2012年度行事開催記録


【報告】行事開催協力(2013年3月30日)
【非公開】東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究プロジェクト「社会開発分野におけるフィールドワークの技術的融合を目指して」(研究代表:増田研(長崎大学))最終回「次なるステップの模索」への開催協力
2013年3月30日(土)、東京外国語大学本郷サテライト

終了しました。


【報告】「応答の人類学」第6回研究会(2013年1月25日)
日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センターとの共催で以下の研究会を開催しました。

【公開】研究会「地域・調査・コミットメント〜かかわりの可能性を拓く」(企画担当: 小國)

【開催の趣旨】
人びとの多様な生きざまに寄り添うような調査者のかかわりが、地域に生きる人々にとってどのようなコミットメントとなるのかについて、国内外の事例を持ち寄って考えたい。

地域づくり・地域福祉・地域開発――、出てきた文脈によって言葉は異なりますが、いずれも、あるローカルな社会で生きる人々の生活に資するためのよりよい働きかけを模索するもの、という点では共通しています。これらのテーマを射程において対象地域に赴く調査者もまた、自らの「訪問する」「耳を傾ける」「問いかける」「共感する」といった行為がその場でもつ実践的な意味に無関心ではいられません。また、そうしたプロセスを経て出される調査結果や報告書、提言によって地域をある観点から描き出すこと、発信あるいはフィードバックすることで、調査研究者は地域とどのように結び付き、あるいは距離を広げることになるのでしょうか。
文化人類学では、調査者の存在がいかに地域に影響を与えるかが議論されてきましたが、本研究会では、特定の学問意義を超えて、個々の調査者を受け入れる地域の側からみたときに、緩やかな、あるいは急激な地域の変化の中で、調査者がアクターとして担える役割や、文脈に応じて人々と出会う「場」を設定する工夫、相互理解が深まるプロセスが、地域における人々と「わたし」の生きざまにどう反映されるのか、といったテーマを話し合う機会としたい。

日時:2013年1月25日
場所: 日本福祉大学名古屋キャンパス
参加人数:15名

■当日の流れ
主催者挨拶(日本福祉大学 穂坂光彦)
趣旨説明(日本福祉大学 小國和子)
報告1:地域における順応的なアクション・リサーチの提案(北海道大学 宮内泰介)
報告2:「ミナマタ」の加害被害構造の中に身を置く「フィールドワーク」で見えてきたもの、失ったもの(国立水俣病総合研究センター 原田利恵)
報告3:調査研究の「場」づくりとコミットメント(日本福祉大学 平野隆之)
報告4:「参与観察」の再想像/再創造: 世界遺産棚田村における住民主導の植林運動へのコミットメントの経験から(京都大学 清水展)

全体討論とまとめ
事務連絡等
・「応答の人類学」初年度活動報告と次年度の計画
・「応答の人類学」2012年度会計報告

■全体討論の内容
今回の研究会では、特定の学問分野にとどまらずに「調査というコミットメント」の難しさと可能性を、具体的な事例をもとに、現場の目線から議論することに重きをおいていました。近接他領域研究者との意見が「鏡」となって、それぞれの専門性が写し出されることにもなり、相互に有意義な機会となりました。
全体討論では、博物館から被災地まで、様々な場における調査の介在について議論が展開されました。以下に、出された意見の一部を紹介します。

・語り/聞き書きについて:聞き書きには、力がある。その多様な読まれ方も含めた使われ方がある。と同時に、科学者としての正しさや倫理とは別次元で、当事者への不利益について考えねばならない。耳を傾け、書くことがcall and responseになるような聞き書きとは何か。
・「相手」に寄り添った発信の時期と内容:被災地などでは、生活が落ち着いてからやっとできることがある。「記憶の貯金箱」として次の世代へ。他方で、マジョリティの社会が落ち着いてしまうと関心がなくなるので、伝えるということの意味もある。「横の広がりと縦の広がりのために書こう」。
・市民との協働調査の可能性について:「事例集」の可能性。あるいは文章以外の「展示」の可能性など。
・現場での、学生へのフィールドワーク教育について:誰でも連れていける場所。厳選が必要な場所。
・当事者に寄り添う調査スタンスについて:「何かがあるんじゃないか」と思って聞き取りをはじめるのは、相手に対して酷ではないのか。私の感覚からすると「生の人にはインタビューできない」。
・「順応的」であること:現場自体も自分も含めたアクターも、日々、フレームワーク、役割、価値、態度も変わる。手法もテーマも順応的であるべき。
・応答の人類学 Anthropology of response-abilityが人類学の新たな方向を示すと考えている
(文責: 小國)


【報告】「応答の人類学」第5回研究会(2012年11月10日)
東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所共同研究プロジェクト「社会開発分野におけるフィールドワークの技術的融合を目指して」(研究代表:増田研 長崎大学)との共催で以下の研究会を開催しました。

【公開】「フィールドワークの失敗学」(企画担当: 亀井)

【開催の趣旨】
私たちはフィールドを訪れながら、今回の調査は「うまくいった」とか「いまいちうまくいかなかった」とか、そのような印象をもったり、人に語ったりすることがあります。この「うまくいく/いかない」というのは、いったい何を意味するのでしょうか。
それは、「調査の目的にそった情報が円滑に得られた」ということばに置き換えることはできません。
フィールドの人たちとの関係、共同研究者との分担、さまざまな調査手法や視点の融合、現地からの求めと応答、そこで経験しわかちあったさまざまな感情、そのほか多くの経験を通じて、私たちはフィールドワークを成功、失敗などと語ります。
いったい、どんなときに成功と感じ、失敗と感じるのか。
そもそも、成功/失敗などと評価することはできるのか。
他のフィールドワーカーの成功談や失敗談に、うなずけてしまうのはなぜだろうか。
調査者としての成功や失敗は、現地においてどう受け止められるのだろうか。
今回は「失敗」を切り口に、フィールドワークのあり方について縦横に論じる機会とします。(企画担当: 亀井伸孝)

日時:2012年11月10日
場所: 東京外国語大学本郷サテライトキャンパス
参加人数:23名

■「趣旨説明/私は最初の出会いで失敗した: カメルーンの熱帯雨林にて」亀井伸孝(愛知県立大学外国語学部)
■話題提供
「私は選択で失敗した?」山北輝裕(日本大学文理学部)
「私は難民定住地で失敗した: 難民の生計調査での試行錯誤」村尾るみこ(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)
「私は狭い視野で失敗した: ヒマラヤで,博物館で」宮本真二(岡山理科大学生物地球学部)
「私は報告書の返却に失敗した: フィールドに応答する多様な形態」飯嶋秀治(九州大学大学院人間環境学研究院)

■総合討論「フィールドワークの失敗学は可能か」
司会: 増田研(長崎大学大学院国際健康開発研究科)
コメント: 青山和佳(北海道大学大学院メディア・コミュニケーション研究院)
コメント: 小國和子(日本福祉大学国際福祉開発学部)

■討論の内容
おおまかには、以下のようなポイントが示されました。
・フィールドワークは「計画通りいかない」ことが織り込み済み→創造性の源としての「失敗学」?
・フィールドワークにおける「失敗」をかたちどる幾つかのアスペクト:
→’フィールド’とのつながり(における「失敗」。「去る」ということ)
→時間枠(意味が変化、調査者自身の咀嚼、フィールドとの関係改善、常にプロセス)
→関係性(調査対象者、対象地域行政のニーズ、異分野の共同研究者との連携)
→報告書/フィードバック(学術的な時間感覚と現場のギャップ、公的発信の壁)
・フィールドワークは文脈依存的な営為であるがゆえに、「失敗」もまた、文脈をみていく必要がある。
・トライアルアンドエラーのプロセス自体は「失敗」ではない。
・「書けている」かどうかに言及すべきではないか。
・「<失敗>のフィールドワーク」は可能か。
・「語れる程度の失敗」を共有することは、学際研究上も有意義なのではないか。
・成功事例を真似るだけでは学べない。フィールドワーク教育上も、「失敗学」にはやはり意味がある。

その他、フィールドワークが「ナマモノ」であることを象徴するかのごとく、多岐にわたる意見が出されました。
討議を通じて、今後「失敗学」をフィールドワーク自体の可能性検討につながる議論として展開していくための課題として、フィールドワークにおける「失敗」の定義や「失敗学」の目的設定などの必要性が確認されました。
(文責: 小國)


【報告】「応答の人類学」第4回研究会(2012年10月13日)
【非公開】国立民族学博物館共同研究「実践と感情: 開発人類学の新展開」(研究代表:関根久雄)との共催で以下の研究会を開催しました。
日時:2012年10月13日
場所:国立民族学博物館
出席者:12名

13:00-14:00 小國和子(日本福祉大学)「共感が合理になるとき:インドネシア南スラウェシ農村灌漑の<水調整人>の事例を中心に」
14:00-15:30 討論
15:45-16:45 鈴木紀(国立民族学博物館)「嫉妬と妬み:メキシコの参加型農村開発のサステイナビリティ(自立発展性)をめぐって」
16:45-18:15 討論

討論を通じて、人々が、自らが直面する状況に立ち向かう基盤となるロジック―感情規範―はどのようなものであるかという課題が確認されました。またそのような感情がゆきかうフィールドにおいて、調査者自らはいかに応じていくのかについても、両報告の事例をめぐり議論がなされました。

以上。


【報告】行事開催協力(2012年7月7-8日)
2012年7月7-8日(土-日)、国立民族学博物館
【非公開】国立民族学博物館共同研究「交錯する態度への民族誌的接近: 連辞符人類学の再考、そしてその先へ」への開催協力
2012年7月7-8日(土-日)、国立民族学博物館

終了しました。


【報告】「応答の人類学」第3回研究会(2012年6月22日)

課題研究懇談会「応答の人類学」は、2012年6月22日、広島市内で公開の第3回研究会を行いました。

【公開】日本文化人類学会課題研究懇談会「応答の人類学」第3回研究会
2012年6月22日(金)19:00~20:40
広島オフィスセンター 7階 第1会議室

■研究会の部
亀井伸孝(愛知県立大学、本懇談会代表)「課題研究懇談会『応答の人類学』のねらい」
課題研究懇談会メンバー(複数)「『応答の人類学』に関わる関心・期待」

■実務会議の部
飯嶋秀治(九州大学大学院、本懇談会庶務)
「懇談会のウェブサイト構築報告ならびに情報発信・共有の態勢」
参加者一同「今後の研究会開催計画」

参加者:16名

メンバーである関根久雄、増田研、椎野若菜、鈴木紀、武田丈の各氏が資料とともに長めの報告を、清水展、伊藤泰信の各氏が短めのコメントをしました。

■議論の内容
おおまかには、以下のようなポイントが示されました。

・非応答性についてもあわせて検討すべきではないか。
・学問全体として社会に対し応答するのか。それとも、個人が個人に応答するのか。後者の重要性。
・「応答」のテーマを個人の問題にとどめてよいのか(フィールドにおけるサバイバル・マニュアルのようなもの?)
・”call and response”というが、黙っていてもコールはこない。先んじてレスポンスすることがあってもよいのではないか。

このほか、社会福祉学との接点、アフリカの研究者との学術交流、大学や共同研究プロジェクトにおける文化人類学者のポジションなど、多くの触発的なキーワードと論点をいただきました。(文責: 亀井)


【報告】「応答の人類学」第2回研究会(2012年3月31日)

日本文化人類学会の課題研究懇談会「応答の人類学」採択を受け、2012年3月31日(土)、中部人類学談話会と共催の公開研究会を開催しました。

課題研究懇談会は、正式には4月1日に発足しますが、それに先立ち、今回は発足準備のためのプレセッションとの位置づけで開催したものです。申請メンバーと一般参加者、あわせて30名ほどの参加を得て、以下のプログラムで発表と討論を行いました。

【公開】中部人類学談話会第210回例会
「日本文化人類学会課題研究懇談会プレセッション: 「応答の人類学」に向けて」

共催: 中部人類学談話会+課題研究懇談会「応答の人類学」準備会
日時: 2012年3月31日(土)13:30-17:00
場所: 椙山女学園大学星ケ丘キャンパス

亀井伸孝(愛知県立大学外国語学部)「趣旨説明: 『応答の人類学』に向けて」
岩佐光広(高知大学人文学部)「先んじる応答、ゆらぐ態度: ラオス低地農村部における看取りの一場面を手掛かりに」
内藤順子(立教大学観光学部)「『文化人類学者』であることを問う: 『第四世界』の現在から」
飯嶋秀治(九州大学大学院人間環境学研究院)「臨床人類学一歩前」
全体討論

参加者:約30名

一般参加者からの質問やコメントが多く、実りある討論となったのですが、とりわけ以下の論点についての指摘がとくに響きました。

・「応答」の幅。どこからどこまでを対象とするのか、広すぎないか
・「応答」とは何を意味するか。貢献、臨床、実践などと置き換え可能か
・人類学は、多かれ少なかれ、常に応答的であり続けてきたのではないか
・フィールドワークのよしあしを論じることができるか

いずれも、本懇談会の先行きを左右しうる重要な指摘で、発足にあたってこのような視点を参照できる機会を得たことは幸いだったと思います。

これから4年間、実りある議論を深めていくために、公開行事などへの会員各位の積極的なご参加を期待しています。(文責: 亀井)


【報告】「応答の人類学」第1回研究会(2012年3月30日)

日本文化人類学会の課題研究懇談会「応答の人類学」採択を受け、2012年3月30日(金)、日本福祉大学アジア福祉社会開発研究センターと共催の研究会を開催しました。懇談会の方針を打ち合わせるための、非公開の会合として行いました。(文責: 亀井)

【非公開】「応答の人類学」打ち合わせ会議
2012年3月30日(金)13:30-17:00
日本福祉大学名古屋キャンパス
発表者:小國和子、亀井伸孝、飯嶋秀治、山北輝裕、玉置泰明、清末愛砂、原田利恵、内藤順子、岩佐光広、秋保さやか、吉野太郎
参加者:12名