共生社会システム論

共生社会システム論は、未だ完成せざる議論のアリーナ(舞台)である。その舞台を統べる「共生」の主張の背後には、無数の死、暴力、紛争、苦しみの 現実があることの自覚に、裏打ちされている。共生社会システム論は、こうした諸々の生の在り方の間に新たな生の可能性を共有しようという実践的な学問への アリーナである。

 

「共生」には、心身間、社会間、人間-自然間の3つの次元があるが、共生社会システム論で核としているのは社会間の共生である(英語では conviviality, symbiosis, co-existence, living-togetherというおおよそ4つの系譜がある)。そこでは主に、この世界の成り立ちを取り扱ってきた、社会学、文化人類学、宗教学、民 俗学の4つの領域での蓄積を指針とし、彼我の埋め込まれたこの社会システムを諸共に更生しようと企てている。

 

具体的な生の在り方に寄り添い、そっと耳をそばだててみよう。うめき声を笑へと転生させる難問へと、身を委ねてみよう。そして、講義の中にそ の道標がないかを探し、現場で見出した種(ゼミナールの語源はsemenにある)をもちより、お互いを自らの生の可能性の共有者として、育ててみよう。こ うした言葉の営みの場が、共生社会システム論の謂いである。(飯嶋秀治)


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