江戸時代初期より製作されはじめた世界民族図譜の一例。竪29.1cm、総長876.1cmの巻子仕立てで、巻頭に3艘の外国船(阿蘭陀船2艘・唐船1艘)、つづいて40ヵ国の人物が描かれている。人物は基本的に男女一人ずつの対であらわされ、人物図の傍らに国名とその国についての短い説明文が記されている。
世界民族図譜には大きく三系統あるが、本作品は『四十二ヵ国人物図説』(正徳4年〈1714〉序)の系統に属するものである。九大本とほぼ同図様・同配色の木版多色刷りの作例(福岡市博物館所蔵)が確認されるため、版画によって大量生産されて流通していたと考えられる。
巻末に落款・印章のある城義隣は、江戸時代後半の長崎の町絵師。彼の作品には、九大本とやや図様を異にする「万国人物図巻」「唐船・蘭船図(二面)」(旧長崎県立美術博物館所蔵)、「長崎港図」(神戸市立博物館所蔵)など、外国との交流を示すテーマが多いのが特徴。鎖国体制下の江戸時代、人々はこのような作品を通して海外に対する知識欲を満足させていたことが窺える。
※原史料保護のため一般公開はしておりません。