『 九州史学』 特集号のご案内

研究会誌『九州史学』では通常号のほか、統一テーマに基づいて編集した特集号を発行しております。

このページでは、2002年以降に発行された特集号をご案内いたします。

『九州史学』132号
 中世特集号       前近代の日朝関係史料と地域交流

『九州史学』133号
 近世特集号       地域社会における中間層 ―「中間」意識の形成―

『九州史学』137・138合併号
 近世特集号       地域社会における中間層(Ⅱ)

『九州史学』144号
 中世特集号       環シナ海世界と古流球

『九州史学』148号
 創刊50周年記念特集号  博物館の現在と未来 ―指定管理者制度をめぐって―

『九州史学』149号
 創刊50周年記念特集号  士族反乱研究の可能性

『九州史学』150号
 創刊50周年記念特集号  半世紀をむかえた『九州史学』

『九州史学』156号
 古代特集号       平安時代儀式研究の再活性化をめざして

『九州史学』158号
 近世特集号       近世大名展をつくる/みる

『九州史学』159号
 近代特集号       大名華族と旧藩意識

『九州史学』162号
 中世特集号       戦国期九州の政治過程論

『九州史学』163号
 近世特集号       対馬藩特集 ―主体としての対馬・対馬藩―

『九州史学』166号
 中世特集号       戦国期九州における大名領国の拡大

『九州史学』167号
 近代特集号       帝国大学の〈内〉と〈外〉

『九州史学』180号
 創刊60周年記念特集号  箱崎と博多湾 ―都市の重層性と時代性―

※論文タイトル等については「総目録」からご確認ください。  

また、購入希望の方は、「分売案内」のページをご覧ください。

『九州史学』144号 環シナ海世界と古流球

本特集「環シナ海世界と古琉球」は、古琉球の時代(一六○九年以前)に時期を限定して、日本と琉球の交流史を中心に、琉球をめぐる交流史を多面的に検討し、環シナ海世界の中における琉球の位置づけを明確にしようとするものである。本特集は、二 ○ ○ 四年一二月一一日(土)の九州史学会(九州大学)において、九州大学二一世紀 cOE プログラム「東アジアと日本:交流と変容」の主催で、同名のシンポジウムを開催したことに端を発している。(中略)
また、本シンポジウムを行うにあたって、日本学術振興会研究費補助金・基盤研究( B ) [朝鮮書籍から見た中世の日本と国際関係](研究代表者:佐伯弘吹)と共催で、「環シナ海と琉球」研究会を開催した。
上記シンポジウムから伊藤・池田両報告、一環シナ海と琉球」研究会から荒木・新名両報告、さらに佐伯の古地図に関する別稿を加えて、計五本の論考によって本特集を組むことにした。(中略)
五編の論考は、主張において決して同じ方向性を有するものではないが、それぞれが日琉関係史や環シナ海世界の中での琉球史を考える際に新たな論点を提示している。本特集が、こうした分野の研究の進展に寄与すれば幸いである。

(佐伯弘次「特集にあたって」より部分抜粋)

《内容紹介》

佐伯弘次 特集にあたって
伊藤幸司 〈論文〉「十五・十六世紀の日本と琉球-研究史整理の視点から-
荒木和憲 〈論文〉「十五・十六世紀の島津氏-琉球関係」
新名一仁 〈論文〉「三宅国秀・今岡通詮の琉球渡航計画をめぐる諸問題
-南九州政治史の視点から-
池田榮史 〈論文〉「琉球における中世貿易陶磁の様相」
佐伯弘次 〈論文〉「『海東諸国紀』の日本・琉球図と『琉球国図』」

『九州史学』133号 地域社会における中間層-「中間」意識の形成-

近世社会においては、政治権力と民衆社会の結節点として庄屋・大庄屋といったいわゆる「中間層」が設定され、政治権力の末端として、または民衆社会の代表者としての役割を担った。彼ら中間層については、かつて経済的側面に注目した地主制研究、豪農論に基づく 研究がさかんにおこなわれた。その後一九八〇年年代からは中間層が持つ行政機能に着目する研究や、畿内において頻発した「国訴」 の運動形態を分析することにより、近世の中間層を近代の代議制の先駆とみる研究などがあらわれ、村政の民主化といった、近世社会に おいて民衆社会の側が育んだ「公共的領域」を積極的に評価し、中間層を近世・近代移行期における変革主体として位置づけるようになった。そして近年では都市社会論の影響を受け、地域社会構造を把握し、そのうえで中間層を位置づけ直す試みや、支配層の具体的政策展開のなかで、中間層が担った役割と彼ら自身の変化の検討を主張する見解も出され、いわば「公共」「行政」と「社会的権力」をキーワードとした多様な研究が繰り広げられている、とまとめることができるだろう。
しかしそれらの研究を支える実証研究についてみたとき、各地で多様な中間層のあり方を実態的に考察した研究はまだまだ不十分である。我々は、先に述べたような論争が行われている今こそ、それぞれの地域が有する、特有の自然環境や歴史的背景を踏まえた研究を進めることで、質的にも豊かで多様な中間層の実像を示すことが可能であり、単なる事例研究の蓄積にとどまらず、中間層研究の深化に寄与できるものと考えている。
そこで、近世史部会においては、中間層の担った機能・役割、および意識について検討することによって、その歴史的意義の再評価を試みる特集を組み、これまで部会報告などを積み重ね、本号では、そのうちの三本の研究論文を掲載した。近世史部会では、今後も中間層について考えていく予定だが、今回のキーワードである「意識」についてのみならず、様々な中間層の側面を明らかにしていきたい。

(伊藤昭弘「特集にあたって」より部分抜粋)

《内容紹介》

伊藤昭弘 特集にあたって
宮崎克則 〈論文〉「会議を開く庄屋たち-唐津藩の場合-」
佐藤晃洋 〈論文〉「豊後国直入郡幕領の庄屋」
伊藤昭弘 〈論文〉「萩藩における「御仕成」と中間層」

『九州史学』132号 -前近代の日朝関係史料と地域交流-

 前近代、特に中世の対外関係史については、昨今、様々な新しい潮流が出てきている。東アジア~ 東南アジア地域を「環シナ海世界」と「環日本海世界」に大きく分けて、広域の海域世界を設定したり、 国家の枠組みを相対化し、国際交流を新たな視角から捉えようとする、村井章介氏の考え方はその代表的なものである。 また、日中・日朝・日琉など各時代の諸関係の個別研究も増加しており、その関係の特質がより明確になってきている。
一方、そうした対外関係史研究の進展と相まって、新しい史料の発掘や新たな視角からの史料研究も進んできた。 例えば、対馬宗家に伝来した図書や木印が大量に発見され、十六世紀の日朝関係史研究が大きく進展したのはその代表的な例である。 また、考古学における貿易陶磁研究の隆盛も見逃せない。しかし、個別史料研究は進展してきたが、まとまった史料論は少なく、 日本古文書学の中では、まだ課題の多い分野である。
本特集では、そのような研究動向に鑑み、時代を中世から近世に限定して、新たな史料の発掘や新しい分析視角に基づいた日朝関係史を志向してみた。 この分野の研究には様々な史料があるが、本特集では、各執筆者がそれぞれの一点ごとの史料そのものにこだわり、外交史料論と対馬宗氏を 中心とした日朝関係史を追求している。特に外交文書を中心とする文書研究を特集の中心に据えている。さらに研究上重要と思われる史料三件を翻刻紹介した。 本特集が、今後の中近世対外関係史研究の進展に資すれば幸いである。

(佐伯弘次「特集にあたって」より一部抜粋)

 

《内容紹介》

佐伯弘次 特集にあたって
伊藤幸司 〈論文〉「現存史料からみた日朝外交文書・書契」
米谷均 〈論文〉「文書様式論から見た一六世紀の日朝往復書契」
ケネス・R・ロビンソン 〈論文〉「『海東諸国紀』写本の一考察」
佐伯弘次・有川宜博 〈史料紹介〉「大山小田文書」
米谷均 〈史料紹介〉「一五七二年の対馬宗氏あて礼曹参議書契について」
伊藤幸司 〈史料紹介〉「九州大学所蔵「宗義達吹嘘」について」