」中橋孝博
「茂県牟托石棺葬小議」高 大倫
「川西高原先史社会の親族関係」田中良之
「四川甘孜九龍石棺葬」黄 家祥
「呷拉宗冶鉄遺跡の化学分析」中西哲也
「四川石棺葬の時代特性」万 嬌
「呷拉宗冶鉄遺跡の鼓風技術」李 映福
・2011年9月3日
「石棺葬の起源と拡散-中国を例として-」李 水城
「晏爾龍遺跡および本家地遺跡出土の植物標本」高宮広土
「麦坪遺跡石棺墓遺物の初歩分析」劉 化石
「大窑石棺墓の年代再考」陳 茟
「古代川蔵高原の動物利用」菊地大樹
「横断山縁辺土壙墓に見られる北方文化要素」金 国林
「白馬石類型遺物の再認識」劉 志岩
「金沙江中流における石棺葬の多様性」唐 翔
(翻訳者:中国側・林松/日本側・松本圭太)



四川省チベット自治区遺物実測調査・遺跡踏査
(瀘定県徳威郷漆木林組遺跡、瀘定県冷磧鎮遺跡、茂県城関粮砧遺跡)
参加者:宮本一夫・松本圭太・森貴教・齊藤希・高大倫・唐飛・金国林


成果報告
2011年度調査成果発表(2011/11/26 第15回動物考古学研究集会)(pdf)
2011年度調査成果発表;中国語(2011/09/08 四川日報電子版)(pdf)
成果報告(pdf)
成果報告;英語(pdf)