宗教学

宗教現象は、彼我の生の勘どころである。それは、日常的な生活世界を持続可能にさせてゆく半面、新たな生の在り方を産出する源泉となる。しかしそれゆえに、人々は宗教現象の周囲に集い、特定の主体外の世界を破壊するに至ることもある。

 

文化人類学/社会学では、近年になるほど「未開/近代」というかつての合意は失われ、「絶えず変成する世界社会」という共通認識のなかに参入 してきた。この世界社会の中にあって、国内では生老病死の勘どころに神仏の慣習行為が編成されてきている一方で、見慣れぬ小集団が市民社会の成立基盤に抵 触して問題化されるが、しかしその問題化している市民社会の側でも強迫観念に突き動かされる反復行為にも似た、いくつものブームに突き動かされている。国 外でもこの構図が当てはまり、編成される慣習行為を一方に、世界各地で族生するファンダメンタリズム(いわゆる原理主義)が問題化されるが、しかしその問 題化している側においても、経済・政治・法・メディアが、ある種の宗教性を帯びている。

 

ならばどうすればいいのか。どうしたらいいのか分かっていない時、人は何をすればよいのか。そうした知恵の収蔵が、まさに宗教現象という扉の一つにある。(飯嶋秀治)


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