文化人類学

文化人類学の対象は、これまで「古代社会」「未開社会」「伝統社会」「共同体」「無文字社会」「他者」「異文化」などと、様々な呼称で呼ばれてきているが、要するにこの世界社会の中で周辺化されてきた異質な諸社会の理解を通じて、彼我の関係を構築してきた学問である。

 

当初、「異文化」に生きる人々は、閉鎖的・均質・不変の社会に生きていると想定されてきたために、こうした「文化」は時代が下るにつれて崩壊 する過程にあると考えられてきた。しかし近年では、こうした文化の見方そのものが批判の対象となり、開放的・異種混淆的・生成する社会のなかで、「異文 化」は絶えず研究者との間で構築されるものであることが共通認識となってきた。

 

このため、文化人類学では現在、フィールドワークという、目安としては1年間での現地調査を方法とし、絶えず生成してくる「文化」を、現地の 個人と研究者との対話から読み解こうとするミクロ人類学から、「異文化」と「自文化」を含みこむ世界システム内で読み解こうとするマクロ人類学まで、その 描き方の1つ1つが、彼我の関係を読解しながら構築してゆくアクチュアルな実験場となってきた。ならばより豊かな関係をもたらす異文化の描き方とはいかな るものか。この問いが共生社会システム論に通じる扉の一つとなる。(飯嶋秀治)


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