飯嶋 秀治(いいじま しゅうじ)
人間環境学研究院(箱崎地区)・准教授
shuuji [at] lit.kyushu-u.ac.jp
2005年 九州大学大学院博士課程修了(人間環境学博士)
研究テーマ:
オーストラリア先住民(アランタ語系)、日本(北関東および九州の民俗)、インドネシア(バリ島およびロンボク島)、世界社システム論、危機生存の技法、共生。
著書:
『岩波講座 宗教〈第5巻〉言語と身体―聖なるものの場と媒体』(共著、2004年、岩波書店)
『はじめて学ぶ社会学―思想家たちとの対話』(共著、2007年、ミネルヴァ書房)
『社会学のアリーナへ―21世紀社会を読み解く (シリーズ社会学のアクチュアリティ:批判と創造)』(共著、2007年、東信堂)
『アクション別フィールドワーク入門』(共著、2008年、世界思想社)
『新修福岡市史特別篇 福の民―暮らしのなかに技がある』(共著、2010年、福岡市)
『支援のフィールドワーク―開発と福祉の現場から』(共編、2011年、世界思想社)
『社会的包摂/排除の人類学―開発・難民・福祉』(共著、2014年、昭和堂)
『新修福岡市史民俗篇 春夏秋冬・起居往来』(共著、2014年、福岡市)
『オーストラリア先住民と日本: 先住民学・交流・表象』(共著、2014年、御茶の水書房)
『新修福岡市史民俗篇 ひとと人びと』(共著、2015年、福岡市)
『ワールド・シネマ・スタディーズ』(共著、2016年、勉誠出版)
『現実に介入しつつ心に関わる[展開編]-多面的援助アプローチの実際』(共著、2016年、金剛出版)
『ストリート人類学-方法と理論の実践的展開』(共著、2018年、風響社)
『フィールドワークの安全対策』(共著、2020年、古今書院)
『オーストラリア多文化社会論―移民・難民・先住民族との共生をめざして』(共著、2020年、法律文化社)
『自前の思想―時代と社会に応答するフィールドワーク』(共編、2020年、京都大学学術出版会)
『大学的オーストラリアガイドーこだわりの歩き方』(共著、2021年、昭和堂)
『職場・学校で活かす 現場グラフィー』(共著、2021年、明石書店)など。
担当科目:
A基幹教育科目
1文化人類学入門(1年生向け)
2020⁻2021年文化人類学入門の場合、Covid-19禍でオンライン開催し続けています。毎週、事前に指定したテキストの1章を読み、3問のアンケートに回答してもらい、授業当日は事前に寄せられた質問を中心に45分講義をしてきています。たいてい、前半は文化人類学の基本入門書、後半はここ数年に出た文化人類学の最新入門書を使っています。
2少人数セミナー「文化人類学的な仕事を読む」(1年生向け)
2019年から、専門書を読まない学生が進学してくるのを心配して開講しました。2019年はユヴァル・ハラリの『サピエンス全史』と『ホモ・デウス』、2020年は『ブルシット・ジョブ』、2021年は『マツタケ』を読んでいます。たいていは、1人1章の報告を担当してもらい、事前に不明な点は調べて、当該書籍が出版された文脈に沿った読み方を学んでもらっています。
3その他、オムニバス講義ですが、「ユニバーサルデザイン入門」では、エスノグラフィの手法をデザインにどう転じさせるか、という体験的講義をしています。
B学部科目
1 文化人類学講義(2年生以上)
2013年文化人類学講義の場合、前期講義では「狩猟採集漁撈民の環世界」という主題で、前半では人類史における狩猟採集漁撈民の古典的民族誌を紹介し、後半では地球環境危機に警鐘を鳴らしたローマクラブの報告から人類学がどのように動向を変化させたのかを講義しました。後期では、フィールドワークに行ってきたことを前提にして、報告書までまとめあげるための基礎的方法として、KJ法及びGTAアプローチの基礎を教えました。
2 文化人類学演習(2年生以上3年生未満向き)
2013年文化人類学演習では隔年で共同実習を行っているので、この年は県外の漁村に挨拶に伺い、1週間宿泊してライフヒストリーのフィールドワークを行い、内容確認、現地発表の後、報告書を現地に戻すことまでを行いました。この共同実習を開催しない年度では、個別に各自が関心を持つ人物にライフヒストリーを中心とするフィールドワークをしてもらい、毎年報告書にまとめています。2015年からは夏休みの実習を2単位とし、通年で6単位にする予定です。
3 比較宗教学演習(2年生以上4年生まで)
個々の卒業論文への指導はこちらで行っています。基本的には2年次に自らの研究主題を決めてもらい、先行研究を読むことで問題を絞り込んでゆきます。3年次にはフィールドワークを行ってもらい、各自のフィールドワークの報告を全員で検討します。4年次にはそれらを卒業論文に仕上げてゆきます。
C 大学院
2013年度人間共生論では、4年に1サイクルで、①フィールドワーク、②世界社会論文献読解、③危機介入の学習、④共生の文献解読をしているため、2013年は③に当たったので、前期では民俗誌、民族誌、臨床心理学論文、紛争調停論文を輪読し、ロール・プレイでその実演を行いました。後期では、緊急医療、疫学、臨床心理学、紛争調停学、医療人類学、環境社会学、文化人類学などの諸文献を輪読し、その表象の特徴と技法を把握するように努め、学部生の報告書の編集作業を行いました。
2 人間共生論考究(修士以上の指導学生)
学び始めようとする人への一言:
私の場合、学部の2年生の時の演習先(栃木県)で、戦前の危機儀礼(男性たちの雨乞いと女性たちの辻念仏)の話を聞いたところから、その見事なまでの対照的な儀礼の構成に驚き、以来ずっと人間が危機とどのようにつきあうのか、に関心を持っています。そうした研究をしているうちに、バブル経済がはじけ、自分の家族が離散の危機に落ち込みそうなことになったこともあり、危機が他人事ではなくなりました。臨床心理学と狩猟採集民への関心はこの時に芽生えました。現在、私にとって、宗教とはそうした危機とつきあう知識の収蔵庫のように見えており、各種の宗教実践が埋め込まれた生活世界の在り方への関心をベースにして、時には臨床心理学の研究者とともに危機に介入することも行っています。こんなふうにして、学問というのは人生の深まりとともに展開するので、どのような窓口からでも良いので、自分の関心が熱いうちに、手当たり次第にその領域に飛び込んでみることをお勧めします。